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君塚良一「映画がなすべきことはここにある」

 現在公開中の映画「遺体 明日への十日間」特別舞台挨拶が東北三県にて行われ、君塚良一監督と主演の西田敏行が作品への思いを語った。

日本大震災発生から約2年。今この作品を手がけようと思った理由

君塚監督「震災の時、わたしは東京にいてニュースを見ていました。ですがやはり正直、距離感を感じていました。何かしなければいけないのにできないという後ろめたい気持ちがある中で、石井さんの原作に出会いました。僕が東京にいた十日間のあいだに、同じ日本で、厳しく辛い状況の中に生きていた方々がということを知り、とても驚き、石井さんがあのとき見たものを映像にすることで、たくさんの人に伝えたいと思ったことがきっかけとなりました。僕は脚本家・監督として伝えることはできる、と思い、この作品を作る決意をしました」

西田「事実のみを伝えルポルタージュと違い、映画には作り手の作為が入ってしまうというジレンマがあります。ですから、ご遺族の気持ちや、役者が芝居っぽくすることで事実を捻じ曲げてしまうのではないだろうかという思いもあり、正直映画化にはいささかのためらいがありました、ですが監督の『映画がなすべきことはここにある』という力強い言葉を聞いて、もしかして映画化によって事実とは違う真実をお伝えできるのではないかという自信に変わりました。出来上がった作品を観た今、この映画に参加することができて本当に良かったと強く思っております」

演出手法で意識したこと

君塚監督「役者の皆さんには、とにかく嘘をつかない、心に嘘をつくことは被災者の方々に失礼になるということをお伝えしておりました。俳優の方々が人間として感じたままに演じていただき、それを我々カメラが追いかけるという手法をとりましたので、ドキュメンタリーのような映画になったと思います」
西田「僕も遺体安置所のセットに行ったとき、遺体が並んでいるところに土足で上がることがどうしてもできなかったんです。脚本では、私が演じた相葉が履いているスニーカーが少しずつ汚れていく、という設定だったのですが、監督と相談した結果、ずっと裸足でいさせていただくことになり、撮影中はずっと裸足でおりました」

モデルとなった千葉さんとの出会い

西田「初めて千葉さんにお会いしたとき、もしかして前世は親戚だったんじゃないかと思ってしまうくらいとっても自分に似ていました(笑)。千葉さんが長兄でぼくが末っ子のような(笑)。最初のあいさつをしたとき、僕はただ『ありがとう』と言ってハグをしたんです。そのときに千葉さんの体温を感じて、千葉さんの持っている死生観であるとか、哲学をすべて引き受けた感じがありました。それは『これでいけるぞ」という確信になりました」

この作品を通して、最も伝えたいこと

君塚監督「僕自身、震災以降、どこか被災地との距離感を感じていました。時が経っても、興味がうすれていってしまってはいけない、と自分を律するためにこの映画を作りました。これからもずっと永遠に悲しみ、辛い思いでいる人たちのことを僕らは忘れてはいけない。そのためにもこの映画をたくさんの人に観ていただければいいなと、そのためにこの映画を作りました。スタッフ・キャスト全員で震災と向き合いました。映画は記録であり、伝えるもの。この作品を記録として残して、たくさんの人に伝えていくというのがこの映画の役目だと思っております」

西田「2011年3月11日14時46分まで、震災で亡くなった方々は今日自分の人生を終えるなんて誰一人としてお考えになっていなかったと思います。その方々の理不尽な死に対して、ちゃんとその人たちの声を聞きとろうとし、尊厳を守ろうとした、素晴らしい崇高な行為は、さまざま遺体安置所でなされたと思います。僕は千葉さんを演じさせていただいたことは、俳優として大きなエポックメイキングとなりました。実に、人生を変えられる瞬間でもありました。復興という言葉は名ばかりで、まだまだ長い月日がかかると思います。亡くなった方々の思いを胸にめげることなく、一歩一歩力強く、復興の日を信じて生きていきましょう」

「遺体 明日への十日間」
全国公開中

西田敏行/緒形直人 勝地涼 國村隼 酒井若菜 佐藤浩市 佐野史郎 沢村一樹 志田未来 筒井道隆 柳葉敏郎(五十音順)
原作:石井光太『遺体 震災、津波の果てに』(新潮社刊)
脚本・監督:君塚良一 
この映画の収益は被災地に寄付いたします。

「遺体 明日への十日間」(http://www.reunion-movie.jp/)

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