NHK・Eテレ『おかあさんといっしょ』の歌のお兄さん卒業後、マルチに活動する“だいすけお兄さん”こと横山だいすけさん。Huluで昨年12月よりスタートした初冠レギュラー『だい!だい!だいすけおにいさん!!』は、横山さんがヒーローに変身して子供たちの悩みを解決するドラマや、オリジナルソングのコーナーなども盛り込んだキッズ番組で、この春シーズン2へ突入。横山さん自身のキッズ時代から現在までを振り返ってもらいつつ、同番組に対する思いをお聞きしました。
親ってこういう気持ちなのかなと想像しちゃいますね
NHKに9年間通い続けていたのが、今は毎日違うところに行き、毎日違う人と関わる。その相手も、子供から9割方大人へと変わり、もう生き方すべてがガラッと変わったような感覚ですね。
◆卒業を寂しがる“だいすけロス”の声に対しては、どう感じていましたか?
正直、現役のころは自分の人気をあまり感じたことがなくて(笑)。だから、そういう声をいただいたことには驚きとうれしさと、あとはあらためて卒業する寂しさを感じましたね。と同時に、後任の花田(ゆういちろう)君が早く視聴者の皆さんに馴染めるといいなと。月曜から土曜まで毎日『おかあさんといっしょ』を見てくださる方々にとって、歌のお兄さん・お姉さんは慣れ親しんだ存在。それだけに、交代するとすぐにはなかなか受け入れてもらえないという洗礼みたいなものがあるんですよ。僕が歌のお兄さんになったばかりのころもそうでしたから。
◆後輩の姿はテレビでご覧になっていますか?
観ますね。どうしても心配になっちゃって。コンビを組む歌のお姉さんの小野(あつこ)さんのことも含めて。僕の最後の年が彼女の1年目で、すごく一生懸命頑張っていたんです。とはいえまだ2年目のタイミングで、相方も僕から花田君に変わり、2人で子供たちとちゃんと関われているだろうか、と。気になってスタジオまで遊びに行ったこともあります。親心みたいなものですね(笑)。
◆横山さんはこの1年、俳優業や歌手業など活躍の幅をどんどん広げていらっしゃいますね。
歌のお兄さんのバトンは次の世代に渡し、自分は一歩外に出て新しい挑戦をすることで、子供やファミリーに楽しんでもらえるものを1つでも増やしたい。そう思い描いていた中で想像以上にたくさんのチャンスをいただけて、幸せであっという間の1年でしたね。
◆『だい!だい!だいすけおにいさん!!』も、初冠番組という大きなチャンスだったと思います。オファーを受けたときの心境は?
まさに子供やファミリーに楽しんでもらえる、自分のやりたかった番組で、しかもタイトルに「だいすけおにいさん」と名前まで入れていただいて、うれしい限りでした。立ち上げに当たり、スタッフの方々とはどうやっていこうかというお話をたくさん詰めたんです。そうして始まった番組が皆さんに受け入れられて、幸せだなって思いますね。
◆受け入れられた要因というのは、どこにあると思いますか。
例えばメーン企画の「おうちヒーロー☆なんでもできるんニャー」は、ほかの番組にはあまりない新しい魅力なんじゃないかと思います。僕がヒーローに変身して、子役のみうちゃん(新井美羽)、まーくん(築地まさたか)と共に子供たちが日ごろの生活で引っかかっていたり、悩んでいたりすることを解決していくホームドラマなのですが、やっているほうもすごく楽しいですね。
◆みうちゃん、まーくんとの共演はいかがですか。
『おかあさんといっしょ』では、初めて出会う子たちと1時間楽しく過ごして、それでもうお別れだったんです。でも、みうちゃんやまーくんとは長い間一緒にいられる。2人が日々成長する姿は、見ていて面白いです。ずっと歌のお兄さんとして子供たちをまとめてリードするよう努めてきましたけど、2人とは一緒になってわちゃわちゃしています。カメラが回っていないところでもよく遊んだり、学校や保育園の話をしたりしているんですよ。だから、あまり撮影しているという感覚にならないんですよね(笑)。
◆まるで本当の親子のようですね。
わちゃわちゃしている時は、近所の子供と遊んでいるような感覚なんです。だけど、ちょっと離れると、2人がどう過ごしているのかなって気になって見ちゃう自分がいる。その時に、もしかして親ってこういう気持ちなのかなと想像しちゃいますね(笑)。
