兵頭功海「もっと真ん中で日曜劇場に帰ってこられるような役者になりたい」『下剋上球児』インタビュー

特集・インタビュー
2023年11月19日
『下剋上球児』©TBSスパークル/TBS 撮影:ENO

鈴木亮平さん主演の日曜劇場『下剋上球児』(TBS系 毎週日曜 午後9時~9時54分)の第6話(11月19日放送)を前に、根室知廣役を演じる兵頭功海さんにインタビュー。現場の様子や第6話の見どころなどを聞きました。

本作は高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描く、ドリームヒューマンエンターテインメント。「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘 著)にインスピレーションを受け企画され、登場する人物・学校・団体名・あらすじは全てフィクションとなる。

11月12日放送の第5話より、根室(兵頭)が南雲(鈴木)の家に泊まるようなったのを機に、南雲の元に練習後の野球部員たちが集まるようになった。11月19日放送の第6話では、ついに南雲の事件が検察に送致されることに。南雲に下される処分は果たして…。

そんな中、南雲と青空(番家天嵩)は東京の美香(井川遥)の仕事場を訪ねる。久々の再会を喜ぶ南雲家だったが、そこには美香の元夫である晴哉(大倉孝二)の姿もあった。一方野球部では、南雲の後任監督が、新人を一人もスカウトできなかったことを理由に犬塚(小日向文世)によって解任され、山住(黒木華)が自ら新監督就任を申し出る。そして迎える夏の予選、初戦の相手は昨年ベスト8の五十鈴高校に決定。初戦に向け、気を引き締める部員たちだったが、五十鈴高校野球部員から、横浜にいた頃の山住に関するあるうわさを聞かされる―。信頼する山住、そして南雲を野球部に戻すために部員たちは“夏に一勝”を目指していく。


◆ここまで根室を演じてこられての感想を教えてください。

高校まで野球をやっていたのですが、根室を演じていて、久々に高校の時に戻ったような感じがしています。毎日朝から晩までグラウンドで泥だらけになって野球をしていて、撮影をしているようで撮影をしていないというか(笑)。先日もヘッドスライディングをして泥だらけになるシーンを撮ったのですが、そういう日々がすごく楽しいですし、リアルにキツくていい意味で行きたくないなと思う時もあったりする感じが本当に部活のようで、毎日充実した日々を過ごしているなと思います。

◆同期の6人は3年間を共にする設定で撮影されていますが、根室として成長を感じるところはありますか?

根室は野球部に入った当初、少し臆病な性格なので、楡(生田俊平)を怖がっていたり、周りの人と打ち解けられずに、会話をするシーンが少なかったり、椿谷(伊藤あさひ)のようにちょっと優しそうな人や同じクラスの翔(中沢元紀)にしかしゃべりかけられないところがあったんです。ですが、2年生、3年生と学年が上がっていくうちに楡や久我原(橘優輝)にもツッコむようになっていたり、壮磨(小林虎之介)にも「怒りすぎやて」と注意することができるようになっていくんです。本作はわりとアドリブが多く、先生が会話している間、野球部のメンバーは後ろで自由にしていていいよという瞬間があるので、そういう時に成長だったり、関係値が変わってくるんだなと感じます。

◆塚原あゆ子監督や新井順子プロデューサーから言われたことで印象に残ってる言葉はありますか?

塚原さんがみんなによく言っているのは、「役をキャラっぽくしないでいい」。お芝居のテストが終わった時に、僕らに「やりすぎないで」「今のもっと自分に落とし込んでいい」と最初の頃、撮影している時に特に言われました。きっとそれがいいアドリブだったり、せりふがないところのナチュラルな会話につながっているのかなと思います。その役をやろうとしすぎると、言葉がどうしてもせりふっぽくなってしまったり、固くなってしまうのかなと思うのですが、自分に近ければ近いほど自分のままで言葉が出てくるので、そういう狙いもあって、もしかしたら塚原さんたちはそういった空気を作ってくださっているのかもしれません。本当にカメラが回っているのですが、わりと本番ギリギリまで笑って話しているまま、そのままそのカットに入って笑っているといったことがあって、この現場ではそれが一番ナチュラルでいいのかなと。そういう雰囲気で撮影できています。

◆ご自身の野球経験について教えてください。

小学校4年生から高校3年生までやっていました。始めたばかりの小学生の時は、外野をやったり、キャッチャーをやったりすることはありましたが、本格的に野球をやるようになってからは、ずっとピッチャーでした。

◆今回、根室はサイドスローですが、ご自身は?

