上野優華インタビュー「自分にないものだからこそ、より深く想像できるのかな」

特集・インタビュー
2021年03月19日

YouTubeで400万回再生を記録し代表曲となった「好きな人」(作詞作曲:奥 華子)や、自身の最速再生記録を更新中の「あなたの彼女じゃないんだね」(作詞作曲:wacci橋口洋平)など、失恋・片思いソングが多くの共感を呼んでいる上野優華。そんな彼女の新曲「愛しい人、赤い糸」は、「魔法の絨毯」がTikTokを中心に大バズり中の川崎鷹也が書き下ろした珠玉のバラードだ。切なく沁みる歌声を持つ彼女は果たして、どんなパーソナリティの持ち主なのか。音楽面だけではなく、その人間的魅力にも迫るスペシャルインタビュー。

「“そこにしかない魅力”があるものをすごく好きになるのかもしれない」

◆『上野優華の角打ちゆうか』(tvk)という番組をやられていますが、やはり上野さん自身もお酒が大好きなのでしょうか?

だいぶ好きですね。そのために生きていると言っても過言ではないくらいで(笑)。「今、一番好きなものは何ですか?」と聞かれたら、お酒だなと思うくらいに好きです。

◆それは相当な…(笑)。とはいえ2013年のデビュー時はまだ15歳ということで、お酒を好きになるきっかけは何だったんですか?

10代の頃からも周りのバンドメンバーやスタッフさんたちが、お酒を飲んでいる姿はずっと見ていて。仕事終わりの一杯のためにみんなが頑張っている姿を見て、「どんなにおいしいものなんだろう?」という感じで憧れる気持ちが強かったんです。

◆仕事終わりの一杯に憧れる気持ちがあったと。

それで20歳を迎えることになって。2月5日が誕生日なんですけど、前日の2月4日にライブをやったんですよ。その打ち上げで、夜12時を越えてから私がビールを飲む姿をみんなで見るという会をやったんです(笑)。

◆やはり格別な味だった?

いや、その時はあんまりおいしいと思わなかったんですが、やっぱり20歳を超えて”お酒を飲める喜び”というものがあるじゃないですか。それがうれしくて、“おいしくないな”と思いながらも飲んでいたら、もう替えが利かないものになりましたね。

◆ちなみに今、一番好きなお酒は何なんですか?

今は、ワインが一番好きですね。私がお酒に求めるものって、そこにしかない味や深みなんですよ。例えばカルピスサワーだったら“カルピスでも全然いいな”と私は思っちゃうので、そういうものは他にも替えがいっぱいあるというか。でも赤ワインの重たさって他にはない魅力があって、そこがすてきだなと思うんです。ワインはいろいろな種類があって、奥が深いんですよね。

◆“替えが利かない”という意味では、アーティストとしての存在感や歌声について目指すところでもあるのでは?

このお仕事もそうですけど、“そこにしかない魅力”があるものをすごく好きになるのかもしれないですね。お酒や食べ物とかもそうで、例えば珈琲の“苦さ”が私はすごく好きなんですよ。いろんなものに対して、そういう唯一無二の魅力を持つものが好きなのかもしれないです。

◆自分自身がそういう存在になりたいわけではない?

どうだろうな…? 私自身はわりと平凡な人生を送っているタイプなので、そういう憧れももしかしたらあるのかもしれないですね。学生時代の通信簿もオール3みたいな感じだったんですけど、それって逆に珍しいじゃないですか。これまですごく平均的に生きてきたので、そういう抜きん出た魅力みたいなものを求める気持ちはあるのかもしれない。

「演じるように歌い分けるということは意識しています」

◆自分の中では、平凡な人生というイメージなんですね。

わりと普通に生きてきたかなと思っていて。昔から通信簿もオール3みたいな感じで、“何でもできるけど、何にもできない”みたいなタイプでしたね。ただ、得意なこともないけど、苦手なこともないので、すごく生きやすい人類だなとは思っています(笑)。

◆そこはポジティブに捉えていると。自分の声については、どう思いますか?

