Boris・Atsuo「日本人全員に観てほしい」ジム・ジャームッシュ監督作『ギミー・デンジャー』を絶賛

映画
2017年09月21日

『ギミー・デンジャー』 映画『ギミー・デンジャー』の大ヒットを記念して、ロックバンド・BorisのAtsuoによるトークイベントが行われた。

 本作は、ジム・ジャームッシュ監督がイギー・ポップがフロントマンを務めた伝説的バンド「ザ・ストゥージズ」を追いかけたロック・ドキュメンタリー。

 トークイベントには、ジャームッシュ監督の『リミッツ・オブ・コントロール』に楽曲を提供し、ジャームッシュがキュレーターを務めたフェス「ATP New York 2010」にも出演、来月はアメリカツアーでイギーと共に「desert daze フェスティバル」に出演するなど、世界的なライブ活動を行っているバンド・BorisのAtsuoが登場した。

 Atsuoは「この映画だけで完成しているわけではなく、やはりストゥージズのアルバムがあっての映画。映画を観た後にまたアルバムを聴くと聞こえ方も変わってくるのでは」と話し、「ストゥージズのドキュメンタリーが作られたということだけで歴史に楔を打ち込んだと思います。ジムの心意気を感じました。世界一ロックを愛している彼でないと作れない」と本作の感想を語った。

 Atsuoとストゥージズの出会いは、高校生の時に好きになったバンド「ダムド」がきっかけだという。「ダムドも、その後好きになったニック・ケイヴもストゥージズをカヴァーしていた。ロックを掘っていくと行きつくところがストゥージズでした」と明かし、「シンプルだけにいろんな現象を呼び込んでいる楽曲で、聞けば聞くほど魅力的に聞こえてくる」とそのサウンドの魅力を語った。

 また「ストゥージズは“ダメな人たち”なんだけど、こういう人たちも許容していける社会だといいのになあ。今の日本はギスギスしているなあ」と思いながら映画を鑑賞していたというAtsuoは、聞き手のライター・村尾泰郎の「そんな“ダメ人間”がロックの殿堂になることもすごいですよね」という言葉にうなずいた。

 そしてジャームッシュがキュレーションを務めた2010年の「ATP(all tomorrow’s parties)」の時のことについて、「ホテルのようなところを貸し切って泊りがけで参加するフェスで極端に言うと旅館の宴会場みたいなフェス(笑)。いわゆるロックフェスではなく、あったかい感じ」と独特な雰囲気であることを語り、そこで見たストゥージズの「ロー・パワー」完全再現ライブは「素晴らしかった」と絶賛した。

 Atsuoはイギーとは実際に面識はないが、イギーが自身のラジオ番組でBorisの曲をかけてくれたことがあり、親交のあるマイク・ワット(ストゥージズのメンバー)を通してイギーにニューアルバム「DEAR」を送ったところ、「Dear Boris,I love your music.Happy “Dear” anniversary.」とアルバムタイトルにかけた粋なコメントが届いたという。

 ジャームッシュ監督も「Borisはこの地球上で最も偉大なロック・バンドの1つ」と称賛のコメントを寄せ、「ライブバンドと言ってくれたことが本当にうれしい。バンドってなかなか理解されない。結婚でもないし、友達でもない。特殊な生き方だと思う。ジムもバンドをやっているので、バンドの不思議さや面白さを分かっているのでは」と喜びをにじませたAtsuo。2006年ごろから交流のあるジャームッシュについては「彼の映画そのもの。公開中の『パターソン』も観ましたが、ニュートラルな感じ。落ち着いてて優しくて、作品そのものですね」と印象を語った。

 Atsuoが好きなストゥージズのアルバムは、1997年にイギー自身がリミックスした「ロー・パワー」。「オリジナルがあまり好きではなかったのだが、97年バージョンはひずんでて荒々しくて、同じ楽曲でもひずませればこんなにかっこよくなるのか!と。以降Borisもひずませ癖がつきました(笑)人生の一枚です。イギーに『ひずませれば大丈夫!』と太鼓判押された感じ」と影響を明かした。

 最後にAtsuoは「ロックバンドとは?を描いている映画。ロックバンドはなかなか分からないもの。日本人全員に観てほしいくらい。今日本ではロックの入り口が少ないと思うんです。この映画を、ストゥージズを、ロックの入り口にしてくれるといいな」とメッセージを送った。

『ギミー・デンジャー』は、新宿シネマカリテほか全国にて順次公開中。

公式サイト:http://movie-gimmedanger.com/