映画『望郷』湊かなえインタビュー「ずっと島で生まれ育った自分にしか書けない世界を書きたい」

映画
2017年09月02日

137573_01_R 9月16日(土)に公開される、貫地谷しほり、大東駿介主演映画『望郷』。原作者である湊かなえが本作の映像化について語った。

 湊はロケ地でもある因島出身。因島を舞台にした「望郷」の執筆経緯について「ずっと島で生まれ育った自分にしか書けない世界を書きたいと思い、島を舞台にしました」と明かした。

 島での生活に縛られながら、本土にあるドリームランドに憧れを抱く夢都子の物語“夢の国”は、修学旅行で憧れのテーマパークに行けると思っていたら、旅行先がスキーに変わってしまい、惜しくもそのテーマパークには行けなかったという自身の体験に基づいているという。「その時は人生たった一度のチャンスを潰されたと思っていたけど、大人になったら簡単にそのテーマパークに行けて、自分が捉えていた世界が狭かったのかと感じました。自分が島に育ちながら都会に対して思っていた気持ちを込めることができた作品だと思います」。

 また、“光の航路”については、造船会社に勤務していた湊のお父さんと、実際に行われていた進水式での思い出が詰まっているという。「知らない方は豪華客船の進水式ばかりをイメージするかもしれないけれど、ごく小さい船にも進水式があります。それと同じように、どんな人生にもそれぞれの『進水式』がある、そう思えたんです。この作品を通じ、海や造船に縁のない生活をしている人にも自分の人生と重ねて頂けたらと思っています」と自身の思い出を振り返りつつ、作品への思いを語った。

 これまで、数々の作品が映画やドラマとして映像化され、話題作となっている湊。自身の作品の映像化に関し「映像化は、普段本を読まない方が本を読んでくださる、その大きな入り口を作って頂くことだと思っています。自分が生まれ育った場所でのロケなので、その映像を観た島の子たちが、本を読むだけでなく自分も作る仕事をしてみたいなど、夢を膨らませてくれるんじゃないかと思いますし、住んでいるところがどんなに良いところか、気づいてもらえるきっかけになると思うのでうれしいです」と期待を語った。

<ストーリー>
 古いしきたりを重んじる家庭に育った夢都子(貫地谷しほり)は、故郷に縛られ生活をしていた。彼女は幼いころから本土にある“ドリームランド”が自由の象徴であったが、それは祖母や母(木村多江)の間で決して叶わない“自由”であった。月日は流れ結婚をし、幸せな家庭を築く中、ドリームランドが今 年で閉園になる話を耳にする。憧れの場所がなくなる前に、彼女がずっと思い続けてきた事を語り始める―。一方、本土から転任の為9年ぶりに故郷に戻った航(大東駿介)のもとには、ある日、父(緒形直人)の教え子と名乗る畑野が訪問してくる。彼は、航が知らなかった父の姿を語り出し、本当の父親を誤解していた事を知る事となるが―。ある島で起こる、ふたつの親子の過去と未来をつなぐ感動の物語。

『望郷』
9月16日(土)新宿武蔵野館ほか全国拡大上映
出演:貫地谷しほり、大東駿介、木村多江、緒形直人ほか
原作:湊かなえ「夢の国」「光の航路」(『望郷」文春文庫 所収)
監督:菊地健雄
脚本:杉原憲明
制作・配給:エイベックス・デジタル

公式サイト:bokyo.jp

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