岸井ゆきの、好きな人ができたら「好き好き!みたいな(笑)」

映画
2018年10月29日

「愛がなんだ」 第31回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された映画「愛がなんだ」の記者会見と舞台あいさつが行われ、主演の岸井ゆきの、若葉竜也、今泉力也監督が登壇した。

 本作は、直木賞作家・角田光代が2003年に発表した傑作小説を、主演・岸井ゆきの、共演・成田凌、深川麻衣、若葉竜也、江口のりこらで映画化。監督は、伊坂幸太郎の同名小説を三浦春馬主演で映画化した『アイネクライネナハトムジーク』の公開が控える今泉力哉。

 記者会見には、岸井と今泉監督が登壇。原作を映画化するにあたってこだわったことや、撮影当時に意識した現場の雰囲気作りのこと、さらに主人公テルコを演じた岸井が、自分自身との共通点など語った。

 舞台あいさつには、岸井、今泉監督に加え、主人公の親友の友人以上恋人未満であり、一番の理解者であるナカハラを演じた若葉竜也も登壇。500人の満席の会場でワールドプレミア上映が行われた。

<記者会見>
◆主人公・テルコとの共通点は?実生活での片思いの際は、どうされてますか?

岸井:ヒトやモノに対して一直線になるところがあり、そこがテルコと似ていると思います。実際に好きな人ができた時は、、もういかに自分をバカにするというか「好き好き!」みたいな(笑)。ちょっとふざけたくらいの気持ちで向かっていってしまったりするのかな?!って思います。

◆監督ご自身の片想いの心情などは映画のシーンに入ってますか?

今泉監督:今は結婚してますが、恋人がいなかったり、片思いの時期も結構ありまして。恋人がいる人、結婚してる人が50%ずつ想いあってる、ということはいまだに無いと思ってます、嫉妬も込めてですけど(笑)。ですので、「想いの差」というのにずっと興味があって、片思いはその一つの形だと思います。

◆原作の中から映画に向いている部分を抽出したのでしょうか?それとも、映画ならではの視点を後から加えていったのでしょうか?

今泉監督:まず、原作の魅力を忠実に映像化していこうと思いました。ただ、映像ならではの表現をする必要があると思っており、そのために付け加えたエピソードや、少し原作のストーリーをアレンジした箇所もあります。
あと、原作は一人称なんですが、その魅力を映画でどう表現したら良いか迷いました。ナレーションを入れすぎると説明が多くなりすぎますし、そのバランスを調整するのが難しかったです。
あと、映画の魅力は役者・登場人物の魅力が伝わることだと思っているので、そのために、カット割りを少なくしています。カットを長くする分だけ、見る人にとっての「選択の豊かさ」につながると思っているので、できる限り作り手側の手が加わらないように、意識して長回しを多用している部分はありますね。

◆撮影中の雰囲気作りはどういったことを意識されましたか?

今泉監督:自分の中で決めてしまわずに、一度役者さんに演じてもらって、いろんな可能性やアイデアを閉ざさないように役者さんと相談しながら進めました。あと、よく温度の話をしてましたね。「もうちょっと好き度をあげてほしい」とか。

岸井:最初の頃は監督に「答え」を求めにいってしまってたんですけど、そうじゃないなと。監督と一緒に悩んで、そして、そういった戸惑いや迷いこそが主人公のテルコなんだなと。「愛」って答えがないものなので、そこに向かって一緒に迷子になっていきながら「テルコ」を作っていけたのはすごく良かったなと、思います。

<舞台あいさつ>
◆これまでオリジナル作品を手がけられることが多かったと思いますが、今回、原作がある物語を映画化するにあたって、何かいつもと違う心構えはありましたか?

今泉監督:プロデューサーからこの原作を映画化の話を頂いてから、実際に原作を読んだときに僕がこれまでオリジナルで描いていた「片想い」や「想いの差」の形ととても近いと思いましたし、なぜ僕に話が来たのかも理解できました。ですので、ぜひやりたいとお返事をしました。
あと、これまで自分が作っていた作品は恋愛に対して温度が低い人たちが多かったのですが、今回はとても温度が高く、想いが強いたちが多くて。そこは原作がある作品ならではかと思ってまして、一緒にやれてとても良かったと思います。

◆岸井さんは4年連続で東京国際映画祭に参加いただいています。本作はとても強い愛を貫く女性を描いた作品なのですが、この役へのアプローチはどのように取り組まれましたか?

岸井:主人公のテルコは自己犠牲をしてまで、好きな人に向かっていってしまう女性でして、ほんとすごいなと。でも演じるに当たって自分に重ねてみると「自分にもこういうところあるかもしれない」と。例えば、好きなものに向かっていく強さというか。そういう部分を自分に重ね合わせながら、テルコを作っていった部分があります。

◆今泉組へは初めての参加ですね。どういった経緯で参加されたのでしょうか?

若葉:ぜひ、前から今泉監督の作品に参加したいと思っていた中、お話を頂いたので本当に光栄でした。

◆今泉さんは、どんな監督でしたか?

若葉:本編見たら、きっとどんな監督かわかってもらえると思うんですけど。。!ほんと、今泉さんが作り上げた映画だなと。原作はあるけれども、ちゃんと今泉さんのカラーが出てて素晴らしいです。

◆最後に一言お願いします。

今泉監督:映画は芸術という側面もありつつ、社会的なことを知れて、あと、世界の映画を見ることでその地域を知ったりできるとも思ってます。本作はすごく個人的な、一人の女性の恋愛を軸にしたストーリーではありますが、これも一つの社会や世界を描いてるとも思ってます。ぜひ楽しんでください。

映画「愛がなんだ」
2019年春、テアトル新宿ほか全国ロードショー

<ストーリー>
28歳のOLテルコ(岸井)は一目ぼれしたマモル(成田)に想いを寄せている。自分の時間のすべてをマモルに捧げ、その結果、仕事を失いかけても、親友に冷たい目で見られても、マモルがいてくれるならテルコはこの上なく幸せだと思っている。
けれど、マモルにとって、テルコはただ都合のいい女でしかない。そのことをわかっているテルコは今の関係を保つことに必死で自分からは一切連絡をしないし、決して「好き」とは伝えない。しかし、そんなある日、マモルからの連絡が突然途絶えてしまう…。3か月が経ったころ、マモルから急に電話がかかってきて、会いにいくと、彼の隣には年上の女性、すみれがいた…。

原作:角田光代「愛がなんだ」(角川文庫刊)
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織、今泉力哉

出演:岸井ゆきの 成田凌 深川麻衣 若葉竜也 片岡礼子 筒井真理子/江口のりこ

配給:エレファントハウス

公式サイト:http://aigananda.com/

©2019映画「愛がなんだ」製作委員会