

競馬の世界を舞台に、血統という宿命を背負った競走馬への壮大な夢を乗せ、熱き人間たちの物語を描いてきた日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系 毎週日曜 午後9時~9時54分)。多くの人々に感動と勇気を与えてきた本作も、12月14日(日)放送の最終話(拡大SP)で、ついにその物語の幕を下ろす。
紆余曲折を経て、構想から実に5年もの歳月をかけて映像化を実現させた加藤章一プロデューサーが、最終話に込めた想いや、主要キャストたちの魅力、“続編”への期待などについて、余すところなく語った。
加藤章一プロデューサー インタビュー
◆視聴者の間でも憶測を呼んでいた、第7話で椎名(沢村一樹)が耕造(佐藤浩市)に封筒を渡すシーンについて、最終話での“ヒント”を教えていただけますか?
皆さんにここまで気にしていただけるとは思っていなかったのですが、実はあの封筒を渡すシーン自体は台本には書かれていなくて、演出で付け足したものなんです。この物語のテーマに関わる大きな“鍵”になっているとも言えます。
ヒントとしては、あの封筒の中身には「最後の有馬記念の行方を占う、重要なサインが隠されている」と言ってもいいかもしれません。
◆その有馬記念がまさに最終回のクライマックスとなりそうですが、プロデューサーとして最後のレースシーンに込めた想いをお聞かせください。
レース自体はもちろん、実はそこに込めている“テーマ”も重要です。「継承とは何か」というこのドラマの大きなテーマも、最後のレースを通して感じていただきたいです。
まずは、大規模経営の北陵ファームと、家族経営の日高の牧場のどちらが勝つのか、ということを一つの軸として描いています。その答えをこの有馬のラストレースで見せたくて、1話からずっと物語を積み重ねてきたところもあるので、その結果を見ていただきたいです。
そして、父と子の戦いの答えも全部そこに入れたので、レースの結果も、 「継承とは何か」も、見届けていただければと思います。
◆「継承」というテーマについて、ドラマでは原作ともまた違った描かれ方をしているかと思いますが、その点はいかがでしょうか?
脚本担当の喜安浩平さんとは、耕造から耕一(目黒蓮)へ、どういうメッセージが父親から息子に伝えられるかと考えました。耕造と椎名、野崎ファームの剛史(木場勝己)が、実はすごく重要で、この“3人の父親”から、物語が始まっているんです。
耕造の「先生、夢はあんのか?」というセリフや、耕一が「継承とは何か」と悩んでいる様子も描く中で、父から子へ、何を残すのか。夢を託した側が、どういう気持ちで託したのか。それを、最後の有馬が終わった時点で解き明かすために、1話からずっと構成してきました。その3人の父親が託したものの答えを、視聴者の皆さまに見てもらえたらと思います。
◆加藤プロデューサーの目から見て特に印象に残ったシーンはありましたか?
ドラマ化をしたいなと思った時に、ここは原作になかったけどやりたいなと思ったシーンがいくつかあったんです。
一つは、第1話の耕造が栗須(妻夫木聡)に『俺のところに来ないか』と誘うシーン。原作より少しドラマチックな感じにしたくて、競馬場でのレース後のシーンに設定を変えたんです。当初はうまくいくか不安もありましたが、浩市さんと妻夫木さんにすごく素敵に演じていただいて、(原作者の)早見(和真)先生にも『良かった』と言っていただけました。
もう一つは、第3話の最後、ホープを買うシーンですね。耕造が剛史に『あんたの夢に乗った!』と言うシーンが、僕はすごく好きなのですが、そのくだりも原作にはないんです。ですが、ここのシーンはもう少ししっかり描いてみたいと思ったので、浩市さんと相談しながら進めて、うまくいったなと思います。なので、そこは自分の中では強く印象に残っています。
◆今作を通じて改めて感じた、“座長”としての妻夫木聡さんの魅力をお聞かせください。
ご本人も原作に惚れ込んでいたのもあると思いますが、作品自体をどうするか、どういう風に展開して、自分がどういう立ち位置になればいいか、ということをすごく考えていらっしゃいました。僕も迷った時は相談しましたし、そこはすごく座長として、演者としても、素晴らしい方だなと思いました。
原作での栗須はストーリーテラー的な立ち位置で、自らが何かアクションを起こすというよりは、物語を見ている読者の立場に近い印象だったので、早見先生にも、そこは変えさせてほしいとお願いして進めたのですが、あまりに原作と違っても人物像がズレてしまうので、その辺のバランスをすごく取っていただきました。原作も脚本もかなり読み込んでいただいたんだろうなと思います。
お芝居も、僕らが予想したよりもさらに素敵な解釈をされていて、原作からのそうした設定の変化の部分も全部、妻夫木さんが補完して、栗須というキャラクターを作り上げていただきました。そこは本当に感謝しています。
◆目黒蓮さん、佐藤浩市さんについてはいかがでしょうか?
