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佐藤浩市インタビュー「扇の要の場合は全部責任を取る。その覚悟がなければやってはいけない」映画「64-ロクヨン-」

佐藤浩市インタビュー「扇の要の場合は全部責任を取る。その覚悟がなければやってはいけない」映画「64-ロクヨン-」

横山秀夫の傑作ミステリー小説を原作した骨太な人間ドラマ「64」が「64-ロクヨン-」前編/後編の2部作となって2016年夏に劇場公開され、大ヒットを記録。主人公・三上義信を取り巻く人々が織り成す物語を豪華共演者陣と共に重厚かつサスペンスフルに描きだした合計4時間に及ぶ感動巨編は、映画史に残る傑作の誕生となった。そのBlu-ray&DVD前編/後編が12月9日(金)に発売される。公開から半年、三上を演じた佐藤浩市さんにあらためて「64-ロクヨン-」を振り返ってもらった。

譲れないものがあったときに自分はどうするか、
その1歩の踏み出し方を三上に委ねる

佐藤浩市インタビュー

◆劇場公開されたとき、かなり高い反響となりました。今振り返って、制作者側として思いが伝わったという実感はありますか?

正直、難しいですよね、すべてが伝わるということは。言葉としての反響を今いろんな媒体で見ることができて、するとやはり意図するものと違っていたりする場合もあるんですよね。もうネガティブキャンペーンと同じじゃないか、わざわざそういう意見を乗せるのかというのも当然あるわけで。だからあまり自分たちがやったことがどれぐらい伝わったかということも気になりますけど、万人がどうこうということではないなと思っているところもあるんです。逆に改めて我々がやっている仕事は嗜好のものだなという認知をきちんとしていなければいけないなと思いました。

◆見ている側の嗜好という。

例えば、野球選手だとホームラン44本という数字は残るわけですよね。でも僕らの仕事は興行収入とか視聴率とか数字が残ることは確かにあるけど、感想はあくまで個人のものとして捉えないといけないと思います。やっぱり嫌いな人は嫌いなんですよ。それはそれでいいんで、あえてそれに対して自分は揺れない。まぁ、いいことだけ聞いていればいいじゃんという(笑)。

◆でも本作は前編/後編の2部作で公開されて、リピーター率が90%超と、2部作で公開された映画の中でも際立って高い数字を残しました。これは作品の評判がよかったからということもあったのかなと思います。

僕は公開1週目の作品の評判ではなくて2週目の落ち方を見ていて、逆に期待していたんですよ。これは続けて見なきゃいけない作品だと皆さんが思ってくれた。ある種、人の意見とか評判を耳にしてしまうと、後編が公開するまでの5週間を空けて見るのはきついと思っているんだろうなと。だから4週目とか5週目の下がりはないですね。そういうところでは数字には出るのかもしれませんが、続けて見たいと思っていただけたんじゃないでしょうか。

64-ロクヨン-前編/後編

◆三上は警察組織に所属し、さまざまな問題や人間関係が生じていきます。本作は決して警察の話ではなく、一般社会における組織と通じる話だと身近に感じました。

三上は決してヒロイックではない、凡庸な組織人として当たり前に生きてきた。そんな彼は日本という社会に適応できている人間ではあるし、そういう公用な生き方はできるけれど、やはり個人としての矜持というか、彼の中で突き動かされる部分が映画を見ている人たち、特に年齢や立場が近い方々を揺ぶったのかもしれません。自分は社会に適応していかなきゃいけない、組織人として生きていかなくてはいけないと思っていても、それでも譲れないものがあったときに自分はどうするか、その1歩の踏み出し方を三上に委ねる。自分自身も三上のようにいたいという思いが重なるんじゃないかなと思います。それがヒーローであったり、抜群に何かが強かったりすれば別物として見られると思うのですが、自己防衛できるぎりぎりのところに三上がいたということじゃないですかね。そう考えると、若い人には難しいかもしれないよね。父親だとか、組織の中にいて組織というものが十分に分かっている人たちのほうが自己投影できるかもしれない。若い人たちにも何かを感じてくれたとすれば、それは若い人たちもいずれ自分たちも生きていくその中で、最後の最後、譲れない何かの中で生きていきたいという思いがあったから楽しんでもらえたのかもしれません。

◆三浦友和さん、瑛太さんをはじめ、共演者の方々がとにかく豪華な作品です。三上が誰かと対峙するシーンはすべて真剣勝負のようなぶつかり合いを感じました。公開時にはきつい撮影だったとおっしゃっていました。今振り返ってみて撮影はいかがでしたか?