このお仕事を始める前から歌が好きで、元々は地元のカラオケ大会に出場していたことがオーディションに参加するきっかけにもなったんです。その当時からデビューして数年は、(自分では)どこにでもいる声だと思っていて。でもいろんな人から「一瞬でわかる特徴的な声をしている」と言われて、やっと“私にしかないものなんだな”ということに気付けたくらいですね。

◆周りからの評価によって気付けたわけですね。確かに初期の曲と最近の曲とでは、歌い方も徐々に変わっている気がしました。

変わりましたね。10代後半から20歳くらいって、ちょうど女の子の声が変わっていく不安定な時期で。自分の声をしっかり作っていく時期ということで、デビューしてからいろんな曲をコンスタントにリリースしてきて、声を作り上げる期間やいろんな歌い方を経験する期間があったんです。本当に若くしてデビューさせていただいたからこそ、こういう変化がつけられているというところはすごくうれしいなと思います。

◆自分の歌い方を模索していた部分もあったのでしょうか?

それはありますね。いろんな曲を歌わせていただいているので、自分の中で“こうしたい”という理想像が曲によって全然違っていて。「ああいう曲も歌いたいから、こういう声も出したい」とか「真っすぐな歌い方もしたいけど、しっかりヴィヴラートを効かせた歌い方もしたい」みたいな感じで、レパートリーをどんどん増やしていくということは今でもずっとやっています。

◆曲の雰囲気やテーマに合わせて毎回、変身するような感覚もあるのでは?

そこはすごく意識している部分ですね。デビューしてから役者もずっとやっていたので、それに影響されている部分もあって。曲によってはすごくマイナス思考な女の子の気持ちを歌うこともあれば、めちゃくちゃポジティブな子の気持ちを歌うこともあるから。どちらのキャラクターもまったく一緒なわけはないし、同じような声のわけもないから、演じるように歌い分けるということは意識しているし、そこは自分にしかない魅力として作っていきたいなと思っている部分です。

「こういう感情を川崎さんの歌詞の世界からもらったという感じですね」

◆いろんなタイプの曲を歌える上野さんですが、最近は“失恋・片思いソング”のイメージが強いですよね。ご自身もそういった経験が多いのでしょうか?

全然そんなことはないですね。(“好き”と)言えないタイプでもないですし、“なんで言えなかったんだろう…”みたいに引きずるタイプでもなくて。そういう意味では、自分の本当の性格とは少し違うキャラクター像を最近は歌うことが多いんです。でも私の声にはすごく合っていると思うし、“切ない”とか“悲しい”という気持ちを歌で表現するのはすごく好きなこともあって、最近はそこに特化して歌っています。

◆自分の特性は理解していると。去年12月に配信リリースされた「好きでごめん」はご自身の作詞作曲ですが、やはり同じ流れにある“切ない”系の曲ですよね。

この曲に限らず、これまでハッピーな歌詞はあまり書いたことがないんです。自分で歌詞を書く時もやっぱり切ない気持ちや、かなわない恋について書くことが多くて。私自身はわりとハッピータイプの人間だとは思っているんですけど、どこか暗い部分が根っこにはあって、それが歌詞や声に出ているのかもしれないですね。

◆すごく落ち込んだ失恋経験があるわけでもないと。

まったくないです…すいません(笑)。だからこそ“ここまで悲しいのかな”とか、ちゃんと落ちるところまで落ちて考えることができるというか。自分にないものだからこそ、より深く想像できるのかなと思っています。

◆今回の新曲「愛しい人、赤い糸」は川崎鷹也さんの提供曲ですが、男性から見て女性に“こういうふうに思われたいな”という理想像を描いているような気がして。

そうですね。でも女性側にも“こういう恋がしたい”という理想があるので、そこはすごくマッチしているんじゃないかなと思っていて。“こういうきれいな恋をしたい”とか“こういう自分でいたい”と思っている女の子に、すごく刺さるポイントがある曲なんじゃないかなと思います。

◆上野さん自身の気持ちと、歌詞の世界観が必ずしも重なるわけではない。

かなわない恋だとしても“もしも彼女になれたら”ということを考えて、それでちょっと幸せな気持ちになれたり、逆にすごく儚くて切ない気持ちになったり、女子ってすごく忙しいなと思うんですよ。相手のことが好きで、でも話しかけられなくて…というモジモジした感じが私にはまだ分からないというか。そういう経験がなかったので、曲から教えていただいたんです。こういう感情を、川崎さんの歌詞の世界からもらったという感じですね。

