大根仁監督インタビュー「自分が考えているとおりになるのはつまらない」映画「SCOOP!」

特集・インタビュー
2017年03月21日

福山雅治がパパラッチ役を熱演した映画「SCOOP!」のブルーレイ&DVDが3月29日(水)に発売。本作を手掛けた大根仁監督に、撮影中のエピソードや演出の方法について伺いました。

大根仁監督インタビュー

◆今回ブルーレイ、DVDが発売されますが、いま振り返ってみて大根監督にとって「SCOOP!」はどんな作品でしょうか。

客観的に見るにはまだ相当時間がかかると思うんです。まだちょっと記憶が生々しいというか。
このカットは車を止めるのが大変だったなとか、ここ何テイクやったんだっけなとか、この日のお弁当おいしかったなとかね(笑)。
でも、公開と同時にもう自分のものじゃなくなるんですよね。
公開の前日までは確かに自分の手元にあるんだけど、公開したらもうお客さんのものになって。
ブルーレイ、DVDっていうのは、まさしく“所有する”っていうことになるので、もう完全に皆さんのものですよっていうタイミングですね。
なんかこれでひと段落というか、ひと安心というか。

◆個人的に大根監督が手掛けた『去年ルノアールで』(07年放送。主演:星野源)などの深夜ドラマも大好きなのですが、ご自身の中でドラマと映画の違いはありますか?

深夜ドラマからずっとやってきて、映画との違いを感じるのは、映画はやっぱり終わらないってことですね。ずっと言われるし。まあ、ドラマもね、「ルノアール好き」とかって5年に1回くらい言われますけど(笑)。まさか(星野)源ちゃんがね、とか。

◆たしかに!

映画はやっぱりコンスタントにずっと続くものというか。「バクマン。」や「モテキ」のこともいまだに言われるしね。
また違うかたちで「SCOOP!」がいろんなところに浸透していくというか、旅立っていくという、本当に見送るっていうタイミングですね。

◆この作品に限らず、大根監督の作品は登場人物がいとおしいというか、魅力的に見えるんですが、大根マジックがどこかにあるのでしょうか?

自分が立派なことを考えているわけじゃないので、立派な人が出てこないからじゃないですか?(笑)。偉そうなこと言う人とか権力者とか、そういう人が出てこない。

◆なるほど。本作の登場人物もみな魅力的ですが、この役はこの俳優さんだよね!っていう絶妙のキャスティングですね。

今回は直感的に決めて、第一希望が全部とおったんですよね。最初からこの役は(吉田)羊さんだなとか、あの役は滝藤(賢一)さんだなとイメージしていて。

◆編集長役の中村育二さんもいいですよね。

そうですね。いい枯れ具合でね。会議室で一人でそば食ってる管理職っているよな~とか思って(笑)。

◆静(福山雅治)と定子(吉田羊)がバルコニーで野火(二階堂ふみ)を見送るシーンが印象に残っています。ああいうシーンは大根監督が細かな演出をつけられるんですか?

俺は何にもやってないです。あのときは見物人がいっぱい集まっちゃって、「見ないで~!」って言ってるほうが大変で(笑)。

◆(笑)

たしかあのシーンは1回しかやってないですね。

◆えー!

せりふが終わってから1分くらいなんかいろいろあるといいですねっていう話をしたくらいですね。

◆細かいお芝居はお2人に委ねて?

そう。自分が考えているとおりになるのは非常につまらないと思うんです。
映画って監督が陣頭指揮を執るのは当たり前ではあるんですけど、いろんな部門のプロフェッショナルの集まりなので、やっぱりみんなのアイデアが欲しい。
その集合体として作品が出来上がればいいと思っているので、ああいうシーンを見るとうれしいですよね。想像していなかったような動きとか。
こう手が動くのかとか。手が長いからきれいだな~とかね(笑)。

◆スクープをモノにした静がハイテンションで叫ぶシーンがありますが、大根監督もカメラを回しているときに「撮れた!」とテンションが上がることはありますか?「ヒャッハー」みたいな(笑)。

あのシーンでは福山くんに「マックスまでいきましょう」みたいなことは言いましたね。
俺は現場ではなく、編集しているときにそうなることはあるかもしれないです。
現場って作物を取ってくる状態で、本当の料理が始まるのは編集なんですよね。現場までは素材でしかないというか。
編集が一番時間がかかるし、一番集中するし。そこでいいつなぎができたときは「ヒャッハー!」ってなるかも(笑)。

あ、でもテンションが上がったといえば、現場検証のシーンで福山くんがフェンスから飛び出してきたときは震えましたね。
脚本には「何か叫びながら出てくる静」くらいしか書いてなかったんですけど、こういうふうに登場するのか!って。

◆大根監督の想像を超えたものが出てくるんですね。逆にお芝居のニュアンスがちょっと違うなみたいなことはありますか?

微調整はしますけど、その役について一番考えているのは役者なのかなという気がするんです。
特に撮影後半になると、役者はそのキャラクターに成り切っている状態なので、自分が考えたことよりもこのキャラクターはこっちなんだなって。
もちろん全然違ったら言いますけどね。

◆なるほど。撮影に入る前にイメージのすり合わせみたいなことはされますか?

はい。現場で何も言わないかわりに、気になることがあったら撮影前に全部聞いてくださいっていうことは言いますね。
現場で急に「このせりふの意味は?」とか言われても「知らないよ!」ってなりますよ(笑)。

◆大根監督と福山さんは同い年だそうですね。これまでの作品は若い世代が主人公で、本作は中年男性が主人公ですが、ご自身を投影するようなところはありましたか?

