青山隼インタビュー「サッカーで得た仲間たちは僕の財産」

特集・インタビュー
2017年12月27日

2015年にユニホームを脱いだ元サッカーU-20日本代表の青山隼さん。代表経験も持つサッカー選手が第2の人生として選んだのは“役者”としての道だった。その青山さんが2018年1月に舞台「ストックホルム」に出演するという。大きな人生の決断を下した経緯やかつての仲間たちへの思い、役者としての現在地を聞いた。


人生は一度きり──。
それなら思い切って飛び込んでみようと

青山隼インタビュー

◆青山さんは2015年のシーズン途中に電撃引退されましたが、27歳での決断だったので驚きました。

 あの時はクラブ(徳島ヴォルティス)に本当に迷惑をかけてしまいました…。カズ(三浦知良)さんはもう別次元として(笑)、サッカー選手なら誰でも遅かれ早かれ必ず第2の人生の選択を迫られる時がきます。僕はプロになって3年過ぎてからは自分がやり切ったと思ったらいつでも辞められる覚悟を持っていたので、毎年単年契約で勝負させて頂いていたんです。“サッカーだけが人生じゃない”という思いは常にありましたし、両親からもそう言われていたので後悔はないんです。

◆そして、引退後の進路にさらに驚かされましたが(笑)。

 芸能界の知り合いの方に「チャレンジしてみれば?」と背中を押していただいたんです。今までやってきたサッカーとは全然別物ですが、“忍耐”という点ではスポーツマンとして鍛えられてきたので、それを生かしつつやっていこうと。人生一度きりなので、思い切って飛び込んでみたんです。

◆もともとこういったお仕事に興味はあったんでしょうか?

 これはサッカー選手の時から思っていたんですが、自分のプレーやチームの試合を見て何か感じてもらえたらうれしいなって。だからプレーヤーであり続けたかったんだと思います。役者さんって、現実に起きることを表現することもありますが、そうでないものを表現することも多々あるじゃないですか。例えば殺人鬼の役をやってくださいと言われても、それを経験することはできないわけで、じゃあそれをどうやってイメージして演じるのかっていうことになる。今の僕は全然できないので日々勉強なんですが、いつか自分の演技を見て、何かを感じてもらえるような役者になりたい。そういう意味ではすごく魅力的で、やり甲斐のある職業だなと思います。

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◆そんな中で昨年は「RANPO chronicle 虚構のペルソナ」で初の舞台に立たれました。

 サッカーとはまるで違うステージですが、J1昇格がかかっていた2013年の試合前を思い出しました。舞台袖にいて、いざ入っていく時なんかはピッチに立つ感覚に似ていて、「ああ、この感覚懐かしいな」という思いが込み上げました。そして、そういう場に立たせてくださったプロデューサーさんをはじめとする周りの方々や、そして何より見てくださるお客さんへの感謝の気持ちは、これからもずっと持ち続けていかないといけないなって。そこはサッカーと変わらないですね。公演を終えるとドッと疲れて、「試合が終わったな」という感覚も同じです。「どっちが緊張したか?」って? それは…舞台ですかね(笑)。


サッカーで得た仲間たちは僕の財産
今でも刺激をもらっています

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◆今は2018年1月上演の舞台「ストックホルム」の稽古の真っ最中だそうですね。

 はい。「愛」がテーマになっていて、いろいろ世界や分野で、いろいろ愛があるんだよっていうところが強く表現されている作品です。その中で僕が演じるのは文房具の営業マンの役。2人1組で話が展開していくんですが、僕にも相方がいて、相方と昔から仲が良くて、その友情を愛の形として表現します。ほかにもいろいろな愛の形が描かれるんですが、それらが最終的に全て1つにつながるので、最後には「そういうことだったのか!」と思っていただけるはず。そういう意味では一瞬たりとも目が離せない、面白い作品になっていますのでぜひ見ていただきたいです。

◆そして2018年はサッカーワールドカップイヤーでもあります。先日グループ分けも決まりましたが、青山さんはどう見ていらっしゃいますか?

 う~ん、正直なところ結構厳しいグループだなと思います。おまえが言うなってことは置いといて、2014年のブラジル大会では、(香川)真司も含めて海外組を中心に“自分たちのサッカー”を掲げて戦いましたが、あのような結果(1分2敗でグループステージ敗退)になって、見ている方たちも「自分たちのサッカーって何なんだろう?」って気持ちだけが残ってしまったと思うんです。今回ハリルホジッチ監督がやっていることは、守備からのカウンターサッカー。僕個人としては、ワールドカップで強豪に勝つためには正しい選択だと思います。ここから半年間くらいでもっとまとまってチームを作れれば、期待が持てるんじゃないかと思っています。

◆香川選手のほかに、ハリルジャパンにはU-20代表で共に戦った槙野(智章)選手も呼ばれています。やはり気になりますか?

 それはもちろんです! 真司が最近入っていないですけど、槙野や真司、ウッチー(内田篤人)が、またあの大舞台に立っているのを見たいです。僕が30歳なので、彼らももしかしたら今回、ないしはその次(2022年カタール大会)が最後かもしれない。同世代の代表として刺激になるので、頑張ってほしいです。

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◆青山さんが出場した2007年のU-20ワールドカップは“調子乗り世代”“悪ノリ世代”と言われていましたね。

 僕は控えめなほうでしたけどね(苦笑)。本当にみんな仲が良かったんです。真司は海外でプレーしているのでなかなか会えないですけど、今もみんなで集まったりします。もう友達を超えて家族みたいな感覚。「虚構のペルソナ」の時も柏木(陽介)や槙野が花を贈ってくれたりして。(浦和)レッズ時代に一緒だった先輩の坪井(慶介)さんからいただいた花が一番目立ってましたけど(笑)。坪さんには「こうやって別の分野でやっているって、俺ちょっと勉強になったわ! すごい感じたわ!」と言ってもらえてうれしかったですね。サッカーを通じて出来た仲間たちには本当に感謝しています。僕にとってものすごい財産です。

◆2018年は日本サッカーも青山さんの飛躍の一年になりそうですね。それでは今後の抱負を聞かせてください。

 飛躍といっても僕はまだ役者として確固たる武器も持っていない状態なので、まず次の舞台「ストックホルム」をしっかりやること。自分の中に“演技って何なんだろう?”というところがまだまだあるので、その殻を破りたいです。サッカー選手に例えるなら、ようやく強化指定選手になったかなというところ(笑)。「止めて蹴る」じゃないですけど、しっかり受けてパスができるというのはサッカーでも基本ですし、基礎をしっかり作っていかないといけない。だから、やっぱり今はそういう意味では修行中です。僕はサッカーも下手くそで、とにかく努力しかない人間だったので。これからも人の倍、努力して積み重ねてやっていきたいと思います。

 

■PROFILE

青山隼インタビュー青山 隼
●あおやま・じゅん…1988年1月3日生まれ。宮城県出身。A型。2006年に名古屋グランパスエイトに入団し、サッカー選手としてプロデビュー。U-17、U-20日本代表としても活躍した。2015年に現役を引退。俳優に転身し、2016年「RANPO chronicle 虚構のペルソナ」で初の舞台に立った。主な出演作は映画「新宿スワンⅡ」、ドラマ『相棒 season15』など。2018年1月23日(火)より赤坂レッドシアターにて出演舞台「演劇チーム渋谷ハチ公前番外公演『ストックホルム』」が上演(1/28まで)。チケット詳細は青山隼さんのTwitteアカウント(@jun_aoyama1988)で。