眞島秀和「よく似てると言われる“チベットスナギツネ”とは気が合いそう(笑)」『カラスになったおれは地上の世界を見おろした。』

特集・インタビュー
2018年11月07日

11月10日(土)放送の『カラスになったおれは地上の世界を見おろした。』でカラスと体を交換するベンチャー企業の経営者という、前代未聞の役に挑んだ眞島秀和さんにインタビュー。ドローンを駆使した“鳥目線”の全く新しい撮影についても聞きました。

『おっさんずラブ』の武川さんと同じ
“はぁ、カラスか”って思いました(笑)

眞島秀和インタビュー◆本作はカラスと人間が入れ替わる物語ですが、お話を聞いたときどう思いましたか?

台本を読んだ時に、まずカラスの部分をどうしたらいいのかと(笑)。監督からは“無邪気な感じで”と言われたので、どういう方向でそれを出していったらいいのかというハードルを感じました。ただヘラヘラしているのか、そういう中でも鋭いところをついてくるのか、子供みたいになるのか…。

◆そもそも、カラス役ということについては…?

“はぁ、カラスか”って思いました(笑)。

◆意外とそんな感じなんですね(笑)。

そうですね(笑)。例えば『おっさんずラブ』の武川さんみたいな(ゲイの)役でもそうですが、どんな役柄でも役を頂いたことには変わりないので。それで作品を作っていくという作業はどんな役でも同じなので、“あぁ、これかぁ”みたいな感じで、受け止め方はどれも一緒なんです。

◆実際はどんなふうに演じたんでしょうか?

カラスと入れ替わったと言っても、普通に人間の言葉を話すので、人間の状態を演じている時との差がうまい具合に出ればいいなと思って。それを監督と一緒に探りながら演じていきました。動きも動物的というより、動きも含めて無邪気な部分があればいいと監督がおっしゃっていたので。

◆声のトーンなども意識されましたか?

声のトーンは普段とちょっと変えました。自分がイメージできるカラスっぽい声にプラスして、無邪気な感じ。カラスって、“アーッ、アーッ”みたいな声を出すじゃないですか(笑)。なので、ちょっとそういうしゃべり方でやってみたんですけど…まだ悩みながらやっているので、これから調整していきます。

◆その一方で、“カラスになった人間”のほうは、眞島さんの声をカラスにアテレコする形で演じています。“人間になったカラス”と“カラスになった人間”が同時に登場し、会話するシーンもありますが、どんなふうに撮影したんでしょうか?

自分の声を仮で録って、それをスピーカーから流していただいて芝居しました。でも、最後まで慣れなくて…。初めての撮影方法だったし、自分の声と芝居するのってイヤだなと思いました(笑)。やっぱり自分の声って、聞いていて気持ちいいものじゃないですから。何だか落語をしているみたいな感覚でしたね。落語をしたことはないですけど(笑)。

眞島秀和インタビュー◆ドローン撮影を駆使して、カラスの目線を映像化する本作。飛んでいるドローンに向かって話すシーンもありましたが、演じてみてどうでしたか?

普段の撮影でもカメラに向かって話すシーンはたくさんあるんですが、飛び回っているものに対して話すことはなかなかないので、楽しいなと思いながら演じました。ただ、ドローンってものすごく安定した感じで飛ぶんですけど、実際のカラスは、そんなに安定して飛んだり止まったりしないですよね。なので、カラスの動きはどうなってるんだろう、カラスからはどう見えるんだろうっていうことを、みんなで探りながら撮影を進めていきました。

◆主人公の坂口雅彦は、ITベンチャーの経営に成功した男性。カラスと入れ替わったことで、自分の人生を見つめ直していきます。坂口についてどう感じましたか?

小さなアパートからスタートして、独立して、起業して…。IT長者として成功していくなかで、社員の前でどこか無理をしている部分とか、いわゆる派手な感じになっていった部分があるのかなと思います。

◆演じる上で意識されたことはありますか?

貧しかった時も、IT長者になってからも、変わらない何かがある人だということを意識しました。IT企業で便利なものを開発して、世の中に提供していくことに喜びを感じているというのが彼のベースにあって。そういうところから始まったのに、どんどん自分と周りの状況に違和感を感じていったのかなというふうに捉えています。

◆カラスになった雅彦は、自分の家族や会社の仲間を見に行きます。カラスの目線で人を見ることについてどう思いましたか?

動物から人間がどう見えているのかっていうのは興味がありますけど、あんまり俯瞰で見られても困りますよね。僕は主観で生きているので、あんまり見たくないです。余計なものは見ないほうが幸せに生きていけると思うので…。

◆結局、雅彦は見たくないものを見てしまいますよね。

見に行かなきゃいいのにって思いました(笑)。でも、雅彦のことは好きです。最初は志が高かったけど、きっと勘違いしたこともあったりして、そういうことを経て自分の人生を振り返るように見に行ったんだなと思いました。

◆雅彦の姿を通して考えさせられたこと、共感した部分はありますか?

もし自分が雅彦と同じ状況だったらどうなんだろうなって思いました。でも、イメージできないですね。想像することは簡単ですけど、きっと人間はその瞬間に直面しないと何も気づけない。だから今、目の前のことを大事にすることしかできないんだと思います。

◆カラスになる気分を味わった作品ですが、もともとカラスにはどんなイメージがありましたか?

