田中俊介インタビュー「原作を読んで作品の世界観のとりこに」映画「ダブルミンツ」

特集・インタビュー
2017年06月03日

エンターテイメント集団、BOYS AND MENのメンバー田中俊介さん。淵上泰史さんとW主演を務めた映画「ダブルミンツ」が6月3日(土)に公開。原作を読んで1年間役作りをしたという田中さんが感じた作品の魅力や、演じた市川光央について。また、今後の夢などをお伺いしました。


原作を読んで、一瞬で作品の世界観のとりこになりました

田中俊介インタビュー

◆最初に、作品のオファーを受けたときの気持ちを教えてください。

2015年9月、クランクインする1年前にお話を頂きました。内田(英治)監督とは、面識がありましたが、僕が前から「お芝居がやりたい!」と言っていた気持ちをくんでくださって、今回のオファーが頂けたのでうれしかったですし、びっくりしました。

◆日本では、同性愛をテーマとした作品が少ないと思います。原作を読んだときの印象はいかがでしたか?

原作を最初に読んだときにすごく衝撃を受けました。狂気的なんだけど、でもどこか美しい…。そんな独特の世界観を感じました。正直、最初は主人公の2人の関係性や同性が求め合うことに対して理解ができなかったんです。「お互いが求めているのは“愛”なのか?“共依存”なのか?」と。難しい話だなと思う半面、すごく作品のとりこになっている自分もいて、これが原作の持つ力なんだと思いました。そこから、自分が感じたこの世界観、魅力を実写として表現したいと思って、役作りから撮影まで取り組んでいきました。

◆役作りは具体的にどのようなことをされたんですか?

まず同性愛と共依存について勉強しました。本や作品などから、この映画の根本にある同性愛について理解したいなと思って。劇中でも出てくる“アンドロギュノス”という哲学的なことも学びました。勉強しながら、自分の中に落とし込む作業をするのと同時に、ビジュアル面でも原作に近づけるように体重を14キロ落としました。もともと、鍛えていたので走ったりして筋肉を全部落として、食事もサラダ中心にしました。役作りをしてみて思ったんですが、痩せていくことで神経が研ぎ澄まされていくような感じがして、自分の中になかった感情が出てきたり、市川光央の考えていることも理解できたりして、内面も役に近づけられるようになりました。

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◆演じられた市川光央は冷酷で高飛車な人間ですが、田中さん自身はどういった人間だと思いますか?

とても難しい男だと思います。チンピラになってるけど、何で自分がチンピラをやってるのか、自分が何になりたいのかも分からない状態で生きている男。それに感情をむき出しにしちゃう一面もあると思います。でも、決して強い男ではなくて、弱くて、弱いからこそ、高校時代に出会ったもう1人の壱河光夫を支配したくなるんだと思います。

◆そんな男・市川光央を演じる上で大変だったことはありますか?

考えていることを落とし込むのは大変でした。自分の中にないものがありすぎて…追い詰めちゃうぐらい。でも、それをつらかったとか大変だったという感覚はなかったです。純粋にこの作品が面白いと思ったし、市川光央が魅力的に見えたので、その魅力を存分に出したい! という思いのほうが強かったです。こんなに魅力のあるキャラクターを演じられたことは本当に幸せでした。同性愛についての考え方も変わりましたし。たまたま好きになった人が同性だったっていうだけであって、そこにあるのは“愛”に変わりないんですよね。

◆撮影中で印象的だったエピソードはありますか?

もう1人の主人公・壱河光夫を演じる淵上(泰史)さんとは、あまり距離をつめませんでした。変にコミュニケーションを取らないほうが役としてはいいのかなと思ったので。それが逆に作品的にもよかったと思います。ほかのキャストさんでは、高橋和也さんと小木茂光さんは、グループ活動を経て、今俳優としてお芝居をしている方たちで、僕も同じような活動をしているので、活動についてアドバイスをいただいたり、相談をさせていただいたりしました。お芝居の部分でも皆さんが引っ張ってくださったので、演技をしていても楽しかったです。

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◆映画の情報として「衝撃的な再会をした2人」とありますが、田中さんにとって衝撃的な出会いはありますか?

