綾野剛「僕と松田さんの共通点はダンスが下手(笑)」

映画
2020年02月17日
映画「影裏」公開記念舞台あいさつ

 映画「影裏」公開記念舞台あいさつが行われ、綾野剛、松田龍平、筒井真理子、大友啓史監督が登壇した。

 大友監督は「元々は、震災を挟んだ話なので、2011年に僕の故郷でも突然愛する人がいなくなってしまった、戻って来なくなってしまったという方々がどういう想いで過ごしているのか。その想いを忘れちゃいけないな、オリンピックでにぎやかになる前に忘れたくない想いがあるな、と思って作った映画です。愛する人を失うという事は震災に限らずどんなことでも当てはまることだと思います。そのあたりをうまく受け止めていただいたらうれしいです」と本作に込めた思いを明かした。

 本作は芥川賞受賞作の実写化ということで、綾野は「文学の映像化に成功している」と語り「情報過多な作品や世の中が当たり前になっていますが、限りなく情報を削いでいく作品でした。あまり無駄なことをしないように、なんとなく意識もしていましたが、現場に入ったらそんなことを考える必要なく演じることができました。僕も文学とはいったい何なのかという定義ができるわけではありませんが、おこがましいなと思いつつ、自分が純文学などを読んだ時に感じる心のひだの数というのが、自分が関わってきた作品で初めてこんなに感じた作品です。中村倫也君が演じた副島もすてきで、美しくて可憐なんですけど、体は震えているんです。彼がどういう想いで今野に会いに来たのかという部分も、文学的な匂いを感じ取れたなと思います」と語った。

 撮影時の思い出について松田は「釣りをきっかけに今野と日浅が仲良くなるというのもあって、釣りのシーンが多かったんです。撮影が楽しくてはしゃぎすぎて、熱中症になっちゃいました。自然の怖さというか、自然を舐めちゃいけないなと勉強になりました」と振り返った。

 筒井は「中村さんもそうですが、綾野さんもどんどんかわいくなっていって、ドキドキしていました。その隣には飄々と松田さんが佇んでいて、すごく幸せな撮影でした。震災などが起きてしまうと日常がなくなってしまい、マイノリティの方がさらに日陰にいってしまうと思うんですけど、そこに光を当てて挑戦した監督も、綾野さんと松田さんのお二人も素晴らしくて、この作品に参加できたことが光栄でした。ひとつだけ、“盛岡さんさ踊り”を踊るシーンがあって、私は東京から練習していったんですけど、綾野さんと松田さんがへなちょこだったので、なんなんだこれは!と思っていました(笑)」と暴露。

 すると綾野は「僕と松田さんの共通点はダンスが下手なんです(笑)」、松田も「気持ちで踊れるかなと思ったんですけど、テクニックも必要でした…」と弁解し、会場は笑いに包まれた。

 続いて、「影裏」というタイトルにちなみ、人知れずやってみたかった“影の野望”というトークテーマに。

 綾野は「役者という仕事でいろいろな経験をさせてもらっているので、そういった欲求がないほうなのかもしれませんが、絶対にかなわない願望を言うなら、箱根駅伝走ってみてかったなあ…同じコースは一人で走ったことあるんです!」とマラソン好きの綾野らしい夢を告白。

 松田も「スポーツ選手になりたいです。競技を見ているとすごく体がしなやかで、憧れるというかうらやましいなと思います。まずは体を柔らかくすることから始めようと思ってストレッチをしていたんですけど、効果がすぐに切れちゃうので永遠にやらないといけないんだと思うときつくて(笑)」と話、笑いを誘った。

 筒井は「フィギュアスケーターになりたかったんです。高校時代やっていて、大会にも出たんですけど、足だけ太くなりました…(笑)。今でもスピンだったら三回転ぐらいできるかも!」と明かすと、会場からは大きな拍手が上がった。

 大友監督は「女性になってみたいですね。今の時代、女性の方が楽しそうなんです。女子力がないと今の時代、見えないものがあるなと思って、こう見えて普段から女子力を意識しています(笑)。本作でもかすかな女子力を駆使して、今野さんの気持ちになって撮っているシーンが多かったです」と明かした。

 イベントが行われたのはバレンタインデー翌日で「年々ファンの方から頂くチョコが減っていっている気がするんです…いや気持ちだけで充分なんですけど!でも年々減っていって気がする…」とちょっぴり寂しそうな綾野。

 松田は「小学校の頃、10個くらいもらったので机のテーブルに並べて賞味期限が切れるまで食べませんでした。勲章のようで、それを自信にして日々を生きていました(笑)」と語り、会場を笑わせた。

 登壇者で唯一の女性である筒井は「バレンタインデーってことを、さっき思い出したんです(笑)。昨日も何もなく過ごしましたが、これから頑張りたいと思います!」と。

 大友監督は「取材したかったけどずっと断られていたおばあちゃんがいて、ある日、チョコレートをくれたんです。それがバレンタインの日だったんですが、取材OKの印でもあったんですよね」とドラマチックなエピソードを明かした。

 最後に大友監督は「映画はスタッフ、エキストラ、陰で協力してくれた方を含めるとたくさんの方々の力で作られています。想いの深さという点では大作映画にも負けておらず、登場人物たちの小さな心の動きをこの大スクリーンで観ていただくことで、普段見えないものが届けられるかと思います。ぜひ映画館で観ていただきたい作品です。今日は本当にありがとうございました」と。

 綾野は「本日は本当にありがとうございます。ようやく皆さんに作品を届けられることができて、感謝申し上げます。忘れてはいけない記憶があるということを、ここからちゃんとつないでいかないといけないという気持ちが、この作品にも込められています。皆さんにも誰かにつないでいきたいと思っていただければ嬉しいです」と語った。

映画「影裏」
公開中

<ストーリー>
今野は、転勤で移り住んだ岩手で日浅に出会う。慣れない地でただ一人心を許せる存在の日浅だったが、ある日、突然姿を消してしまう。日浅を探し始めた今野は、彼の父に捜索願を出すことを頼むが、なぜか断られてしまう。そして見えてきたのは、これまで自分が見てきた彼とは全く違う別の顔。ともに時を過ごしたあの男の“本当”とは?

出演:綾野剛 筒井真理子 中村倫也 平埜生成/國村隼/永島暎子 安田顕 松田龍平

監督:大友啓史
脚本:澤井香織
音楽:大友良英

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