歌と子供が好きだという気持ちが常に真ん中に
◆横山さん自身がみうちゃんやまーくんくらいの年齢だった時は、どんな子供でしたか。
“歌が好き”という気持ちが初めて芽生えたのが、まーくんくらいの年齢のころでした。3~4歳だった僕に、親が「青きドナウ」というウィーン少年合唱団を題材にした映画を見せてくれたんです。その作品を見て、僕は目が青いわけでもないし、髪が金色なわけでもないけど、みんなと一緒に歌いたいなと思って。その後、みうちゃんくらいの年齢になって合唱団に入りました。小学3年生でしたね。ただ、当時の夢は冒険家になることだったんです。だからよく友達と近所で探検ごっこをして、見たことのない貝殻や何かの骨みたいなものを拾ったり、昆虫を捕まえたりして遊んでいましたね。
◆歌のお兄さんを目指すようになったのは、高校生の時だそうですね。
ええ。高校卒業後の進路を考える中で、歌と子供が好きという気持ちはあったので、それを生かせる道は教育の分野かなと漠然と思っていて。で、高校の資料室で幼児教育の資料を読んでいたら、そこには、子供は特に小学校へ上がるまでの時期は何でも吸収するから、たくさんの音楽を聞かせてあげれば、それだけその子の心が豊かになる、というようなことが書いてあったんです。それで僕は幼稚園か保育園の先生になろうと一旦は思って家に帰ったら、ちょうど弟がテレビをつけていて、『おかあさんがいっしょ』がやっていたんです。それを見て、これだ!と。
◆それが運命の出会いだったんですね。
歌のお兄さんになれば、目の前の子供たちだけでなく、テレビを通して全国の子供たちに歌を聞かせてあげられますからね。僕の心は完全に決まりました。で、高校卒業後は音楽大学へ進み、劇団四季を経て、歌のお兄さんにオーディションで選んでいただいて。その時は本当にうれしかったですね。技術うんぬんより、歌と子供が好きだという気持ちが常に真ん中にあって、それが人の縁や助けにつながったんだと思います。
◆歌のお兄さんになって良かったと一番感じたのは、どんな瞬間ですか。
子供たちが僕と一緒に歌って笑顔になる時。これに尽きますね。最も幸せな瞬間でした。
◆歌のお兄さんとしての9年間の経験は、『だい!だい!だいすけおにいさん!!』でも生きていますか。
もちろんです。生きていないことがないくらい生きています(笑)。それは僕の根幹として大事にしつつ、新しい挑戦もどんどんしていきたいなと。4月から始まったシーズン2では、僕が全国の幼稚園や保育園に赴いて子供たちと一緒に踊るコーナーがあるんです。実は僕、これまで歌はたくさん歌ってきましたけど、踊りメーンとなるとそんなにやっていなくて。正直、体を動かすのは好きなんですけど、得意かと言われるそんなことはなくて(笑)。きっと子供たちの中にも踊りが得意な子、不得意な子、いると思いますが、どちらだとしてもみんなで楽しんで、視聴者の皆さんにも一緒に楽しんでいただける番組にしていきたいと思っています。
■PROFILE
●よこやま・だいすけ…1983年5月29日生まれ。千葉県出身。O型。
NHK・Eテレ『おかあさんといっしょ』で、歴代最長の9年間(2008年~2017年)にわたり“歌のお兄さん”として活躍。卒業後はミュージカル「魔女の宅急便」やフジテレビ系ドラマ『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)などのほか、バラエティにも出演。歌手として5月23日に発売される「笑顔をあつめて」で本格的なメジャーデビューも果たす。現在公開中のディズニー映画「リメンバー・ミー」では声優を担当。NHK・Eテレ『すイエんサー』のMCや、日本テレビ系「news every.」のマンスリーキャスタ―も務める。
■番組情報
Huluオリジナル『だい!だい!だいすけおにいさん!!シーズン2』
Huluにて配信中
毎週(金)更新
出演:横山だいすけ、新井美羽、築地まさたか
DVD『だい!だい!だいすけおにいさん!!シーズン1』vol.1~3発売中
CD「みんなでうたおう!だい!だい!だいすけおにいさん!!」発売中
●photo/木川将史