我々俳優の仕事って傷が残らない痛みを抱える仕事なんですよ。傷が残っていればその傷を見て思い出すんだけど、傷が残らないので撮影時に痛みはすごく感じたけど、すぐに忘れちゃうんですね。だからこの作品はきついだろうなって思いながらも次にまた受けちゃうんです。でも“やる”っていうことはそういうことなんですね。やっぱりきついんですよ、痛みを伴うし、重いし、苦しいし。でも終わってみると、映像の場合は形に残って、痛みや苦しみよりも、形に残せたなという方が勝つ。そういうことだと思いますね。実際に楽な気持ちで行く作品はあるけど、楽な作品はないですね。それは結局、扇の要の場合は全部責任を取る。興行も数字もその評価も、全部引き受けます、私のせいですと言える覚悟がなければ、僕はやってはいけないと思いますね。

◆この作品は特に扇は大きく、そして重そうで、要としての重責もあったかと思います。

大きかったですね。三浦さんたちベテランとやる楽しさと儀礼と、若い連中とやる覚悟とその責任と、それを四方から360度、いろんな人たちの目線の中に佐藤がいたと思えるかどうかですよね。

自分のいろんな愚かな部分を気づかせてくれた
そんな人たちに出会えたことへの感謝はありますね

佐藤浩市インタビュー

◆佐藤さんがもし仮に三上と同じような立場だったとして、同じような行動を取りますか?

三上の行動がヒロイックなのかは別にして、気持ちの部分でいうと僕が組織人であったことがないのでそこらへんは一番取りやすいですよね。自分には家族がいて家庭もありますけど、でも結局俳優は根無し草じゃないですか。そうやって生きてきたので、逆に言うと三上のようなスタンスが取りやすくなるかもしれない。そうは言いながら僕も社会に適合するように生きてはいるんで、そこらへんは控えたほうがいいかなとか思ったり、でも1人だけ控えないときはあったりはするんだけれども…。でももし自分が組織人として会社勤めをしていて、もし自分がそのような立場に直面したらなかなか難しいなと思ってしまうでしょうね。昔、相米慎二(監督)に“お前、サラリーマン簡単に思っているだろ”って言われてドキっとしたことがあって。“お前、会社行ったら給料もらえると思ってるだろ、お前もっと勉強してみな、サラリーマン”と言われて。僕が30歳ぐらいのときかな、相米と話していてそう言われたことがあったんです。それで組織の中にいるということ、考え方というか生き方、そこで何かを持つということ、そういうことを含めて、ほんの少しだけ勉強させていただいたんですけど。例えば “俺たち表現者は”とか“俺たちミュージシャンは”って言っているやつらにろくな奴いないじゃん(笑)。表現者って何だよ、誰だって表現者なんだよって。僕は20歳ぐらいのときにこの世界に入って、今自分が生きている世界だけを考えながらその世界観で生きていたら、全然違う世界観があることが当たり前なんだけど、その当たり前のことを気づけるかどうかってことが一番大事なんじゃないかなと相米は教えてくれたんですよ。それぞれの人生の中でどこかで知っておきたいことだと思います。僕は運がいいことに、いろんな出会いの中で、自分のいろんな愚かな部分を気づかせてくれた。そんな人たちに出会えたことへの感謝はありますね。

64-ロクヨン-前編/後編

◆本作「64-ロクヨン-」は佐藤さんにとってどんな位置づけの作品になりますか?

