
金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系 毎週(金)午後10時~10時54分)の劇伴音楽を担当したharuka nakamuraのインタビューが到着した。
本作は、脚本家・生方美久による完全オリジナルストーリー。ある事故がきっかけで、当たり前に続いていくと思っていた幸せな日常が、突如崩れ去ってしまった瀬尾咲子(蒼井優)と瀬尾充(松山ケンイチ)、園田樹生(中島歩)と園田あずさ(夏帆)の二組の夫婦の喪失から始まる“愛”と“秘密”を描く。
ドラマの中では、毎回、印象的なピアノのメロディーがタイトルバックに流れる。音楽を担当するのは、オリジナル・アルバムの制作やライブを続けながら、多彩なコラボレーションを展開しているharuka nakamura。劇場アニメ「ルックバック」(2024年)をはじめ、映画、ドラマ、CMなど幅広いジャンルの音楽を手がけてきた。TBSドラマの劇伴音楽は今回が初となる。
本作の音楽のテーマ、土井裕泰監督からのリクエストなどを踏まえ、物語に溶け込む美しい旋律をどのように生み出したのか。完成までの工程、そして軸に置いたものを語ってもらった。
◆土井監督からの指名だったそうですが、当時の心境を教えてください。
土井監督の作品は少年時代から影響を受けてきました。特に印象的だったのは野島伸司さん脚本の作品や、火曜ドラマ『カルテット』(2017年)なども。
そんな尊敬する土井監督が指名してくださったとのことで、ご一緒にものづくりができることを光栄に思い、僭越(せんえつ)ながら引き受けさせていただきました。
◆生方美久さんの脚本を読み、どのような感想を持ちましたか?
とても素晴らしく、緩急があり、引きつけられました。脚本から、登場人物たちの心情に寄り添った音楽をイメージすることができました。
コインランドリーという場所を軸に人間模様が交錯していくところも印象的ですよね。初回から大きな展開が続いていますが、どこか不思議な世界観の中で物語が進んでいくところが興味深く、見ている方々からはさまざまな考察がなされるだろうと感じました。
そして、やはり主演の蒼井優さんの演技には毎話圧倒されています。
◆本作の音楽はどのように作っていったのでしょうか?
「話の展開はさまざまあれど、大きなテーマとして“隣にいる夫婦であれ、本当のところは分からなかったり、理解し合えていないところもありながらも生きている”というものがある」と土井監督からご説明いただきました。それらを抱えながらも前に進んでいく、慈しみのようなものがある物語だと捉え、登場人物たちの人間模様とともに寄り添うような音を意識しました。
土井監督からは、アンビエント(環境音楽)な雰囲気にまとまりすぎず、フレーズが印象に残るもの、そのフレーズとドラマのイメージが直結するようなメインテーマをリクエストいただいたので、登場人物たちの心情を表すような一歩踏み込んだメロディーを紡ぐ意識で、曲たちを作りました。
落とし込みの作業では、まずシーンのキーワードを伺ってから、マネージャーであり、いつも音楽制作として携わってくれているone cushionの山口響子とシーンのイメージなどを意見交換しながら、二人三脚で制作しました。
◆普段から劇伴音楽作りをする中で意識していることはありますか?
物語へ捧げる音楽としては作品に寄り添って混ざり合うことが大切だと感じています。それがフィルムスコアリング(映像のカット割りを元に、音楽のタイミングを合わせながら作曲を行う手法)でも、今回のように完成した映像を見る前にインスピレーションから多くの楽曲を作り、(後で映像に)それらを織り交ぜていただく場合でも、音楽の自我を押し付けるのではなく、並走するようなイメージで作るように、なるべく心がけたいと思っています。
◆ドラマ以外の音楽を手掛けられることも多いですが、制作面での違いや難しさを感じることはありましたか?
ここ数年は、さまざまな作品の劇伴音楽に携わらせていただいていますが、もともとはオリジナル・アルバムをリリースしてライブ活動を続けていました。劇伴音楽とオリジナルの違いについては興味深く考えています。
今回は、土井監督が指名してくださったこともあり、当初から音楽に対しての世界観が共有されていたので、僕の本来の音楽性からかけ離れたものではなく、音への信頼を感じていました。また、物語からのインスピレーションも多分にあったので、ありがたいことに自然に音楽を作ることができました。
◆改めて今回の制作過程を振り返っていかがですか?
今回は、シーンについてキーワードをいただいて、それについて僕が自由に思うままに作ったものを、監督をはじめ、スタッフの皆さんに受け入れていただくことができました。自然体なスタイルで取り組めたので、自分のサウンドのままで表現できたような気がします。
映像を拝見すると、スタッフの皆さんのおかげで音楽がそっと寄り添っているような形で完成していました。
◆最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。
作品の力が素晴らしいおかげで、多くの方々に僕の音楽も届いているようです。懐かしい友人から連絡がくるなど、ドラマの力を感じました。
発表した後の作品は、自分の中からは手放すようにしていて、受け取っていただいた方のものとして考えています。最後まで皆さんの日常を少しでも彩ってくれることを願っています。
番組情報
金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』
TBS系
毎週(金)午後10時~10時54分
<キャスト>
蒼井優、中島歩、高橋文哉、齋藤飛鳥、庄司浩平、飛永翼(ラバーガール)、久保田薫、夏帆、臼田あさ美、リリー・フランキー、松山ケンイチ ほか
<スタッフ>
製作:ケイファクトリー TBS
脚本:生方美久(『silent』『いちばんすきな花』『海のはじまり』『嘘が嘘で嘘は嘘だ』ほか)
音楽:haruka nakamura
主題歌:スピッツ「見知らぬ糸」
プロデューサー:千葉行利(『Mother』『Woman』『僕のヤバイ妻』『カンナさーん!』ほか)、宮川晶(『地獄は善意で出来ている』『#コールドゲーム』ほか)
演出:土井裕泰(『カルテット』「九条の大罪」『GOOD LUCK!!』、映画「花束みたいな恋をした」「罪の声」「平場の月」ほか)、塚本連平(映画「35年目のラブレター」、『舟を編む ~私、辞書つくります~』ほか)、小牧桜(『御上先生』『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』ほか)
編成:佐久間晃嗣、荒木沙耶
©TBS