BOYS AND MENの社長です。7年前にお会いしたときに少年のようなキラキラした目で夢を語っていたんです。その姿にほれて「この人とだったら、自分の大きな夢をかなえられるかな」と思って、今のグループに入りました。社長と出会ってなければ、今の僕はいないし、こうやって芸能界に入ってお芝居もやっていなかったと思うので、あの出会いは衝撃的ですね。

◆では、映画の見どころを教えてください。

映画を見るたびに毎回、いちかわみつおの2人をつないでいるものが“愛”なのか、“共依存”なのか。そして2人は一緒にどこに向かっているのか…などの印象や捉え方が変わるのが見どころでもあり、魅力的な部分だと思います。僕自身も撮影を終えたタイミングでは、2人をつなぐものは愛であって、この作品は純愛だと思ったんです。でも、半年たって完成した映画を見たり、原作を読んだりすると「いや違う、愛ではなくて依存しているだけで幸せになれない」と感じました。でも、また時間がたつと純愛に見えるかもしれないし、はたまた新たな感情が出てくるかもしれないですし、いろんな見方ができるすてきな映画だと思います。

◆最後に、田中さんの今後の夢を教えてください。

役者にも本気でやっていきたいんですけど、BOYS ANS MENは死ぬまでやっていきたいです。名古屋でゼロからやっていることに魅力を感じるし、1つひとつの夢をかなえてファンの方や地元の方たちと喜び合えることがうれしいので、ずっと続けていけば可能性も広がっていくし、面白いこともどんどんできると思うので、BOYS AND MENは守っていきたい。でもグループを守るためには、1人ひとりがちゃんと自立しないといけないと思っていて、バラエティや情報番組、俳優業といろんな分野で1人の男として生きていけるぐらいの力をつけないとグループは保てないと思うので、その中で僕は俳優業で一生懸命やっていきたいです。俳優業をやる上では、お芝居を1本でやっている方たちには負けたくない。グループ活動をしていることをデメリットにしたくないし、「2足のわらじだから、そんなもんなんだ」って思われたくないので、1つひとつを親身に一生懸命、ひたむきに取り組んでいきたいです。

 

■PROFILE

田中俊介インタビュー●たなか・しゅんすけ…1月28日生まれ。愛知県出身。B型。2010年に結成された、東海エリア出身・在住のメンバーから構成されたエンターテイメント集団、BOYS AND MENのメンバー。グループとして2015年に愛知県・日本ガイシホールで1万人ライブを執行。2016年には第58回輝く!日本レコード大賞新人賞、2016アジアミュージックアワード ライジングスター賞を受賞し、2017年1月7日には、日本武道館にて初となる単独ライブを実施。個人としての出演作は、ドラマ『明日の光をつかめ-2013 夏-』、『白鳥麗子でございます!』、映画「サムライ・ロック」、「白鳥麗子でございます!THE MOVIE」、「シェアハウス」ほか。

 

■映画情報

「ダブルミンツ」「ダブルミンツ」
6月3日(土)より全国ロードショー
監督・脚本:内田英治
原作:中村明日美子「ダブルミンツ」(茜新社刊)
出演:淵上泰史/田中俊介/須賀健太/川籠石駿平/冨手麻妙/高橋和也/小木茂光 ほか

公式サイト:http://www.d-mints.jp/

<ストーリー>
「女を殺した―」ある日突然、壱河光夫(淵上泰史)の携帯電話にかかってきた高圧的な声の主は、高校時代の同級生で今はチンピラになっている市川光夫(田中俊介)だった。同じイチカワミツオの音の名前を持つ2人は、高校生だった当時、冷酷で高飛車な光央(須賀健太)にいつしか光夫(川籠石駿平)は下僕となり、逆らえない主従関係に。数年を経て、衝撃的な再会をした光夫と光央だったが、かつての隠微な記憶が忘れられない光夫は、逆らうことなく共犯者となった。だが、それは高校のころの主従関係でない、新しい形の関係へと姿を変えていく…。

©2017「ダブルミンツ」製作委員会©中村明日美子/茜新社

 
●photo/中村圭吾 text/宮西由加