実はそんなに嫌いじゃないんです。よく女性はカラスが怖いって言ったりしますけど、僕は怖くもないし。道路でゴミをあさっているのを見ても、“散らかしてんなぁ”って思うくらいで。そういう時は、なるべく邪魔しないように通りますよ(笑)。カラスは頭がいいって聞くし、何かすると仕返ししてくるみたいだから、邪魔しないようにしてます(笑)。

◆頭がいい鳥なんですね。

何か会話しているように見えるし、家族思いらしいです。よく夜中に鳴いているカラスがいますけど、あれは巣から子供が落ちていなくなったりしているんだって聞いたことがあって。だから、すごく頭がいい鳥っていう印象があるんです。飼ってはいけない鳥だとは思いますけど、ちゃんとなついてくれるのであれば、一緒にいるのも楽しそうだなと思います。ただ、あんまり家の中で大きな声は出さないでほしいですね(笑)。

似てると言われるチベットスナギツネ
いつか会いに行ってみたいです

眞島秀和インタビュー◆ご自身も空を飛んでみたいという願望はありますか?

飛んでみたいです。いいですよね、鳥って。渋滞にハマることもなく、自然のきれいな所を見に行けるじゃないですか(笑)。もし空を飛べたら、滝を真上から見たり、紅葉を見に行ったりしたいです。

◆鳥以外の動物になりたいと思うことはありますか?

すごく飼い主が溺愛してくれるなら、犬とか猫になりたいですね。一番会ってみたいのは、チベットスナギツネです。よく似てるって言われるので(笑)、どれだけ気が合いそうなのか、いつか会いに行ってみたい。写真を見た限りだと、気が合いそうだなと思います(笑)。

◆眞島さんは動物が好きだそうですね。

人と話すと気を使うじゃないですか。でも、動物ってしゃべれないから、一方的に愛情を注げる。そこが好きです。お腹がすいてたりするのも見れば分かるし、余計な言葉がなくていいなと思います。

◆最近、動物と触れ合いましたか?

番組のロケで動物がたくさんいる所に行きました。初めて手に小鳥のエサを持って、インコとかバーッて寄ってくるという体験をしました。ヤギの子供にミルクをあげたり、フクロウを手に乗せたりして、動物まみれで楽しかったです。動物ってリアリストなので、エサさえ持っていれば誰にでも寄ってくるんですよ(笑)。そういうところも好きです。

◆動物に限らず、他者の目を通して自分を見てみたいと思うことはありますか?

それはありますね。人からの評判が気になるということではなく、スキル的なことを確認したいんです。僕が“こうしたい”と思って演じたことが、実際にどう見えているのかっていうのは、自分ではわからないですから。それを知るために、僕にまったく興味のない何かになってみたい。何なら防犯カメラでも構わないです(笑)。

◆俳優としてのキャリアは、来年で20周年になるそうですね。今の心境はいかがですか?

最近、自分より年上の先輩方が出ている舞台を立て続けに見る機会があって、自分なんてまだまだだと思いました。20年近くやってきたけれど、何かの節目なんて思えない。“オレもこの方たちみたいなところまで行けるのかな”と、ただただ、打ちのめされた感じがありました。最近はご好評いただいているドラマに参加して、「見てるよ」「見たよ」と言われることも前より多くはなりましたが、諸先輩方を見ると、自分なんてまだまだ、全然足りない。なんとなく“それっぽくやっている”だけだなと思ってしまうんです。

◆このところ話題作への出演が続いていますが、役のイメージで見られているような感覚はありますか?

役のイメージは、見てくださる方が持ってくれるものだと思うので。自分自身がちゃんと新鮮な感覚でやっていくというのは変わらないから、あとはどういう印象を持たれるかというのは、フタを開けてみないと分からないことだと思っています。

◆俳優として大切にされていることはありますか?

ざっくりした答えになりますが、その時点で自分が一生懸命やっているかどうかということだけです。全力でやっている、というほど肩に力を入れるのもどうかと思いますけど、しっかり役に向き合ってやれているかということが大切だと思います。

◆これまであまり主演は多くなかったと思いますが、今回は主演ということで、何か感じていることはありますか?

ちょっと今回の作品に関しては特殊だと思うんですよね。メインでやらせていただいてはいますけど、ドローンを多用してドラマを作ったらどうなるかというのがテーマの作品だと思うので…。主役はカラス、もしくはドローンだと思っています(笑)。

◆では、あらためて本作のどんなところに注目してほしいですか?

ドローンをこんなに使った作品は初めてだと聞いたので、もちろんそこが見どころですが、僕としては冒頭のシーンもぜひ見てほしいです。ITベンチャーの社長の雅彦が、パーティーでバカ騒ぎしているシーンから始まるんですよ。乱痴気騒ぎみたいな(笑)。そういう演技をしたのが初めてだったし、自分自身は普段そういうところに行く機会がないので、早くそのシーンを見たいです(笑)。

 

■PROFILE

眞島秀和
●ましま・ひでかず…1976年11月13日生まれ。山形県出身。O型。
出演作にドラマ『おっさんずラブ』『隣の家族は青く見える』『プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~』など。映画「そらのレストラン」が2019年公開予定。

 

■ドラマ情報

『カラスになったおれは地上の世界を見おろした。』
BSプレミアム
11月10日(土)後10・00~11・29

<あらすじ>
ITベンチャーの経営に成功した坂口(眞島)は、ひょんな事からカラスと体を交換することに。大空を滑空し、会社や自宅へ行き、地上を這い回る同僚や妻を見下ろしていると、思いがけない真実が目に飛び込んできて…。
 
●photo/中村 功 text/加藤 恵 hair&make/佐伯憂香