広瀬すず&坂口健太郎「こんな時代があったんだと考えるきっかけになったら」スペシャルドラマ『エアガール』

特集・インタビュー
2021年03月20日

戦後を舞台に、日本初の航空会社の設立を描いたスペシャルドラマ『エアガール』(テレビ朝日系)が3月20日(土)午後9時から放送される。激動の時代の中、戦後初のキャビンアテンダント(CA)=“エアガール”を目指す小鞠を広瀬すず。また、日本の空を取り戻すために奔走する三島を坂口健太郎が演じる。ドラマ初共演となる2人に、物語の魅力や撮影現場の様子、そして気になる小鞠と三島の関係性を直撃!

◆最初に台本を読んだ時の印象から教えていただけますか?

広瀬:航空事業についてほとんど触れたことがなかったので、何もかもが新鮮でした。しかも日本に初めて民間の航空会社が出来たのが、まだ60年ほど前だったということも衝撃的で。勝手にもっと古くからあったと思っていたので驚きました。

坂口:僕もそうですが、飛行機って普段あまりにも身近すぎて、そこにどんな歴史があるのか、ご存知ない方も多いと思うんです。もちろん、このドラマで描かれていることが全てではなく、当時はもっともっといろんな苦労があったと思うのですが、こうして日本初の航空会社の設立に尽力した方々のことを知ると頭が下がる思いですし、それを題材にした作品に参加させてもらえることに喜びを感じました。

◆お二人とも空の仕事を目指す役どころです。広瀬さんはパイロットになることを夢見つつ、エアガールという仕事に挑む小鞠役ですが、演じてみていかがでしたか?

広瀬:最初は私に務まるのかなと不安でした。でも、衣装合わせでユニフォームを着た時に気持ちが入って、少し安心できたのを覚えています。実際にCAの方にも所作の指導をしていただいたのですが、“絶対にお客様の筋肉を使わせない”ということを大事にされているなど、知らないことがたくさんあったので、すごく勉強になりました。

坂口:言われてみると、確かにそうだね。飛行機に乗っていて力を使うことってないかも。

広瀬:それはCAさんのお心遣いなんです。絶対にそのスタンスを崩さないという姿勢がとてもカッコよかったですね。それに、いろんなサービスに対して細かく気を配っていて、 “私たちは常にお客様から見られている”という意識も忘れないようにされている。そうした姿を見ていたら、“私も頑張らないと!”という思いになりました。

◆いっぽう、坂口さんはパイロットを志し、日本の航空会社の社員となる三島役です。

坂口:演じながら、この時代のエネルギーというものを強く感じました。戦後でいろんなものが不足している中で、日本初の飛行機を飛ばすなんてことは相当大きな夢だったはず。そうした、夢に向かって突き進むエネルギーを僕なりの解釈で、何とか三島という役に落とし込めたらいいなと思って演じていました。また、三島には兵隊だった過去があるんです。ですから、撮影中は顔つきや内面から自分を律するような空気感を出すように意識していましたね。

◆今回のドラマでは史実の要素とは別に、小鞠と三島の関係性も気になるところです。

広瀬:小鞠と三島の関係性は恋愛と呼べるのかどうか…何だか不思議な感じなんですよね(笑)。

坂口:うん、そうだね(笑)。

広瀬:台本を読むと、少し恋心が動くようなシーンはあるんです。でも、監督は「ここはラブシーン“のような”場面だから」という言い方をされていて。“のような”というそのニュアンスが結構絶妙だなと。小鞠も三島さんも、お互いにはっきりと口に出さないから、本当に2人の間には何もないのかもしれないし、もしかしたら自分の気持ちに気づいていないだけなのかもしれない。小鞠が三島さんに抱いている感情が恋なのか、純粋に人としての憧れなのか、私にもよく分からないんです。

坂口:僕もよく分からない(笑)。ある瞬間ではラブな印象も受けるけど、決定的なものはないもんね。それに小鞠も三島もお互い夢を持つ“同志”のようなところもある。だから、二人の関係性については見る側に判断してもらっていいんじゃないかと。ただ、終盤にとてもきれいな二人の関係性を表現しているシーンがあって。その場面が大好きなので、ぜひ注目してほしいですね。

◆撮影現場はどんな雰囲気でしたか?

広瀬:私、実はテレビ朝日さんのドラマに出演するのが初めてなんです。

坂口:そうなの!? 意外ですね。

広瀬:最初はドキドキしていたのですが、現場に行ったら以前お世話になったスタッフさんもたくさんいたので、違和感なく過ごすことができました(笑)。

坂口:この現場はすごく居心地がいいですよね。雰囲気が温かいというか。

広瀬:監督をはじめ、個性豊かなスタッフさんがたくさんいらっしゃって。こんなにずっと役者、スタッフが笑っている現場もあまりないと思います。

坂口:確かに。撮影したのは夏で、しかも飛行場だと日陰や待機する場所が全然ないんです。そうした逃げ場のない状況でも、みんな「暑いなぁ、暑いなぁ」って言いながら、ニコニコしていて(笑)。おかげで、軽やかな気持ちで撮影することができましたね。

◆ちなみに、お二人とも飛行機はお好きですか?