僕はオーバースローです。オーディションの時もオーバースローで投げていたのですが、合格発表の時に役について説明があって、その時に新井プロデューサーから「サイドスローです」と言われました。ただ、高校1年生の時に一瞬ですが、サイドスローに変えて、下半身の使い方を覚えるために練習をしたことがあったので、サイドスローの投げ方は自分の体の中には漠然とあったんです。そこから根室っぽいってなんだろうと考えましたし、野球部あるあるなんですが、「プロ野球選手のこういう人の投げ方を真似して投げてみよう」「こういう打ち方を真似して打ってみよう」みたいなのがあって。それで真似していたりしていたので、同じチームにいたサイドスローのピッチャーの投げ方が近いかなと、今の根室の投げ方になりました。

◆ご自身の野球シーンを放送で見ていかがですか?

すごいことしているんだなと思います。日曜劇場という、日本のテレビドラマの中でも誰もが知っている大きい枠で、主演も鈴木亮平さんという中で、こんなに堂々とカメラに映っていて、投げたり、鈴木さんとお芝居していることが、テレビに映って初めて実感するというか。現場ではそんな感じはしないのですが、テレビを見て「すごいところで今やれているんだな」「幸せだな」と。

◆では、周りのからの反響はいかがですか?

僕は地元が福岡なのですが、全国で観られるので福岡の友達からも連絡が来ます。2話を観終わった後には「南雲先生、免許ないの、やばない?」といった内容の連絡がバーと通知にたまっていました(笑)。もちろん親も見てくれていますし、同じ事務所のほかのマネージャーさんとか、以前ほかのドラマでお世話になったスタッフさんたちからも「根室いいね」と連絡がたくさん来ます。

◆根室は1話から南雲先生と2人でやりとりをするシーンが多いですが、現場で鈴木さんとどのような会話をされていますか?

奥寺(佐渡子)さんの脚本が、僕らが考える隙間がすごく多い台本のような気がしています。それは塚原さんも言っていたのでたぶん合っていると思うのですが、シーンとシーンの間に何があったんだろうと、その考え方次第でそのシーンの意味が変わりますし、どうとでも埋められるんです。2人のシーンはお互いに共通の意味を持っていないと統一性のないシーンになってしまうので、そういうところを亮平さんは、若手の役者の僕にも同じ目線で、「根室はここまでにどういうことをしていて、ここに来たと思っている?」「根室がそうしていたなら、先生は多分こうやって心配していて、こういうふうに思って今ここにいるね」みたいに、一緒に埋めてくださるので、一つ一つのシーンがすごく丁寧に撮られているなと思います。亮平さんは僕らにこういうふうにした方がいいとは言わずに、相談させてもらったら「そういう悩みか」と相談に乗ってくれて、同じ目線でそのシーンのことについて話してくださるんです。

1話のフェリーで「野球、やりたいんだと思っていたよ」というシーンも、亮平さん自身もすごくいろいろ考えられていて、ワンカットが撮り終わった時に監督と話し合って、そのシーンを作ろうとしてくださっている姿を見て、第一線で活躍されている役者さんとして、妥協せずに鈴木さんも塚原さんも作品に取り組まれているんだなと。そのようなプロ意識の高いお2人を見て、僕は「すごいな、こうならないといけないな」と思っています。

◆黒木華さんとは?

華さんはみんなの寮母さんみたいです。普段ちょっと後ろにいても、「はい、しっかりやるよ」のように、パッと締めてくださる感じ。すごく優しいまなざしで僕らを見ていて、目が合ったらみんなにニコっとしてくれるんです。もちろん相談にも乗ってくれますし、それがすごく寮母さんみたいだなと。亮平さんも華さんもすごくフレンドリーに話してくれて、僕らが「プライベートで最近こういうことにはまっているんですよ」みたいな男子高生みたいな会話をしていても、「何をしゃべっているの?」みたいな感じで聞いてくださって、すごくいい現場だなと思います。

『下剋上球児』©TBSスパークル/TBS 撮影:ENO

◆根室の姉役として、山下美月さんとお芝居されていますが、山下さんの印象はいかがでしょうか?

山下さんは人格者だなと思いました。本当に人として素晴らしい人で、リスペクトがありますし、壁も一切なくて、すごく話しやすい空気を作ってくださるので、本当にこの人すごいって思います。そこまで同じ撮影が多くはないので、そんなに話せていないのですが、会うたびに本当のお姉ちゃんみたいに感じます。実年齢は僕の方が1個上なんですけど(笑)。

◆最初、山下さんもお姉さんに見えるか、不安に思われていたようです。

本当ですか。僕こそ、山下さんの弟に見えるかなと思っていたのですが、2話で、根室家で姉ちゃんが洗濯物を干してくれたり、グローブのやりとりをするシーンの時に「あ、お姉ちゃんだ」と、洗濯物を干してくれている背中を見た時に思って。それはきっと山下さんのお芝居もですし、持っている雰囲気がすごく素晴らしいからなので感謝しています。

◆球児役の中で、特に仲がいい方はいらっしゃいますか?

