吉田大八監督と脚本家・香川まさひとが激闘トーク&錦戸亮を絶賛!映画「羊の木」トークライブ

エンタメ総合
2018年01月24日

155993_01_R 傑作コミックを錦戸亮主演で映画化した「羊の木」の公開に先立ち、吉田大八監督と脚本家・香川まさひとが、製作の舞台裏を明かすトークライブを開催した。

 漫画家・山上たつひこといがらしみきおがタッグを組み、2014年文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した同名傑作コミックを原作とする映画「羊の木」。香川の脚本とのタッグは映画「クヒオ大佐」以来10年ぶりとなる吉田監督は、「殺人犯が過疎化の港町にやって来るという原作にある設定が面白いと思ったし、混沌としたパワーもあった。ただそれにどうやって手を付けたらいいのか分からず、辞退しようと思ったときに、香川さんが思い浮かんだ」と再タッグに至った経緯を回想。すでに原作を読んでいたという香川は「企画の打ち合わせはまさに悪夢。70回くらいやりました。それで完成までに2年くらいかかった。ここまで時間をかける映画も珍しい」と、過ぎ去った苦労を振り返った。

劇中の殺人犯たちの状況は、現実世界の移民問題と置き換えて見ることもできるが、「7冊にも及んだ打ち合わせノートには、刑務所の問題や公務員の問題などの新聞記事の切り抜きがはられているし、移民問題についての指摘もあった」と香川が証言。吉田監督は「シナリオ作業のときは今ほどに移民問題を切実に考えていたわけではなかったが、今になって移民問題に対する世界の切迫感が強くなった気がする。映画に描かれていることがリアルに迫ってきて怖いけれど、しかし映画は時代の中で見られるものなので、避けられないもの」と、本作の持つ世界観に現実問題が接近したことに驚いている様子だった。

本作では、元殺人犯たちという“異物”を受け入れられるか?ということがひとつのテーマになっているが、吉田監督は「現代は考えの違う人との線をはっきりと引きがち。お互いに分からないことに傷つき合いながら、付き合っていくということがなくなってしまった」と、SNSなどを中心とした対面しないで済むネット社会に危機感を感じていることを明かした。香川は「今回の映画の打ち合わせ自体が激しいぶつかり合いで、多いときは17時間も吉田監督と顔を突き合わせて、『殺してやろうか!』と思うところまでいった」と、想像を超えるぶつかり合いが繰り広げられた制作過程を回顧。これに吉田監督も「決別するかと思うことが3度あったが、それでも香川さんとは付き合い続けた。シナリオ作業はその繰り返し。だからこそのぶつかり合いの熱量が映画にも表れている」と、その仕上がりに自信をのぞかせた。

また、吉田監督は、主演を務めた錦戸について「普通の青年を演じても魅力的な人。原作よりは若い設定だが、より若い未熟な魂が殺人犯たちとの触れ合いを通してどう変わるのかを見せるのが映画向きだと思った。錦戸さんはそんな普通を演じても説得力のある人」と、自然体の演技を賞嘆。錦戸は男女6人の殺人犯の受け入れを担当することになった市役所職員・月末を演じているが、「そんな彼の表情を通して、元受刑者たちの姿や事件を見せていきたかった」と狙いを明かした。

吉田監督と香川が激しいぶつかり合いを超えて作り上げ、錦戸が監督も絶賛する演技を見せる映画「羊の木」は、2月3日(土)全国ロードショー。

<作品情報>
映画「羊の木」
2月3日(土)より全国ロードショー

■STORY
さびれた港町・魚深(うおぶか)に移住してきた、互いに見知らぬ6人の男女。市役所職員の月末(つきすえ)は、彼らの受け入れを命じられた。一見普通に見える彼らは、何かがおかしい。やがて月末は驚がくの事実を知る。「彼らは全員、元殺人犯」。それは、受刑者を仮釈放させ過疎化が進む町で受け入れる、国家の極秘プロジェクトだった。ある日、港で発生した死亡事故をきっかけに、月末の同級生・文(あや)をも巻き込み、小さな町の日常の歯車は、少しずつ狂い始める…。

■CAST
錦戸亮 木村文乃 北村一輝 優香 市川実日子 水澤紳吾 田中泯 / 松田龍平

■STAFF
監督:吉田大八
脚本:香川まさひと
原作:「羊の木」(講談社イブニングKC刊)山上たつひこ、いがらしみきお

■公式サイト
http://hitsujinoki-movie.com/

©2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社