脚本家・泉澤陽子&プロデューサー・植田博樹&吉藤芽衣が語る『リコカツ』誕生秘話

特集・インタビュー
2021年04月30日

北川景子さんと永山瑛太さんが演じる、“交際ゼロ日婚”した夫婦が、早々に結婚したのは間違いだったと感じ、離婚に向けた活動=“リコカツ”を始める『リコカツ』(TBS系 毎週(金)後10・00~10・54)が放送中。脚本家・泉澤陽子さん、プロデューサーの植田博樹さん、吉藤芽衣さんに、本作を作ることになったきっかけや今後の展開などを伺いました。

◆「離婚」をテーマに描こうと思ったきっかけを教えてください。

植田:今からさかのぼること3年ぐらい前に、うちの夫婦も娘の結婚をきっかけに離婚の話が出たことがあり、その実体験が企画の始まりですね。熟年離婚もあり得るんだなと。そんな中で交際ゼロ日婚をした芸能人が離婚したというニュースを見て、離婚から始まるラブストーリーを考えました。この話を泉澤さんにお話をしたら、「そのドラマ、面白いんじゃないですか」と言っていただけて、企画書を作成して今回放送にこぎつけました。距離感が変わることによる夫婦関係、人間関係の変化を描ければと思っています。

◆植田さんから企画のお話をされて、泉澤さんはどう思いましたか?

泉澤:植田さんの家庭でも離婚の話が出たとおっしゃられていましたが、日本の離婚率も3組に1組といわれているぐらいなので、私たちに身近なことなんですね。私も結婚していますが、けんかするたびに“離婚してやる”みたいに思うことはあるので、そういったことまで含めたら、離婚を考えたことがない人は少ないんじゃないかなと思いました。誰もが身につまされる、かつ身近に感じられるテーマとして、それを面白おかしくドラマにできるんじゃないかなというふうに思いました。

植田:その後、泉澤さんと話ながらキャラクターを作っていきました。離婚経験がある一般の方を何十人も取材させていただいて、本作のエキスになっていますね。

吉藤:私は植田さんと泉澤さんがしっかりと作られた企画書を読ませていただいた時に、率直に面白いなと思いました。今までも離婚を扱ったドラマはたくさんあったと思うんですが、その中でもこの『リコカツ』では“全員離婚家族”っていうパワーワードがあって。登場人物1人ひとりが本当に個性的で、なおかつ、こういう人いるなっていうキャラクターがよく作られているので、どんな人にでも共感してもらえる要素が散りばめられているんじゃないかなと思っています。そういう要素を私自身も実体験だったりとか、周りにお話を聞いたりして足していけるといいなと思いながら、参加させていただいています。

◆脚本を書く上で、北川さん、瑛太さんに当て書きしたところはありますか?

泉澤:キャストが決まったことによって、イメージできる部分が増えてきたので、2人が言うと面白くなるかを考えて書くようにはしています。

植田:わざわざ武士言葉を入れてくださったりとか、咲が紘一の言葉を逆手にとって攻め立てたりとか、咲の攻撃の仕方っていうのは、泉澤さんの脚本でたくさん出てきます。泉澤さんの実体験もあるのかなという感じのシナリオですね。

泉澤:個人的にコメディも好きなので、いっぱい入れていきたいなって思っています。それに加えて、ラブストーリーなのでキュンとする部分も大切にしつつ、そのバランスは気をつけて書くようにしています。1話のラストで紘一が咲を助けるところはすごくカッコいいなと気に入っています(笑)。こうやってオリジナルのドラマを書かせてもらう機会がなかなかないので、すごくプレッシャーも感じつつ、楽しんで書かせていただいています。ちゃんと大人が見ても楽しめるような結構深い部分まで話を作っていくっていうのを意識して書いていこうと思います。

◆植田さんからリクエストしたところはありますか?

