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尾野真千子インタビュー「1人の女性が追い詰められるとこうなりえるのかもと…」『連続ドラマW 絶叫』

尾野真千子インタビュー「1人の女性が追い詰められるとこうなりえるのかもと…」『連続ドラマW 絶叫』

『連続ドラマW 絶叫』で借金を抱えた父親の失踪をきっかけに人生が転落していってしまう女性、鈴木陽子を演じる尾野真千子さん。演じた陽子という女性についてや役者という仕事との向き合い方を伺いました。

尾野真千子インタビュー

◆死後半年たった女性の遺体が発見されるところから物語が始まりますが、「貧困」「無縁社会」「ブラック企業」など、さまざまな社会問題も描かれている本作の台本を読んだ時はどのように感じましたか?

本当に心が痛かったですね。心が痛い、つらい台本だなって思ってました。“弱者”と呼ばれる人たちを悪い道というか、自分たちのいいように使う人たちがいるということも怖かったです。現実ではありえないというわけでは決してないですからね。

◆平凡な女性だったはずがやがては罪まで犯す陽子という女性を尾野さんはどう思いましたか?

彼女の人生が変わり始めたのは、まず親に認めてもらえなかったことがきっかけだと思います。親がやらなきゃいけない役目を果たさなかったから、結果的に彼女は“弱者”と呼ばれるようになってしまった。それなのに母親に仕送りしようとするんです。正直、私は仕送りなんてするなよって思いましたけどね。でも陽子の親に対する気持ちの中に優しさみたいなものを感じました。自分の生活のためのお金さえないのに、人に借りてまでずっと自分に冷たかった母親を助けようとするなんて私だったらできない。母に冷たくされた分出会った人たちを信じようとしていたんですけどね。この人ならと思って、信じようとした相手が結局は信じられる人ではなかったんだなって。だから彼女にはあれしか方法がなかったんですよね。

◆20代、30代の陽子を演じわけるためにどんな工夫をしているんですか?

メイクを変えたり、衣装の雰囲気を変えるだけで、自分ではほとんど何もしていません。変え方が分からなくて、メイクと衣装が変われば何か変わるだろうって考えでやっています。

◆続いて共演者の方についてお聞きしたいんですが、陽子を犯罪者へと変貌させていく神代を演じる安田顕さんの印象は?

今(取材時)はまだそんなに一緒に撮影していないからどんな人か分かってないんです。謎が多い人ですね。でもお芝居はとても面白いし、楽しい。提案もしてくれるし、引き寄せるものをすごく持っていらっしゃいますよね。だからついていっていいかなって思っちゃう。そういうパワーがあるんですよね。安田さんもそうなんですけど、神代も引き寄せるのがうまいですよね。陽子が今まで自分がかけてほしかった言葉を言うんです。それが神代の本心なのかどうかは分からないですけど。一瞬ではありますけど、神代との出会いはちょっとだけ陽子にとって幸せなことなのかなって感じました。

◆水田成英監督は原作を読んだ際に「鈴木陽子は尾野真千子だ!」と思ったとおっしゃっていました。

複雑(笑)。ハッピーエンドの人だったらいいけどね。でも、この役をやるならって言ってくれるってすごい幸せなことですから、私ならできると思ってくださるなら全力でやりますって思います。喜んでやりますよ。

◆確かに「自分ってこんなイメージなの?」って考えてしまうかもしれませんね。水田監督とはどんなお話をされていますか?

撮影が始まる前に話した時に普通の人を演じてほしい、ごくごく普通の人が変わっていって一歩間違ったらこうなるという普通の人を演じてほしいと言われました。撮影の時は監督とは冗談ばっかり言い合ってます。こっちがいろいろふざけたりしていると、乗ってくれるんですよ。私が急に真剣な目になると「人を殺す目になってますよ」ってツッコまれたり。そんなやりとりを毎日のようにやっています。でも完全に2人だけの自己満足の世界です。

『連続ドラマW 絶叫』

『連続ドラマW 絶叫』

◆WOWOWのドラマといえば“社会派ドラマ”というイメージがあるのですが、尾野さんにとってWOWOWドラマのイメージは?