目黒さんに関しては、大変だったと思います。出来上がっているチームに途中から入って、浩市さんという大きな役者が抜けたあとを背負わなきゃいけない、というプレッシャーのようなものは必然的にあったんじゃないかと思います。ですが、そんなに緊張した素振りも見せず、いつも通りにやってくれたことにはとても感謝していますし、プロデューサーの僕が言うのはおこがましいですが、以前よりも役者としてもすごく成長されたなと。お芝居の仕方、現場の佇まいというか、接し方などもすごく変わったと思いますし、僕らの想像を超えていただいて、すごく嬉しく思っています。
浩市さんは、もう本当に尊敬に値すると言いますか、クランクインのだいぶ前から『こういうのどうだい?』という感じでいくつかのアイデアをご提案いただいていたんです。例えば最終回にも少しつながっていますが、第1話で耕造が栗須に問いかけた『馬は自分で勝ったかどうか分かっていると思うか? 俺は分かっていると思う』というシーン。“俺はこういう風に思うんだけど、劇中で使えないかな”とおっしゃっていただいて“すごくいい!”と思って使わせていただきました。
役者として素晴らしい演技をしていただいたのと同様に、実はそういったストーリーの根幹となるアイデアで作品全体のテーマの部分も背負っていただいて、驚きとともに感謝をしています。
◆最終回には、豪華ゲストも出演されると伺いました。
ジョッキーの坂井瑠星さんとクリストフ・ルメールさんが再び登場します! 有馬のラストレースでは、このお二人と隆二郎(高杉真宙)、翔平(市原匠悟)の4人がそろって同じレースに臨むことになるのですが、こんな豪華な共演はなかなか実現できることではないので、面白い戦いを見ていただけると思います。
坂井選手も、ルメール選手もやっぱり度胸がすごいですよね。役者さんよりも自然に演じているな、と。やはりプロのジョッキーの方々はいつも本物の勝負をしているので、一発本番の勝利に強い。オーラがありますよね。
◆こうした演出もされてきた中で、競馬関係者や、ファンの方々の声はいかがでしたか?
皆さんにとても好意的に取っていただき、馬主や調教師、ジョッキーなどを描いた競馬の作品があまりなかったので、それを描いたことで、喜んでいただけたと思います。
ファンの方々も、映像で出てくるレースを皆さん当てるのがあまりにも早くてびっくりしました(笑)。最初にポスタービジュアルを解禁した時に、馬の名前をすぐに当てていただいて、皆さん馬のことがお好きで、関心をお持ちであるなら、 “出演馬”を載せることがファンの皆さんにも、馬にとっても嬉しいかなと思い、もともとは入れる予定はなかったのですが、エンドクレジットに書くことにしました。
だんだんと出演馬の数が多くなっていって、どんどん大変になっていっていったのですが(笑)、それも、喜んでいただけてよかったなと思います。
◆原作からドラマ化に至るまでの“舞台裏”についても、お聞かせください。
映像化に至るまでの期間にコロナ禍があったことは大きかったなと思います。大人数のエキストラの方に参加していただくことなどを考えると、あの頃ではやはり実現できませんでした。
皆さんの粘りと、諦めなかった力があったからこそ、映像化が実現したんだと思います。辛抱強く僕らに託していただいた早見先生にも、全面協力いただいたJRAさんにも、本当に感謝しています。
これは個人的な話でもあるのですが、高校生の時に北海道に修学旅行に行って、僕はその当時からこの世界を目指していた中で、ある牧場に見学に行ったんです。最初に原作を読んだ時に、“その修学旅行で行った牧場だ!”と思い、勝手に運命を感じたんです。この作品は自分がやらないと、と思ったのは、何かそういう運命的なものがあったのかもしれないです。
◆続編を望む声も少なくないと聞きます。その可能性はいかがですか?
まずは原作の続編を早見先生に書いていただかないと何も始まらない中で、先生もお忙しいのでどこまで現実味があるか分からないですが、現場では演出の塚原(あゆ子)や他の撮影スタッフとも『次やったらもっとかっこいい映像が撮れる』とか、JRAさんからも『次がもしあれば、こういう風にすれば・・・』といったお話も、出ています。
具体的な話があるわけではないのですが、もし実現するのであれば、それがどういう形でなのかも分からないですけれども、ぜひやってみたいとは、スタッフ・キャスト一同、思っています。
番組情報
日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』
TBS系
毎週日曜 午後9時~9時54分
<出演者>
妻夫木聡、目黒蓮、松本若菜、安藤政信、高杉真宙、津田健次郎、吉沢悠、木場勝己、尾美としのり、関水渚、長内映里香、秋山寛貴(ハナコ)、三浦綺羅、小泉孝太郎、黒木瞳、沢村一樹、佐藤浩市
<スタッフ>
製作:TBSスパークル TBS
原作:早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮文庫刊)
脚本:喜安浩平
プロデュース:加藤章一
協力プロデュース:大河原美奈、小髙夏実
演出:塚原あゆ子、松田礼人、府川亮介
編成:佐久間晃嗣、中野翔貴
©TBSスパークル/TBS









