アンジェラ・ユン「フィルムカメラで、東京を撮影することが好きなんです」映画「宵闇真珠」

特集・インタビュー
2018年12月14日

次世代を担うアジアンビューティーとして世界が注目する香港出身の人気モデル、アンジェラ・ユンが「宵闇真珠」で映画初主演。奇病に侵されたヒロイン役で、オダギリジョーと共演した“文青女神(文化系男子の女神)”の異名も持つ彼女に、女優としての目標や香港愛について聞きました。

アンジェラ・ユン◆これまでトップモデルとして活躍していましたが、女優を目指すようになったのはいつごろから?

演技をしてみたいという思いは、子供のころからありました。小・中学生の時に、ジョウ・シュンさんに似ていると言われて、彼女が出演していた時代劇のドラマや映画を見てまねすることも多かったです(笑)。その後、香港浸会大学では映画史などと一緒に演技の授業も学んでいました。モデルとしてデビューしましたが、演技指導の先生と出会い、レッスンを続けながらオーディションを受けていた時に、この作品と出会いました。

アンジェラ・ユン◆今回、アンジェラさんが演じられた“少女”は、魅力的なキャラクターですが、どのように捉えられて演じられましたか?

脚本を読んだ段階で、世界から隔離されたような孤独な少女であり、自分の力では何をすることもできない無力感を感じているところまでは理解できました。この物語はジェニー・シュン監督の実体験も入っているので、撮影が始まると、もう一人の監督であるクリストファー・ドイルさんと3人で話し合って作り上げていきました。

◆この作品はアート系であり、環境問題などに警鐘を鳴らす社会派作品ですが、ロケ地である漁港・大澳は、香港人にとってどんな場所だと言えますか?

ランタオ島の西部にある小さな漁港で、山と海に囲まれ、水上家屋が並んでいます。そもそもイギリスの植民地になった時は、香港全体が大きな漁村だったとも言えますから、昔の香港を象徴するような場所かもしれません。ただここも開発が進むにつれて、古き良きものが消え去っている状態です。この映画の撮影にも使われた廃虚などをいかに残していくかという問題について、もっと考えなければいけないと思いました。

アンジェラ・ユン◆よく東京に来られるとのことですが、どこに行かれることが多いですか?

下北沢と原宿によく行きます。洋服を買いに行くだけではなく、ファストフード感覚の香港のものとは違った、日本独特のラーメンを食べるのが好きなんです。あと日本そばも!携帯だけでなく、フィルムカメラで撮影することが好きなので、街を撮影します。現像なども大変ですが、とても味がある画が撮れるのが魅力的なんです。この映画には小道具として、カセットテープやヘッドフォンステレオといった懐かしいアイテムも出てきますが、それも味があると思います。

アンジェラ・ユン◆どのような女優を目指していきたいですか?

海外で仕事をしたり、大きな映画賞を獲るような国際派女優になりたいとはあまり思っていません。演技指導の先生から「芸術こそが世界を変えられる唯一の武器だ」と教えてもらったこともあり、できれば社会や世界を変えられるような映画に出演できる女優になりたいです。たとえ、変えることは難しくても「万引き家族」のように観客にいろんな示唆を与えられるような作品に出てみたいです。

◆今後、出演してみたい香港の監督はいますか?

ピーター・チャン監督とイー・トンシン監督と一緒に仕事をしてみたいです。お二人は女性心理を描くことがとてもうまい監督さんですし、私は小さいころからアニタ・ユンさんの大ファンなんです。だから、チャン監督が撮られた「君さえいれば/金枝玉葉」やイー監督が撮られた「つきせぬ想い」は何度も見ていますし、普遍的なテーマを扱っている、あの時代(90年代)の香港映画が大好きなんです!

 

■映画情報

『宵闇真珠』
12月15日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

監督:ジェニー・シュン
監督・撮影:クリストファー・ドイル
出演:オダギリジョー アンジェラ・ユン
配給:キノフィルムズ

<ストーリー>
香港・珠明村。幼少時から日光にあたるとやせ細って死んでしまう病気だと言い聞かせられ、太陽から肌を隠して生活する16歳の少女(アンジェラ・ユン)は、透き通るような白い肌の持ち主。村人たちからは「幽霊」と呼ばれ、気味悪がられている。日没後、肌を露出し、お気に入りの音楽をお気に入りの場所で楽しむことが、少女にとって唯一孤独を癒やす手段だった。ある日、どこからともなくやってきた異邦の男(オダギリジョー)と出会った少女は、今まで知ることのなかった自身のルーツに触れていくことに。
 
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●photo/中村圭吾 text/くれい響