『生きてるだけで、愛。』趣里&関根光才監督が英レインダンス映画祭に参加

映画
2018年10月03日

映画『生きてるだけで、愛。』 映画『生きてるだけで、愛。』が、イギリス・ロンドンで開催された第26回レインダンス映画祭に出品され、主演の趣里と関根光才監督がレッドカーペットに登場。ワールドプレミアとなる公式上映後に行われた質疑応答に参加した。

 本作は、芥川賞作家・本谷有希子の同名小説を趣里主演で映画化した、今を懸命に生きる不器用な男女2人の真っすぐでエモーショナルなラブストーリー。には、主演の趣里をはじめ、菅田将暉、田中哲司、西田尚美、松重豊、石橋静河、織田梨沙、仲里依紗が出演。同作が初の長編監督作となる映像作家・関根光才が監督を務める。

<上映後の質疑応答>
◆この作品は本谷有希子氏による日本の小説が原作となっていますが、なぜこの作品を映画化しようと思ったのですか?

関根監督「本谷さんが書かれる文体はとてもユニークでエモーショナルです。この小説は彼女がまだ20代だった時に書かれている作品で、彼女だけでなく、多くの若者たちが抱える社会への怒りや鬱積が内包されていて、初めて読んだ時に衝撃を受け、それを忘れることができないでいました」

【観客からの質問】
◆趣里さんの演技はとても力強く、鬼気迫る感じでしたが、寧子という躁うつ病を抱える主人公を演じるのは決して簡単ではなかったと思います。どのようにして役作りをしていったのですか?

趣里「鬱の方がこうだとか、ということを考えずに、まずは脚本の中の“寧子”のことを考え、理解することに努めました。私は、過去に、けがでバレエをやめなくてはいけなくなり、希望を失った中で生きなくてはならない葛藤を経験しました。寧子を通して、そのときの自分を思い出しました。私は映画を観て“辛いのは自分だけじゃない”と感じ、心が救われた経験があります。そこで、自分も寧子を演じることで、少しでも観て頂いた方の心に何かを残せるのではないか、共感していただける部分があるのではないかと思い、“この役は絶対に自分が演じたい”と思いました」

◆映画を観て言葉を失っています。魂に触れられたようで、すさまじい作品でした。加えて、現代社会が抱えるリアルな問題を描いた作品をここレインダンスに持ってきてくれて、本当に感謝しています。うつ病自体が日本ではあまり取り上げられることのない問題だと思いますが、この映画がここイギリスで評価を受けることによって、もっとそういった問題に目を向けるようにしなければならない、という思いを持って、作品作りをしたのでしょうか?

関根監督「はい、そうですね。この問題は僕たちがどこに住んでようと共通する普遍的な問題だと思います。人間社会の中で生きていればこういった問題には必ず直面します。うつ病の方々は助けを求めることも難しいですし、話題にもできないかもしれません。この作品を創ったことによって、この問題が解決できるとは思っていないですが、苦しんでいる方々を元気づけたいという思いはありました」

趣里「私は、躁うつという症状を持つ寧子を演じていて、何が正しくて、何が間違っているのか、分からない部分がありましたが、日本はどちらかと言うと、“こうあるべきだ”と決めつけられてしまう、風潮があるかもしれません」

【観客からの質問】
◆感情を抑えているキャラクターが登場してきますが、それは日本映画の特徴なのでしょうか?

関根監督「たしかに、多くの日本映画では、感情表現が小さく、押さえつけられているように見えるかもしれません。それは、もしかしたら日本の文化や社会がそうであるからかもしれません。日本人の多くはあまり直接的に感情を表に出さないんです。そういったことを踏まえると、この映画はユニークな作品と言えるかもしれません。主人公の寧子は感情をすごくあらわにしますからね」

<上映イベント終了後のコメント>
趣里「上映後のQ&Aのお客さんの顔を見て、同じ時間を共有できたのがうれしかったです。質問も社会的な内容もありましたが、人間の感情というのは一緒なのかなと感じました。観た方のいろんな感想をもっと聞きたかったです」

関根監督「英語の字幕付きで映画を観たので、観客の反応しかり、日本で観るのと印象が随分違いました。映画を観ながら、こちらの方々に分かるのかなっと思っていたんですけど、観終わった後にお客さんが席から離れずに、僕たちの話を熱心に聞いてくれたので、モチベーションが高いと感じました。皆さんが完全に理解している感じでした。この映画は日本の、ある社会の問題を描いている作品だったのにもかかわらず、自分事として感じてくれたことがすごくうれしかったです」

映画『生きてるだけで、愛。』
11月9日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

<STORY>
生きてるだけで、ほんと疲れる。鬱が招く過眠症のせいで引きこもり状態の寧子と、出版社でゴシップ記事の執筆に明け暮れながら寧子との同棲を続けている津奈木。そこへ津奈木の元カノが現れたことから、寧子は外の世界と関わらざるを得なくなり、二人の関係にも変化が訪れるが……。

出演:趣里 菅田将暉 田中哲司 西田尚美/松重豊/石橋静河 織田梨沙/仲里依紗
原作:本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮文庫刊)
監督・脚本:関根光才
製作幹事:ハピネット、スタイルジャム
企画・制作プロダクション:スタイルジャム
配給:クロックワークス

公式サイト:http://ikiai.jp

©2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会