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Eテレ『キャラとおたまじゃくし島』寺田憲史&門秀彦インタビュー

Eテレ『キャラとおたまじゃくし島』寺田憲史&門秀彦インタビュー

ファンタジーアドベンチャーアニメ“キャラたま”こと『キャラとおたまじゃくし島』が、4月からEテレにて放送中。魔女にゆがめられた音楽の島で、1人の少女戦士・キャラが個性豊かな“ガッキアニマル”たちと再び音楽のエネルギーを取り戻す…という一見シンプルなストーリーだが、実はこのアニメには、「共生」「心のバリアフリー」というテーマが隠されている。
NHKが挑む新たな試みの“核”となるのは、「ファイナルファンタジー 1~3」「ドラえもん 友情伝説ザ・ドラえもんズ」などの原作・脚本を手掛けた寺田憲史さんと、ハンドトーク(手話)をテーマにした作品で活躍中のイラストレーター・門秀彦さん。初タッグを組むお2人に制作秘話を伺いました。


ガッキアニマルをはじめ、登場キャラクターたちには聴覚障害、発達障害といった個性がありますが、作品の中でそういう言葉は一切出てきません(寺田)

『キャラとおたまじゃくし島』寺田憲史&門秀彦インタビュー◆お2人は本作の“共同原作”として、寺田さんは原作・脚本、そして門さんは原作・キャラクターデザインを務めていらっしゃいます。

寺田:僕がまず設定やストーリーを考え、そこに門さんが絵をつけてくださる、という流れで制作しています。これまでいろんなアニメやゲームの作品に携わってきましたが、その中でも『キャラとおたまじゃくし島』は僕にとってチャレンジングな作品。1枚の絵を見せられてそこから物語や人物設定を構築するというお仕事が多いのですが、まず門さんの絵を見せていただいた時に、非常に壮大な世界観を持つ絵描きさんで驚きました。門さんご自身も絵本を書いていらっしゃいますが、紀平さん(NHKエデュケーショナル 紀平延久プロデューサー)が「オリジナル作品として、僕と門さんが組むことでどんな化学反応があるか試してみよう」ということだったので、僕もまっさらな気持ちである意味、門さんを探らせていただいて。実際お会いしてお話を伺った時にはものすごくインスピレーションを受けました。

:僕はもともと両親がろうあ者で、小さい頃から手話が身近にありました。今は絵描きとして活動させていただいていますが、実はもともとアート思考ではなくて、両親とのコミュニケーションの補足として絵を描き始めたのがきっかけなんです。大人になってから、1つのキャンパスにみんなで落書きをするワークショップを海外でやるようになり、例えばアフリカでろうの子供たちとやった時は、子供たちはクレヨンを触ること自体が初めてで僕もアフリカの手話が分からないという状況で、躊躇しつつも子供たちが何かを描き出して、それが連鎖していって…というコミュニケーションがあったんですよね。音楽もそうですし、そういう言葉以外のコミュニケーションに触れる機会が多かったんです。だから、この作品はファンタジーですけど、お互いがまず心の入り口に立つという意味では僕にとってはリアルな体験で、やればやるほどリアルだなと思っています。実際に出会った子たちを想像して、自分の経験とリンクさせながら作っています。

◆最初は作品を拝見しても福祉的なテーマがあるということに気づきませんでした。ビジュアルを含めて、作り手として意識されていることを教えてください。

Eテレ『キャラとおたまじゃくし島』寺田:ガッキアニマルたちは体の一部が楽器になっているんですが、このままでは面白くないというか、ここが物書きのへそ曲がりなところなんですけど(笑)、魔女によってゆがめられた設定にして、例えばヒュンのしっぽはトロンボーンの音がするバイオリン、ユキゴッホの腕はフルートの音がするハーモニカ…といったようにどんどん設定を考えていきました。それからガッキアニマルやほかのキャラクターたちには聴覚障害、発達障害といった個性がそれぞれあって、例えばヒュンは自閉症なんですね。ただ、作品の中で、そういう言葉は一切出てきません。まずはファンタジーとして楽しめるものにしようという共通認識をスタッフ間で持って描いています。

