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野村萬斎が“野村家三代”を語る「芸が若木の桜から、成木になり、老い木の花になる」

野村萬斎 第31回東京国際映画祭でWOWOWオリジナルドキュメンタリー『ノンフィクションW「野村家三代パリに舞う~万作・萬斎・裕基、未来へ」』がプレミア上映され、野村萬斎が舞台あいさつに登壇した。

 この番組は、狂言650年の歴史を担い、未来へ伝える野村万作・萬斎・裕基の野村家三代の「挑戦」を追ったWOWOWオリジナルドキュメンタリー。

 上映後の舞台あいさつに登場した野村萬斎が「皆さんようこそおいでくださいました。ご覧になった直後かと思いますが、いかがでしたでしょうか?」と尋ねると、会場からは大きな拍手が送られた。

 完成した番組について萬斎は「われわれは無形の文化、ライブパフォーマンスアートをやっているので、映像化されるということはうれしい半面、いろんなものが残るという諸刃の剣がありますが、 87歳の父とわたし、そして駆け出しですが、 18歳のうちの息子の裕基の『三番叟』がとにかくいい形で残って良かったなと思います」と感無量の様子を見せた。

 萬斎は、東京2020大会開会式・閉会式のチーフ・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター(東京 2020総合)に就任。そのことを踏まえ、2020年に向けてどのように伝統芸能を世界に伝えていきたいかと尋ねられると「料理に例えると分かりやすいですが、レシピは一緒ということですよね。われわれは型を伝承しつつ、型を使って演じるということです。ただ食す方、つまり観客の皆さんはいつも違うので、それに対して合わせていかなければなりません。多少塩味をきかせようとか、薄めにしようとかいうのは、その場その場であるわけですが。でも一番失ってはいけない精神的なものが重要かなと思っております。式典のことを考えると、中身にある精神性みたいなところが、うまく分かりやすく伝わるようにする。そのためにこだわり続けないといけない外側よりも、中身をうまく、現代的に伝えるということが時に必要だと思います」と語った。

 観客から「芸は一代という部分を感じるという上で、お父さんと息子さんに嫉妬する部分はありますか?」という質問を受けた萬斎は「いい質問ですねぇ」と笑顔を見せ「芸は一代と言いつつも何らかの形で受け継いでいくわけで。こうやってドキュメンタリーで映像に残していただくと、形として残りますが、基本的に舞台の演技はそれきりだから、芸のDNAを息子に転写するというか、継承するということは、息子の身体を借りて生きているような感覚があるのかもしれません。とはいえ個性は違うので。父とわたしは声の高さなど違いますし、息子とわたしとは手足の長さが違いますが、でも声は似ています」と。

 さらに「そして性格は違いますね。父は生真面目な人ですが、わたしはええ加減な人ですし。そして息子は隔世遺伝なのか、生真面目なんで、親父に似ているなと思います。きっと息子は、基礎を身体にたたき込むうちにだんだんと個性が出てきて、彼なりの芸が出てくると思う」と続けた。

 そして「やっぱり父が長生きするのはありがたいことですけど、それだけハードルがあがるということでもあるわけです。これは嫉妬というよりは、困るなということかもしれません。まだまだ 18歳の子は体力でやるし、わたしは何かある種の解釈や自我が見えたりするんですが、でも父には自我がない。型もどこかになくなるというか、わたしはよく“解脱する”という仏教用語を使うんですが、脱しているんですね。そういう世界観を見せられると、まだ自己から抜け出ていない人間はとてもかなわない。そういう名優を観ていると皆さんの目が肥えてくるばかりで困るなというところは多少はあります」と笑わせつつ、「でも芸が、若木の桜から、多少なりとも成木になり、老い木の花になるというような。まさしく世阿弥が言っていたように、最上級の花を咲かせることになるという世界観を今回は観ていただけたんじゃないかと思っています」と付け加えた。

WOWOWオリジナルドキュメンタリー
『ノンフィクションW「野村家三代パリに舞う~万作・萬斎・裕基、未来へ」』
WOWOWプライム
11月11日(日)後6・30~

<特集:野村萬斎の世界>

11月11日(日)正午~
『陰陽師~おんみょうじ~』『陰陽師II』『のぼうの城』

11月17日(土)後2・10~
野村万作・萬斎狂言劇場その壱「三番叟」「鎌腹」「川上」
野村万作・萬斎狂言劇場その弐「鏡冠者」「節分」「髭櫓カケリ入」
野村万作・萬斎狂言劇場特別版―能『鷹姫』・狂言『楢山節考』
「シャンハイムーン」野村萬斎×広末涼子 作:井上ひさし/演出:栗山民也

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