キム・ナムギル「本作は一線を画してる」映画『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』を語る

映画
2017年08月08日

133610_01_R 妻を失い悲しみに暮れる男と、その男にしか見えない女性が織り成す愛を描いた、映画『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』が公開中。公開を記念し、本作で主演を務めるキム・ナムギルと、監督のイ・ユンギ監督が本作について語った。

 キム・ナムギルは『無頼漢 渇いた罪』でカンヌ国際映画祭に初参加し、テレビドラマなどにも活躍の場を広げ続ける、実力派俳優。その端正なルックスと、誰もが認める演技力で、日本でも絶大な人気を誇っている。イ・ユンギ監督は06年の『チャーミング・ガール』で監督デビューし、その後、『アドリブ・ナイト』『素晴らしい一日』『愛してる、愛してない』といった、数々の愛の物語を描き続けてきた。その2人がタッグを組み、心温まるラブストーリーが完成した。

 公開されたインタビューで、キム・ナムギルは本作の脚本を読み、「世間に対する憂慮」の思いを抱いたという。さらに、見どころについては「最近の映画は優しい作品が少なくて、刺激的なものが多いです。そういう映画にも温かい面はありますが、本作は一線を画してると思います」と本作が他とは違うことを強調した。

 イ・ユンギ監督もまた、「普通の感性を持つ人なら誰もが心を動かされる作品にしたかった。映画に感性を刺激されて癒やされて欲しいです」と本作へ込めた思いを露わにした。2人のインタビュー全文は、下記のとおりだ。

<キム・ナムギル 主人公ガンス役 インタビュー>

◆本作を選んだ理由は?

台本を読むたびに違う印象を受けました。台本から僕が受けた印象を皆さんにも伝えたいと思ったのです。もう一つの理由は世間に対する憂慮ですね。最近は他人への配慮が薄れ、人間関係が悪化しているように感じます。僕はこの作品と出会い、人間が守るべきものは何かと考えさせられました。僕が台本を読んで感じ取ったものを皆さんと共有できたらと思い、出演を決めました。

◆イ・ユンギ監督と組んだ感想を教えてください。

監督の映画が持つ色というか、スタイルや特徴が前から好きでした。そういう部分に尊敬の念を抱いています。今回の物語は男女の区別なく、“人間”を描いた作品です。本作は人文学のような物語なので、そこに監督の感性が加わるとどうなるのか楽しみでした。そして監督と組むことへの期待感と不安もあったり、さまざまな思いで監督とご一緒しました。

◆チョン・ウヒについての印象を教えてください。

僕が共演した中で最高の女優の一人です。彼女と同世代の女優たちの中でも最高ではないでしょうか。演技や作品に対する姿勢や彼女の演じる時の感性だとか表現力の高さ、相手役との息の合わせ方などを見ても驚かされる点が多いです。彼女のおかげで助けられた場面もあります。なので、共演しながら感謝することが多かったですね。

◆演技のポイントは?

他人に見えない女性、ミソを相手に一人芝居をする時、観客の目に不自然に映らないように気を付けました。監督やチョン・ウヒさん、スタッフの方々もその点に気を使いました。視線の運び方や一人芝居が不自然に見えないことが重要だと思いましたね。

◆本作の見どころをお願いします。

大切なものを見失いがちな世の中において、誰もが共感できる物語です。ぜひ多くの方々に過去や現在の自分と重ね合わせて見てほしいです。自分を重ねて観る中で温かさを感じ、癒やされて欲しいと思います。本作が明日を生きる勇気を与えられたら嬉しいですね。多くの方々にご覧頂きたいです。最近の映画は優しい作品が少なくて、刺激的なものが多いです。そういう映画にも温かい面はありますが、本作は一線を画してると思います。劇場で残忍なシーンに震えあがったり、驚いたりするのが苦手な方々でも楽しめる作品です。

<イ・ユンギ監督 インタビュー>
◆主人公ガンスとミソはどういうキャラクターですか?

2人とも身近にいそうな平凡な人物で、それぞれに悲しい事情を抱えています。真面目に平凡な人生を歩もうとしているそんなごく普通の人物です。キム・ナムギル演じるガンスは保険調査員です。一見、平凡な職業にみえますが意外と特殊な職業です。ガンスは愛する妻を失い、人生に迷っている男として描かれています。ミソは生まれた時から目が見えないというハンデキャップを背負っている人物です。彼女は大変な環境で育ってきたうえに事故にまで遭ってしまいます。懸命に生きているのにうまくいかない、そんな数奇な運命を持つ女性ですね。

◆主人公ガンスにだけミソが見える理由は?

一種の運命でしょうね。映画をご覧になれば、2人が出会うよりもずっと前から運命的に結びついていたと分かるはずです。ガンスとミソはそれぞれに悲しい事情を内に抱えながら、それを口に出せない部分が似ています。ただ、それは彼らに限った特徴ではなく、多くの人がそのように生きています。感情を出せないのは特別な事ではありません。悲しみを言葉に出来ないのは、多くの人に共通する性質です。

◆キム・ナムギルとチョン・ウヒについて教えてください。

いたずらっ子ですね(笑)。映画の撮影現場にはどう頑張っても苦労がつきまとうものです。でも、2人は楽観的で辛そうには見えなかったですね。お互いふざけ合ったりして楽しんでいました。無理に明るくするわけでなく、ごく自然に楽しんでいました。2人は俳優として良いイメージが定着しています。でも本作では違う印象を受けるでしょう。完全に違う姿ではなく、より平凡でより親しみやすい、明るく可愛い人物として登場します。2人とも最近の作品で演じていた役がシリアスだったので、今回は正反対のイメージに見えると思います。

◆本作の見どころと監督の過去作との違いは?

本作は、心の休息になる映画を目指しました。本作の関係者にも観客にも癒やしになれば嬉しいです。普通の感性を持つ人なら誰もが心を動かされる作品にしたかった。映画に感性を刺激されて癒やされて欲しいです。最初から最後までリラックスして見られて癒やしを得られる映画はあまり多くありません。本作が観客に癒やしを与えられるかは公開してみないと分かりません。でも、それを目指しました。癒やしが本作を作った一番の目的です。

『ワン・デイ悲しみが消えるまで』
公開中

出演:キム・ナムギル、チョン・ウヒ
監督:イ・ユンギ
2017/韓国/カラー/韓国語/113分
英題:One day
原題:어느날
配給:ファインフィルムズ

公式HP:http://www.finefilms.co.jp/oneday

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