「こういう子も共生してるんですよ」という見せ方は絶対やめたいし、何か変わったキャラクターを作ろうという思いもない。子供番組を長くやってきたので、大人目線で何かを作ると、絶対子供って逃げるんですね。だからやっぱり、何気なく「あ、そういえば○○って車いすなんだった」と思わせられる、「いつの間にかそのキャラクターがいた」というのがこの番組の本質だと思うんですよ。それから、キャラクターというのは寄り添うことで動き出すんですが、今回その役割を果たしているのが主人公のキャラです。キャラは能天気で自分が倒れても人のために動く、“寄り添える”子。だからキャラがガッキアニマルたちの言動を拾ってあげて、相棒のカタカタをツッコミ役にすれば、三者でコミュニケーションが取れるわけです。だから、“人”で作るのがポイントですよね。健常者を描くのと変わらないですよ。

:キャラクターデザインにおいては、この子たちの身体的特徴が、個性として全面に出ないように意識しています。個性を全面に出すより内面を描こうということだったので、僕がこれまで作っていたような体そのものが楽器のキャラクターというよりは、一部を楽器にしたり、それ以外にも特徴をつけるように意識しました。あとは子供たちが覚えやすい、落書きで書けるような分かりやすいキャラクターにしています。

ガッキアニマルたちはそれぞれハンデがありますが、この子たちって決して助け合わないと生きていけないわけではなくて、それぞれが勝手に生きてるんです。そこにキャラが「ちょっと手伝ってよ」みたいな感じでみんなを巻き込んでいくのがすごくいいと思うし、実際もそうだと思います。助け合いうんぬんという話ではなくて、困ってる人がいたから手を貸したぐらいの感覚。物語の中でも、キャラって「あなたはこれが素晴らしい」とか、全然言わないんですよ。カタカタもガンガンツッコむし、そもそもカタカタなんて手話できませんからね(笑)。そういうこと関係なく仲良くなっていくんです。その人の魅力にひかれれば、コミュニケーションが面倒くさいと思いながらもつながるんですよね。それから、障害者の方と接する時、「偽善的に見えないか」「本当は自分そんないい人じゃなくて、それがバレるんじゃないか」とすごく気にする方も多いと思うんですけど、考えすぎというか、「あ、ごめん」で済むし、それは健常者同士も同じで完璧なコミュニケーションはないんです。この作品を見た障害者の方は「何で優しくしてくれないんだ」と思うかもしれないけど、健常者だってそんなもんだし、障害者だってそんなもん。物語の中では、そこを寺田さんがうまくユーモアに持っていってくださったりしていますが、僕からするとすごくリアルなんです。


コミュニケーションの大事な部分を描いていて、僕も現場で泣きそうになりました(笑)(門)

Eテレ『キャラとおたまじゃくし島』◆先ほど門さんについて寺田さんが「非常に壮大な世界観を持つ方」とおっしゃっていましたが、逆に門さんにとって寺田さんとのタッグというのはいかがでしたか?

:寺田さんご本人はさらっとおっしゃっていましたけど、すごいんですよ。キャリアが。僕はわりと1人でワークショップとかをやることが多くて、大ベテランの方とチームを組むということがそんなになかったんですね。だから言葉でうまく言えないぐらい、寺田さんや(田上キミノリ)監督と出会えて本当に大きな刺激を受けました。例えば何もないところに寺田さんがインクを落としてそれが絵になっていくイメージというか、出来上がってみて、「寺田さんが言ってたのってこういうことだったんだ」「そうくるか」と発見があるんですよね。僕は自分の経験から作品作りをするんですが、寺田さんはもっと俯瞰で物語をご覧になって立体的な視点で描かれるので、すごく勉強になっています。