やっぱりありましたよ。
かたやスター街道を歩いてきて、俺は深夜ドラマという荒地を歩いてきて(笑)という違いはあれども、福山くんとは同世代なので考えていることとか仕事に対する意識とか、今後どうしたいかみたいなものはどこかに共通している部分があって。ルーツ的な部分とかね。
後半で静が野火に語る「何者かになりたかっただけ」というのは、福山くんにもあると思いますし、俺にもあります。

◆ラストシーンにもしびれましたが、かなりこだわられたんですか?

あんまり考えてなかったんですけど、オープニングのドローンショットを撮ったときに、夜景の見え方が思ったよりも効果的だったんです。
で、終わり方は決めてなかったんですけど、ああそうか、ドローンショットで始まってドローンショットで終わるのがいいんだなって途中で気づいて、あのシーンになったという感じですかね。
気持ちいいですよね。

◆TOKYO No.1 SOUL SET feat.福山雅治 on guitarの主題歌「無情の海に」も非常に印象的です。劇伴も川辺ヒロシさんが手掛けられていますね。

川辺さんとはずっとプライベートで仲がよかったんですけど、仕事は意外としたことがなくて。
すばらしいトラックメーカーなので、そのうち合う題材があったらやりましょう、みたいな感じではあったんです。
今回は“夜の東京”を舞台にしていて、映画音楽ってその映画における空気みたいなものなので、やっぱり夜の東京の空気を知り尽くした男がいいんじゃないかということでお願いしました。

◆本作は細部にこだわりを感じました。編集部にさりげなく忌野清志郎さんの写真が貼ってあったり。

あれは「FRIDAY」の編集部を参考にしています。「FRIDAY」編集部に過去の名作スクープ写真とか、勝新太郎さんのすごいかっこいい写真とかが飾ってあったりして。清志郎さんの写真もあったんですよ。
あ、そっか、リアルがこうだからこれは使わせてもらおうと。

◆静のカメラの痛み具合もリアルでした。

カメラのボディとレンズは、実際にカメラの指導をしてくれた、スクープも撮れば戦場にも行くというカメラマンのカメラを参考にさせてもらいました。汚し具合とか、パーマセルテープがずっと残っていたりとかね(笑)。

映画「SCOOP!」

◆豪華版ブルーレイ/DVDには、44ページ!の大判ブックレットや、大根監督、福山さん、リリー・フランキーさんのビジュアルコメンタリーなど、楽しみな特典が満載です。

ビジュアルコメンタリーは、まあいつもの3人のままというか、飲みながらやったほうがよかったんじゃないの?みたいな感じでした(笑)。
映画館で見たときはテンポが速くて、役者以外の部分はけっこう見逃されていたと思うんですけど、美術セットとか小道具とか、キャラクターに合わせて物語があるので、ブックレットも含めて楽しんでもらいたいですね。
最後までいろいろ考えながらやっているので、定子が編集長になったときにそれまで貼ってあった井川遥さんのポスターから何に代わっているか、ぜひ確かめてください(笑)。

 

■PROFILE

おおね・ひとし…1968年12月28日生まれ。東京都出身。
映像ディレクターとして数々の傑作ドラマ、PVを演出。
手掛けた映画作品に『モテキ』(11)、『恋の渦』(13)、『バクマン。』(15)などがある。最新作『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(17)が今秋公開。

 

■作品情報

映画「SCOOP!」「SCOOP!」ブルーレイ&DVD
3月29日(水)発売

■豪華版Blu-ray/DVDコンボ 7800円+税
本編 Blu-ray+DVD セット/特典 Blu-ray(3枚組)

仕様:A4 ワイドサイズ
封入特典:豪華SPECIAL ブックレット(44P)、『SCOOP!』オリジナルステッカー

Blu-ray本編ディスク
本編:120分
特典:PR映像集、完成披露試写会

DVD本編ディスク
本編:120分
特典:PR映像集、完成披露試写会

Blu-ray特典ディスク(171分)
・ビジュアルコメンタリー(福山雅治&リリー・フランキー&大根仁)
・本編メイキング
・完成披露試写会アフタートーク(LINE LIVE)
・エンドロールメイキング

■通常版Blu-ray 4800円+税
■通常版DVD 3800円+税
本編:120分
特典:PR映像集、完成披露試写会

<ストーリー>
かつての数々の伝説的スクープをモノにしてきた凄腕カメラマン・都城静(福山雅治)。しかし、過去のある出来事をきっかけに報道写真への情熱を失ってしまった静は、芸能スキャンダル専門のパパラッチに転身。そんなある日、ひょんなことから写真週刊誌「SCOOP!」に配属されたばかりのド新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とコンビを組まされる羽目に。案の定まったくかみ合わずケンカばかりの静と野火だったが、まさかの大活躍で独占スクープを連発。そして、日本中が注目する事件が発生する…。

<キャスト>
都城静:福山雅治
行川野火:二階堂ふみ
横川定子:吉田羊
馬場:滝藤賢一
チャラ源:リリー・フランキー
小田部新造:斎藤工
多賀:塚本晋也
花井編集長:中村育二

<スタッフ>
監督・脚本:大根仁
原作:映画『盗写1/250秒』(監督・脚本 原田眞人)

発売元:株式会社テレビ朝日
販売元:アミューズソフト

©2016映画「SCOOP!」製作委員会