最初に出演したのが『空飛ぶタイヤ』だったんですが、伝えがいがあって、やりがいのある役を演じることになって楽しかったです。すごくいい役をもらってすごくうれしかったです。これまで仕事で言われたことがなかったのですが、その作品で「きれいですね」って照明さんに言われたの。しかもその照明さんが今回一緒なんですよ。やっぱり初めてだったからなのか、伝えがいがあるのはもちろんなんですけど、思い出が強いですね。

◆今回の『絶叫』のように心が痛くなる物語もあると思いますが、台本を読んで主人公に気持ちが持っていかれることはありますか?

芝居をしている時は、その人の気持ちに入り込みますが、その日の仕事が終わるといつもの「尾野真千子」に戻ります。切り替えが得意なんです。

◆切り替えはどんなふうに?

普通に撮影が終われば終わりなんです。

◆では、あまり役柄を引きずるタイプではないんですか?

引きずっていたら、多分死んじゃう(笑)。今までやってきた作品にもつらいものとかたくさんありましたから、いつの間にか切り替え上手な役者になりまして。特技ですね、数少ない特技の1つです。

◆逆に、役柄に入る際はどうやっているんですか?

もう「よーい、スタート!」で役に入ります。撮影前から作ったりしないです。

◆尾野さんは経験したことを役に反映させるとお聞きしましたが、今回の作品では経験を生かすというのは難しかったのではないですか?

下積み時代とかお金がなかった時は全ての人を憎いと思いましたし、陽子に似たような感覚はあったと思うので、それも経験を生かした形ですね。たまに、自分の中で解釈してこんな気持ちかなってやることもありますけど、過去の作品から教わったことや自分自身の経験が生きてくることのほうが多いです。よく似た経験をしている人も多いと思うから、気持ちを理解してくれる人もいるんじゃないかなって思いますね。

◆『絶叫』という作品を通しての収穫はありますか?

いろんな収穫がありました。こんな気持ちもあるんだなって自分の気持ちの中にないものとして収穫しています。じゃないと次に生かせないですから。違う台本を読んでありえないことが起こったら「これはありえない」って突っぱねるんじゃなくて「そう言えるかも、思えるかもしれないね」って勉強していくので、「まぁそんなこともするのかもね」っていう気持ちで1つひとつ収穫していきます。

◆では、最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。

私自身、犯罪にまで手を染める陽子に共感はできないけど、1人の女性が追い詰められるとこうなりえるかもとは理解できるところがあるんですよ。普段、普通に話している友人や家族の中にもしかしたらすごい追い詰められている人がいるかもしれないって。自分の身近で起きてもおかしくない話なので、周りを見てみようって気持ちになりました。だからこの作品を通して、ある日それまで普通に生きていた人が転落していくかもしれないということを伝えたいです。周りの人だけじゃなくて、もしかしたら自分が陽子と同じことになるかもしれないと気づけるように。何もしてあげられないかも知れないけど、もしかしたら「ありがとう」のひと言で救われるかもしれないと思うと、もっと周りを見てみようかなって思うので、ぜひ一緒にこのドラマを見ませんか?(笑)

 

■PROFILE

●おの・まちこ…1981年11月4日生まれ。奈良県出身。A型。最近の出演作にドラマ『この世界の片隅に』『生田家の朝』などがある。出演映画「影踏み」が2019年公開予定。

 

■番組情報

『連続ドラマW  絶叫』
WOWOWプライム
3月24日(日)後10・00スタート(全4話)
※第1話無料放送

公式サイト:http://www.wowow.co.jp/dramaw/zekkyo
 
●photo/関根和弘  text/渋谷なつき hair&make/山内聖子(sot) sytling/山口幸奈(BRUCKE)

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