今考えることじゃなくて、自分がリタイヤする寸前に思うことだと思います。いつも思うんですが、インタビュー受けたり映画の話をしたりするけど、自分の中で覚えていることって、おじいちゃんじゃないけど昔のことなんですね。直近5~6年のことってなかなまだ自分の中で何かの形になっていないんですよ、経験なだけであって。だからそれがこの先何十年、自分がもし現役を続けていくとして、そのとき“そうそう「64-ロクヨン-」という映画が2部作であってさ”と自分で見えてくるんじゃないのかなと思うんですけどね。今思うと…撮影のときは榮倉奈々はまだ独身だったなとかかな(笑)。

◆Blu-ray&DVD発売となり、豪華版の特典映像は250分を超える充実した内容になっていますね。特に印象に残っているものはありますか?

ニコニコ動画での春日太一さんとの対談は面白かったですね。以前から何度か本を読んでいたので春日さんとはお話してみたかったんです。それが今回実現して。“ニコ生90分中継インタビュー”っていうのは、インパクトありますね。あとはTBSの深夜枠でとにかく対談したんですよ。本当に何本やったかな、4回ぐらい対談して。榮倉、仲村トオル、瑛太、永瀬正敏×緒形直人とそれぞれやりました。250分もあるので、かなり特典も楽しみだと思いますよ。

 

■PROFILE

佐藤浩市インタビュー●さとう・こういち…1960年12月10日生まれ。東京都出身。
80年俳優デビュー、81年「青春の門」(蔵原惟繕監督)でスクリーンデビューを果たす。「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(94年/深作欣二監督)で第18回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、「ホワイトアウト」(00年/若松節朗監督)と「壬生義士伝」(03年/滝田洋二郎監督)で同最優秀助演男優賞を受賞。近年の主な映画出演作は「草原の椅子」(13年/成島出監督)、「許されざる者」(13年/李相日男監督)、「バンクーバーの朝日」(14年/石井裕也監督)、「愛を積むひと」(15年/朝原雄三監督)、「HERO」(15年/鈴木雅之監督)、「アンフェア the end」(15年/佐藤嗣麻子監督)、「起終点駅 ターミナル」(15年/篠原哲雄監督)、「続深夜食堂」(16年/松岡錠司監督)など。

 

■作品情報

64-ロクヨン-前編/後編64-ロクヨン-前編/後編
2016年12月9日(金)発売

豪華版
64-ロクヨン-前編/後編
豪華版 Blu-rayセット 9800円+税

64-ロクヨン-前編/後編
豪華版 DVDセット 8800円+税

<特典映像>※Blu-ray&DVD共通
・メイキング
・舞台挨拶集
・スペシャルインタビュー集(佐藤浩市/綾野剛/榮倉奈々/瑛太/坂口健太郎/夏川結衣/椎名桔平/滝藤賢一/吉岡秀隆/窪田正孝/仲村トオル/奥田瑛二/緒形直人/永瀬正敏/三浦友和)
・映画ナビ<スペシャル編集Ver>
・ニコ生特番「佐藤浩市さんに役者人生を聞いてみた/聞き手:春日太一」
・特別対談集(佐藤浩市×綾野剛×榮倉奈々)(瑛太×坂口健太郎)(佐藤浩市×瑛太) (佐藤浩市×永瀬正敏×緒形直人)ほか
・TRAILER~特報・予告・スポット

<初回生産限定>※Blu-ray&DVD共通 初回版限定応募抽選特典
抽選で64名に【佐藤浩市&瀬々敬久監督 直筆サイン入り特別完成台本】をプレゼント!!

<封入特典>
※Blu-ray&DVD共通 ・特製ブックレット(28P)

通常版
64-ロクヨン-前編通常版Blu-ray 4,000円+税
64-ロクヨン-前編通常版DVD 3,500円+税

64-ロクヨン-後編通常版Blu-ray 4,000円+税
64-ロクヨン-後編通常版DVD 3,500円+税

<特典映像>※Blu-ray&DVD共通
・TRAILER~特報・予告・スポット

発売元:TBS
販売元:TCエンタテインメント

©2016映画「64」製作委員会

 
●photo/干川 修 hair&make/及川 久美(六本木美容室)styling/藤井享子(banana) 衣装協力/override

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