植田:リクエストというよりは、僕と吉藤は現場の雰囲気を泉澤さんにたくさん伝えるようにしています。バックステージも含めて「こんなことがありました」「こんな会話をしました」と。瑛太さんご自身は紘一のような遅れてきた武士ではなくて、ジェントルマンなので、北川さんに対しての優しさが見えたりするんです。それって紘一にも使えるんじゃないかなと、泉澤さんのほうにトスを上げる感じですかね。その中で泉澤さんが自分の中で「それは紘一っぽいね」「それは咲と紘一のストーリーに使えるね」みたいな感じで、反映してくださっています。

◆今作には『美少女戦士セーラームーン』や『エヴァンゲリオン』などの声優として活躍されている三石琴乃さんも出演されています。

植田:交流のある堤幸彦監督からメールを頂いて、ラジオドラマを収録していたらしく、そこが“役者の金の山”という内容で。役者の金の山ってなんだ? と思っていたんですけど(笑)、実際に収録を見学させていただいて。そこで三石さんが芝居されていて、その素晴らしさに感激しました。そこから三石さんにドラマ出演のお話をさせていただいて、最初は「連続ドラマはちょっと…」と断られていたんですが、何度も通って企画書や台本を見てもらってドラマの説明をさせていただいて、OKを頂きました。第1話を見て、声優さんとして超一流なんですけど、女優さんとしても超一流だったなと実感しました。

◆3話(4/30放送)では、咲の父・武史(佐野史郎)と紘一の父・正(酒向芳)の2人がお酒を飲みかわすシーンがありますが、そのシーンはどなたの提案なんでしょうか?

植田:妻は自由に自分自身の道を歩んでいきそうで、そんな時に夫は戸惑ってそうだなと考えた時に、誰か一緒に飲んでくれないかなという話を泉澤さんに言ったんです。そうしたら、残ったお父さん同士が飲むシーンを作ってくれました。会社という肩書を失ったら、何もかもなくなってしまうと思い込んでしまっているお父さん方が、そういった妻を見て、自分たちも何かできるんじゃないかなと思い出してくれるようなストーリーにしていきたいなと思っています。

◆『リコカツ』で最終的に伝えたいことは?

泉澤:離婚を考える上では、絶対に結婚ということも考えることになると思うので、社会生活を送りやすくするために人間が考えた結婚、離婚という制度なのに、その制度によっていつの間にか生きづらくなっている人もいる。結婚を先延ばしにする人がいるのもそういうことだと思うんです。そういう人もひっくるめて、作品中にいろんな人たちを登場させることができればなと思いますし、そういう制度と揺れ動く気持ちというものの間の気持ちをドラマの中で面白く描ければいいなって思っています。

植田:お互いの何が気に食わないか、100個挙げようとするけど、全然100個に満たない、そういうシーンがありますが、離婚をしたから不幸、結婚をするから幸せとか、再婚をするのかしないのかとか、そういうのを超えたラブストーリーを泉澤さんが紡ぎ出しています。周りの人がどう思うかとか、国がどう決めているかとかじゃなくて、2人の居心地のいい関係であればいいのでは、というドラマを作りたかったんだなと、泉澤さんの脚本に教えてもらっています。

◆今後の見どころを教えてください。

植田:それぞれの別居が始まってしまいます。薫(宮崎美子)は家出をしていて、それで箱根で働いていることが分かるんです。その箱根で生き生きしているところを見て、家族がショックを受ける。専業主婦で何もできないだろうって勝手に思い込んでいたお母さんが、何のことはない、自分で一歩踏み出して自分で人生をつかみ取っている、そういうところを見た時に、「ああ、この離婚って成功なのかもしれない」「応援するべきなのかもしれない」という、離婚したことによる幸せみたいなものが3話くらいからどんどん出てきます。離婚したことによって、進んでいく、人が変わって輝いていくことを泉澤さんが3話、4話で書いてくださっています。5話、6話は少し切なくなってきたり、7話、8話は新しい人生のスタイルが提案できるかなと、今のところ思っているので、その辺をお楽しみにしていただければと思っています。

◆最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。

泉澤:私の書いた脚本に、俳優さんであったり、監督、スタッフの皆さん、音楽であったりの力が加わっていい作品になっていると思うので、ぜひたくさんの人に見ていただきたいです。

吉藤:いろんな世代、いろんな個性の方たちに楽しんでもらえるドラマなので、楽しんでもらいたいなと思っています。

植田:吉藤が手掛けているParaviオリジナルストーリーの『リコハイ!!』が良くできているんです。離婚するとハイになって、いろんな間違いを犯すというところから始まっていくストーリーなので、ぜひそちらもご覧ください。とにかく北川さんと瑛太さんの芝居が本当におかしいんです。ラブストーリー要素もありますが、ホームドラマの要素もあるハイブリッド版ができました。役者さんについても見どころかなと思っています。

番組情報

金曜ドラマ『リコカツ』
TBS系 毎週(金)後10・00~10・54

Paraviオリジナルストーリー『リコハイ!!』
『リコカツ』放送後Paraviで独占配信中

©TBS