北原里英インタビュー「私の人生の中では一番の事件」映画「サニー/32」

特集・インタビュー
2018年02月14日

映画「凶悪」のスタッフ&キャストが再集結した、先読み不可能、サスペンスフルな感情のジェットコースタームービー「サニー/32」で、ヒロイン・赤理を演じた北原里英さん。今春、NGT48を卒業する彼女の、ついに爆発した女優魂について聞きました。

北原里英インタビュー
◆本作に主演された経緯を教えてください

2014年11月に秋元(康)先生から「私の主演映画を作る」というサプライズ発表があったのですが、その時はこんな大きな規模の作品になるとは思っていなかったんです。それで秋元先生に「北原はどんな映画に出たいの?」と聞かれた時に、「『凶悪』のような映画に出たいです」と言ったら、本当に実現することになりました(笑)。そういった会話がなされてから撮影が開始までの間はNGT48でキャプテンをやりながら、いつスターとしてもいいように心構えはしていました。


◆北原さんが「凶悪」が好きな理由は?

もともと「重め・暗め・エンタメな作品」が好きだったので、「凶悪」はツボがばっちり当てはまりました。リリー・フランキーさんとピエール瀧さんの強烈なキャラクターも好きでした。実際に「凶悪」の白石和彌監督に撮っていただくと聞いた時は信じられませんでした。

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◆難役とも言える赤理の演技プランは、どのように考えましたか?

冒頭は誘拐される側なので、 “受け”としてのお芝居になりますが、中盤以降の赤理にはカリスマ性が必要になるのでとても不安でした。人の上に立つことが苦手である自分にはないものをどう出していけばいいのか。そのために、防音の部屋に行って大声を出す練習から始めました。実はどこか不安を抱えたまま現場に入ったのですが、過酷な環境の現場にポーンと放り出されることで、覚悟ができました。


◆リリー・フランキーさんとピエール瀧さんとの共演はいかがでしたか?

リリーさんが包容力のあるダンディーなおじさまだとしたら、瀧さんはまるで5歳児のようなおじさま。それだけ正反対な性格のお2人に癒やされました。全く娯楽のないロケ場所での唯一の楽しみは、みんなでやるしりとりでした(笑)。みんなで食事をするシーンでは、まるでホームドラマを撮っているような感覚でした。また赤理の覚醒シーンの撮影が終わり、戻ったホテルのエレベーターでお会いしたリリーさんに「とても良かったよ」と声をかけていただいた時は、非常に緊張しながらお芝居に挑んだこともあり本当に安心しました。


◆門脇麦さんとの共演はいかがでしたか?

麦ちゃんは年下ながら、尊敬している女優さんだったので共演はうれしかったのですが、現場では彼女の熱量に圧倒されました。私はお芝居で涙を流すことが苦手なのですが、麦ちゃん演じる2人目のサニーを相手にしていると自然と涙が出てきて、そういう意味でも助けていただいて。撮影の合間は仲良くお話させていただきました。

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◆雪の中や風が吹き荒れるシーンが多かったと思いますが、撮影は過酷だったのではないでしょうか。

「撮影中に監督から指示されたことは何も断らないぞ」と、自分の中で覚悟を決めて撮影に臨みましたが、全編通して4回死ぬかと思いました。序盤で山小屋の2階からジャンプするシーンもスタントマンではなく、自分で演じるのだと分かって。一番まずいと思ったシーンは、引き画で撮った雪山の脱走シーン。豪雪に体が埋もれてしまった上、カットが全くかからないので、雪の中で遭難してしまう気持ちが初めて分かりました。恐らく監督はそんな私の諦める瞬間を撮りたかったのだと思います。共演者の皆さんも同じように過酷な現場が多く、そのため、空き時間にみんなで考えた監督のあだ名が “サディステック・ハムスター”になったほどです。


◆それだけ撮影が過酷だとNGT48の活動に支障をきたしたのでは?

映画の撮影中、デビューシングルだった「青春時計」のMV撮影があったのですが、正直その時のことあまり覚えていません(笑)。「サニー/32」の撮影が終わった時に、急に「青春時計」の仕上がりが心配になりました。緊張感を保ったままの期間だったので、こちらも相乗効果でいい仕上がりになっていて、ホッとしたことを覚えています。

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◆この映画の女性映画としての見どころを教えてください。

 平凡な生活を送る赤理がなりたかった自分になっていく話だと思います。それに「これで終わりですか?」という非日常を求める女性心理を表したせりふから始まる物語ですし、撮影中も監督が「これは女の子の映画だから」とおっしゃっていました。赤理だけではなく、どの女性キャラも輝いていますし、共感できるポイントを見つけてもらえたらうれしいです!


◆本作は北原さんにとってどのような作品になりましたか?

棺桶に入れたいほどの作品になりましたが、ここで終わってはいけないという気持ちがあるので、あえてはっきりと言いません(笑)。私の人生の中では一番の事件だし、一番のチャンスだと思うので。「サニー/32」を持って卒業できることは幸せなことだと思います。これまでは過激なものや体当たりな役回りを目指してきたところありましたが、この作品を演じたことで、そこに対するこだわりもなくなると思うんです。今後は普通の女の子をナチュラルに演じられたらいいなと思います。

 

■PROFILE

●きたはら・りえ…1991年6月24日生まれ。愛知県出身。A型。2008年AKB48としてデビュー。今春NGT48からの卒業を発表。ファースト写真集「そして」が発売中。

 

■PROFILE

「サニー/32」「サニー/32」
新潟・長岡先行公開中
2月17日(土)より全国公開

<スタッフ&キャスト>
監督:白石和彌
脚本:髙橋泉
出演:北原里英、ピエール瀧、門脇麦、リリー・フランキーほか

<ストーリー>
中学教師の赤理(北原)を誘拐した柏原(瀧)と小田(リリー)は、「犯罪史上、最もかわいい殺人犯」と呼ばれた少女サニーの狂信的な信者であり、彼女を「サニー」と呼んで監禁する。

©2018『サニー/32』製作委員会
 
●photo/金井尭子 text/くれい響