寺田:ありがとうございます(笑)。僕もどこかに属していたわけではないけど、クリエイターとクリエイターが会えば刺激になるのでそれはやっぱり面白いですよね。僕も自分の考えた設定に門さんが絵を描いて「そうきたか」と思うし、それは組むことの面白さだと思うんです。僕は長いことゲームやアニメーションに携わってきて、組む人によって成功するしないは如実に出ると肌で感じて、正直それが嫌になって『キャラたま』に入る前は小説に閉じこもっていた時期もありました。でも、1人でやるのと組むのとでは違う面白さがありますよね。

:今こんなに仲良くしてますけど、ここでやり合うこともあるんですよ(笑)。

寺田:そうですよね(笑)。

:だからここもコミュニケーションなんですよね。お互いが自由な発想を持っているのでぶつかり合うこともあって。コミュニケーションをテーマにしているので、コミュニケーションの中で作品ができるのは面白いなと思います。

Eテレ『キャラとおたまじゃくし島』◆放送がスタートして約2か月ですが、反響はいかがですか?

寺田:もちろん大きなテーマはあるけど、それって子供には関係なくて。小さい子に物語の全てを理解してもらうのは難しいので毎回ギャグで遊ばせているんですけど、試写会で門さんの息子さんたちが笑って喜んでくれていたのでうれしかったですね。

:オープニングや最後に手話が出てくるので、「手話を覚えたよ」というお話はよく聞きます。あとは色がきれいで、日本っぽくない、不思議な感じがすると聞きますね。それから、5分アニメですが凝縮された内容なので、「5分って感じがしない」と言われました(笑)。6話(5/28放送)以降は各キャラクターの魅力も出てきますし、わりと泣かせる、コミュニケーションの大事な部分を描いていくんですが、僕も現場で泣きそうになってしまって(笑)。9話(6/18放送)のヒュンの回とか11話(7/2放送)のユキゴッホの回とか…。

寺田:声優さんの録音の時に、門さんが隣で「このキャラって子、いい子ですよねぇ」ってホロリとしていて(笑)。せりふを書いた本人としてはうれしいばかりです。そういう要素はシナリオにも散りばめているので、それが視聴者にも伝わると、またちょっと違う番組として広がっていくんじゃないかなと思います。

:意外と大人の方がハマっていくんじゃないかなって予感もありますよね。10代、20代の人が見ても楽しんでもらえるんじゃないかなと。福祉番組として固い切り口で描いていないので、ふわっとキャラクターたちに出会って感情移入して、気づけばその魅力にひかれてた、そういう見方をしてくれたらうれしいです。言葉にすると簡単ですが、笑いあり涙ありでリアリティもあって、そこにファンタジーという飾り付けをしているので、いろんな見方をしてもらいたいですよね。再放送もやってるので、全世代に見てほしいです。

 

■PROFILE

寺田憲史(原作・脚本)
●てらだ・けんじ…脚本家、作家、アニメ監督。「鉄腕アトム」で文芸担当として手塚治虫に師事。「ファイナルファンタジー 1~3」のほか、「ドラえもん 友情伝説ザ・ドラえもんズ」のゲーム原作・脚本。「きまぐれオレンジロード」「キン肉マン」「キャッツアイ」「コブラ」「おでんくん」ほか、ヒットアニメの脚本、演出多数。

門 秀彦(原作・キャラクターデザイン)
●かど・ひでひこ…絵描き。“Hand Talk”(手話)をテーマに創作活動を行う。独学で絵やデザインを学び、武蔵野美大、全国のろう学校、小学校などでアートワークショップを行う。ディズニーの手話絵本シリーズのアートディレクションや、Eテレ『みんなの手話』アニメ制作も務める。

 

■番組情報

アニメ『キャラとおたまじゃくし島』(全40回)
放送局:Eテレ
放送日時:毎週(月)前10・15
再放送:Eテレ 毎週(木)前5・55 ほか

公式HP:https://www.nhk.or.jp/school/cara-tama/

©2018 門秀彦・寺田憲史/NHK/おたまじゃくし島管理組合
 
●text/金沢優里

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