椿谷真倫役の伊藤あさひは、僕がこの業界でお仕事をしている中で一番仲がいいです。彼が『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』という戦隊ものをやっていて、僕はその後の『騎士竜戦隊リュウソウジャー』をやっていたのですが、そのコラボ映画があったんです。その作品ではみんなでそろう時ぐらいでしか同じシーンがなかったのですが、「俺この人と仲良くなれるな」「仲良くなりたい!」と思ってしまって(笑)。その当時、もう一人の『快盗戦隊ルパンレンジャー~』メンバーも交えて3人で一緒にご飯を食べに行ったり、あさひが僕の家に泊まり来るようになるぐらい仲良くて、何でも話す仲です。その後、しっかりと共演したことがなかったので、いつか共演したいねとお互い話をしているところに、この『下剋上球児』のオーディションがあったんです。なので2人で普段から一緒に野球の練習をしたり、「この日『下剋上球児』の野球練習があるから頑張ろうぜ」みたいな話をしていて、2人とも合格できたので、すごく思い入れがあります。

◆本作を経て、役者として成長したなと感じたところはありますか?

たくさんありますが、一番はお芝居をしてはダメなんだなと思いました。これは極論になってしまいますが、姉ちゃんと2人で住んでいて、貧乏だから野球できるかも分からないという根室の役説明を見た時に、臆病で暗い子なのかなと役を捉えて意識してしまっていたのですが、塚原さんから「役をキャラっぽくしないでいい」と言われたように、きっと普段の僕らと変わらずたくさん笑うし、明るい時は明るいんだろうなと考え直しました。そういう生っぽさを役で出す時に、お芝居してはダメなんだなと、塚原さんの演出や、亮平さんたちのお芝居を見ていてすごく感じます。

他の球児キャストの方のお芝居を見ていて「この顔、すごく自然だな」と感じる時もあって、それを見た時に自分も心から僕としてそこに立っていてもいいのかな、そう演じたいなと、この現場であらためて強く気づきました。新井さんや塚原さんもインタビューで言ってくださっていますが、僕らの自然な表情を切り取るためにテストからカメラを回していたり、カットがかかった後の笑顔を使っている瞬間があって。それぐらい力を抜いて、本番でも作りすぎないように心がけています。

◆この先どんな役者になりたいですか?

僕、今年が初めて地上波のゴールデン帯の連続ドラマに出させてもらった年で、さらに今回、日曜劇場というすごく大きいステージでお芝居をしているので、それらの作品を見てもらった方々にどういう反応されるのか、業界の人に見てもらって、「こいついいな、いつか仕事したいな」と思ってもらえたらいいなと。きっと来年以降になって分かってくることだと思うので、この日曜劇場で一生懸命根室を演じて、それで「『下剋上球児』を見たから一緒に仕事したいなと思ったんだよ」と言ってもらって、いろんなところでお仕事して、いつかもっと真ん中で日曜劇場に帰ってこられるような役者になりたいなと思いました。

◆第6話の見どころを教えてください。

富嶋(福松凜)たちの代の夏の大会が始まります。4話で日沖の兄ちゃん(菅生新樹)たちの代で負けた越山野球部が1年間でどう変わって、どれぐらい成長したのか、もちろんお芝居パートで分かるところはたくさんありますが、野球シーンを通して野原(奥野壮)と紅岡(絃瀬聡一)がどれぐらいうまくなったか、ベンチでみんなが声を出すようになったかという成長を分かってもらえる回になっていると思うので、富嶋、野原、紅岡の3人に注目してもらいたいなと思います。そのシーンを撮っている時に、先輩たち3人の背中を見て、本当に根室としても、僕としてもリアルにぐっとくる瞬間がたくさんありました。

◆最後に今後の根室の注目ポイントを!

あんなに気弱で、球も遅くて、野球部に入るか迷っているような根室が、後半になってどんどん成長していって、チームを支える存在になっていきますし、翔に対しても少しライバル意識を持てるようになっていくので、その成長過程を見守ってもらいたいです。そして視聴者の方に「この子がここまで成長して、こういうプレーをするようになったんだ」とぐっと来てもらえたら僕としてはうれしいです!

『下剋上球児』©TBSスパークル/TBS:Len

PROFILE

兵頭功海
●ひょうどう・かつみ…1998年4月15日生まれ。福岡県出身。B型。

番組情報

日曜劇場『下剋上球児』
TBS系
毎週日曜 午後9時~9時54分

<キャスト>
鈴木亮平、黒木華、井川遥、生瀬勝久、松平健、小泉孝太郎、小日向文世ほか

<スタッフ>
原案:「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘 著)
製作:TBSスパークル、TBS
脚本:奥寺佐渡子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山室大輔、濱野大輝
編成:黎景怡、広瀬泰斗

番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gekokujo_kyuji_tbs/
番組公式X(旧Twitter):@gekokujo_kyuji
番組公式Instagram:@gekokujo_kyuji
番組公式TikTok:@gekokujyo_tbs

©TBSスパークル/TBS 撮影:ENO
©TBSスパークル/TBS:Len