坂口:乗るのは大好きです。ちょっと特別感があって。

広瀬:分かります!

坂口:飛行機の中から空を見るのが好きなんです。特に夜とか。

広瀬:異空間のような世界に酔いしれるというか。現実を忘れられるような感じがしますよね。

坂口:それに、雲の上ってそんなに景色が変わるわけでもないのに全然飽きない。あれは飛行機に乗らないと味わえない感覚だなって思います。

広瀬:そう言えば数年前の夏にロサンゼルスに行ったのですが、その帰りの飛行機で今回のドラマで(エアガールの)相原翠役を演じている(山崎)紘菜ちゃんとばったり会ったんです。

坂口:えっ、たまたま!?

広瀬:うん、偶然! 席が近くて、お互い“見たことのある人がいるなぁ”と思っていたら、“あれ!? 何でここに?ってなって(笑)。その後でこのお仕事があったので、飛行機に何かしらの縁があるのかなと思いましたね。

◆では最後に、視聴者にメッセージをお願いします!

広瀬:この作品は小鞠や三島だけでなく、この時代を生きた方々の気持ちも織り交ぜられていて、深いストーリーになっていますが、その一方で、ポップに描かれている楽しいシーンもあります。いろんな側面からこの作品をご覧いただき、こんな時代があったんだと考えるきっかけになったらうれしいなと思います。

坂口:今日の航空事業の礎を築いた方々の生き様が力強く描かれた作品です。登場人物の中には、藤木直人さん演じる白洲次郎のように三島たちと対極の考えを示す人物もいて。でも、彼にもちゃんとした正義があり、決して間違ったことを言っていない。そうした姿からは、“日本の空を自分たちの手で守りたい”という思いが強く伝わってきます。そんな登場人物たちの情熱を一緒に感じていただければと思います。

PROFILE

●ひろせ・すず…1998619日生まれ。静岡県出身。AB型。SPドラマ『桶狭間 OKEHAZAMA~織田信長~』(フジテレビ系)が326(放送。4/11(日)スタートのドラマ『ネメシス』(日本テレビ系)、521(公開の映画「いのちの停車場」にも出演する。

●さかぐち・けんたろう…1991711日生まれ。東京都出身。O型。近作にドラマ『35歳の少女』、映画「仮面病棟」など。330(に『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)のSPドラマが放送。42(には同作の劇場版が公開。

作品紹介

『スペシャルドラマ エアガール』
2021年3月20日(土) テレビ朝日系 後9001105

STAFFCAST
原案:中丸美繪 「日本航空一期生」(中公文庫)
脚本:橋本裕志
監督:藤田明二
出演:広瀬すず、坂口健太郎、藤木直人、山崎紘菜、藤野涼子、中田クルミ、伊原六花、田中哲司、鶴見辰吾、橋爪功、松雪泰子、吉岡秀隆ほか

 STORY
1928 年、東京・下町で小さな町工場を営む両親の元に生まれた佐野小鞠広瀬すずは、飛行機部品の生産を手掛ける父の影響で空への憧れを募らせ、パイロットになりたいという夢を抱きながら大きくなった。しかし、兄は神風特攻隊として出撃して戦死。両親も東京大空襲で亡くしてしまい、独りぼっちとなった小鞠は、料亭を営む叔母・千代(松雪泰子)の元に身を寄せることに。おかげで高等女学校だけは卒業させてもらったものの、料亭の手伝いに明け暮れる日々を送っていた。

そんなある日、小鞠は料亭の一室から「日本の空を日本人の手に取り戻したい!」という決意みなぎる熱い言葉を耳にする。声の主は、逓信省航空保安部長の松木静男(吉岡秀隆)。日本は終戦後、GHQによって一切の航空活動を禁じられていた。さらに、吉田茂首相の側近・白洲次郎(藤木直人)は日本の航空事業を海外企業に委ねた方がよいと考えていた。だが、松木はどんな困難が待ち構えていても日本人の手で航空事業を始めるべきという、固い信念を抱いていたのだ。松木の話に感動し、思わず聞き入ってしまった小鞠だったが、彼の若き部下・三島優輝(坂口健太郎)に立ち聞きをとがめられてしまう。しかし、これが2人の運命の出会いとなる…。

1951年、GHQと粘り強く交渉を重ねた松木の熱意が実り、ついに戦後初の日本の航空会社日本民間航空が発足する。既に社員となっていた三島からエアガールを募集していると聞いた小鞠は飛行機の仕事に関わりたい一心で応募を決意。しかし、エアガールは最先端の超人気職! とんでもない倍率の試験が待ち構えていた。

その後、数々のピンチを乗りこえてなんとか合格した小鞠だったが、入社式からわずか1週間後、慌ただしく試験飛行に臨むこととなって…!?

●photo/中村 功 text/倉田モトキ ©テレビ朝日