「寄り添うことのほうが自分には向いているなと思いますね」

◆自分の中にはない感情を、曲から教えてもらえるわけですね。

提供していただいた曲では、そういうことが本当に多いですね。あと、私はSNSとかを通じて、いろんな人から恋愛相談を受けることが多いんですよ。“(好きな人に)話しかけられません”みたいな人が、私のファンにはすごく多くて。そういう人が思っていることに対して、“こういう女の子を描いたら共感してくれるんじゃないかな”とか“こういう曲があの子に必要なんじゃないかな”と思って書いたのが、「好きでごめん」なんです。

◆自分の曲に対する反響を取り入れて、曲や歌詞を生み出している。

(反響を知ることで)“世の中の女の子はこういう恋をしているんだ”というものが見えてくるので、そこに対しての“アンサー”というか。“こういう曲を出したら、どんな反応が返ってくるだろう?”と考えながら書いています。だから私の想いを発信するというよりも、“あなたにこういう曲はどうですか?”と寄り添うことのほうが自分には向いているなと思いますね。

◆そういう意味で今回の「愛しい人、赤い糸」は、どんな人に聴いてほしいですか?

この曲は、いろんな捉え方ができる曲だと思っていて。もちろん私が今まで歌ってきた失恋や片思いの曲に共感してくれる方にはすごく刺さると思うんですよ。“好きな人に今は振り向いてもらえないけど…”っていう感じで、切なく刺さる曲なのかなと。でも逆に今は幸せをつかんだ人というか、もう大人になっていて“(かつて)こういう恋をしていたな”と思い返す人にとっては、柔らかくにじむような愛しさが詰まった曲にもなると思うんです。

◆聴く人によって、まったく違う響き方をするというか。

本当にその人その人によって(解釈が)違うと思うんです。決して“失恋ソング”だとは限らない曲だと思うので、いろんな人にどんな刺さり方をするのかがまったく読めないですね。

◆歌詞の内容的にも、まだ失恋しているわけではないですからね。

そうなんですよ。だからこそ本当に“赤い糸で繋がっている”という解釈もできるし、“繋がっていると思わないとつらい”という片思いの歌にも聞こえるし、いろんな捉え方ができるというか。リリースした後、この曲がどんなふうに広がっていくのか分からないし、今はそこへの期待がすごく大きいですね。

◆ライブでやるのも楽しみなのでは?

楽しみですね。私はレコーディングした通りに歌うことができないので、その時の気持ちやセットリストの流れによって、曲の意味がまったく変わってくるんです。だから“その時、私はどういうふうに歌えるんだろうな”という意味でも楽しみだし、ライブで早く歌いたいなと思っています。

PROFILE

●うえのゆうか…1998年2月5日生まれ。徳島県出身。2012年、1万人を超えるボーカルオーディションでグランプリを獲得。翌2013年、映画の主演・主題歌でデビュー。以降もコンスタントにリリース・ライブ活動を展開する一方、ドラマ・映画などでメインキャストを務めるなど、歌手・女優の活動を中心に多方面で活動を続ける。また、2017年からは国内外におけるベトナムとの文化交流活動も精力的に行なっている。YouTubeで400万回再生を突破した「好きな人」MVなどに多数の共感コメントが寄せられており、“いま、泣ける声”と称されるシンガー。

リリース情報

Digital Single『愛しい人、赤い糸』
2021年3月17日(水)配信

ライブ情報

「上野優華 23rd Birthday & Debut 8th Anniversary LIVE 〜Smile & Song〜」
2021年7月11日(日)東京・大手町三井ホール(※1部・2部制)

WEB

公式サイト:https://yuuka-ueno.com/
公式Twitter:https://twitter.com/yuuka_official
公式Instagram:https://www.instagram.com/yuukaueno0205/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@yuuka_official

この記事の写真

●photo/YOSHIHITO_SASAKI text/大浦実千