高良健吾インタビュー「役に共感しなくても、理解があれば演じられる」映画「アンダー・ユア・ベッド」

特集・インタビュー
2019年07月18日

恋した女性を監視するため、ベッドの下に潜り込む男の日々を描いた大石圭の同名小説が映画化。人間の深層心理にも迫った刺激的かつ過激な本作で、主人公・三井を演じた高良健吾さんに演技論などについて伺いました。

高良健吾インタビュー

◆本作の原作や脚本を読んで率直な感想は?

僕は18歳でデビューして、二十代中盤ぐらいまでは、犯罪者など、どこかヒリヒリした痛みが伴う役を演じることが多かったんです。それが三十代になって初めて、「久しぶりにこういう役が来たな!」という感覚でした。三十代になって、自分の中でどこか結果が欲しくなっていたのも事実です。そこで三井を演じられることは、今思う自分の距離感で役を演じられることにひかれました。そういう意味でもこの作品はご褒美だと思いました。

◆二十代中盤までは、高良さんの思う距離感で演じることができなかったのでしょうか?

以前はそういう役を自分に置き換えて役に成り切らなきゃいけない。つまり、役が抱えている問題を自分の問題にしようとしていたんです。そういう意味では、当時の僕は役者を仕事にすることをどこかスパンの短いものとして考えたのかもしれません。ただ二十代後半になると、「この芝居のアプローチを続けていたら身が持たない」ということに気づかされました。役に成り切ることと役として作品の中にいることは別のことじゃないかと。

◆純粋な思い故に次第に行動が暴走していく三井に対して理解や共感というものは?

これまでも1つの役を演じるにあたって “共感と理解”ということを考えているのですが、常に共感が必要とは思っていません。共感しなくても理解があれば演じられる。三井の行動に関して共感はできないけれど、一人の女性に対して真っすぐな姿勢はどこか理解できてしまう。それは彼が幼いころ、家族からも存在を忘れられていた寂しさが痛いほどよく分かるから。どこか人に認めてもらいたい孤独感、それを軸にして今回演じました。

◆撮影中、特に大変だったことは?

長時間ベッドの下にいなきゃいけないこと…というのは冗談ですが(笑)、楽しかったです。現場で芝居ができることは、どんなつらい役でもやはり楽しいんですよ。この役をやると決めた時点で、どんなに悲惨な描写があっても覚悟して演じていますから。千尋さんを助けられずにスタンガンで気絶してしまうところとかそういうところに三井君に愛らしさを感じていて。やっぱり常に彼の味方でいなきゃいけないと思いました。ただ紙おむつを履くシーンは、恥ずかしかったです(苦笑)。

高良健吾インタビュー

◆初めて組まれた安里麻里監督は、どのような監督でしたか?

とても丁寧な監督さんでした。当日現場に行くと、その日に撮るシーンについて話し合ってしっかり方向性を決めるという作業をする。それは自分のキャリアの中では、とても珍しいことでした。

◆完成した映画を見た時の感想は?

モノローグでは変に説明的にならないことを意識していたのですが、ほかにもさまざまな音が仕掛けられていることで、お客さんをリードする作品として仕上がっていたことに驚かされました。

◆三井のグッピーのように、いつの間に我を忘れて話してしまうことは?

やっぱり仕事の話になっちゃいますね(笑)。インタビューでも常に話しているのに…。好きなんだと思います。自分が出た作品や芝居の話も好きですが、自分が全く関わっていない映画の話も好きですし、とにかくこの世界の話が好きなんだと思います。

◆高良さんが思わずのぞいてみたいものは?

役者の仕事をすると毎回違う世界をのぞくことができる。料理人だったり役所勤めの人だったり、今まで全く知らない世界を学ぶことができる。それが役作りにもつながると思うので僕はこの仕事が好きなのかもしれません。

■PROFILE

●こうら・けんご…1987年11月12日生まれ。熊本県出身。O型。主な出演作に映画「蛇にピアス」「横道世之介」「シン・ゴジラ」「多十郎殉愛記」など。今後の出演作に映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」(9月13日(金)公開)、「葬式の名人」(9月20日(金)公開)、「カツベン!」(12月13日(金)公開)などがある。

■映画情報

「アンダー・ユア・ベッド」

「アンダー・ユア・ベッド」
7月19日(金)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー

<STAFF&CAST>
監督・脚本:安里麻里
原作:大石圭
出演:高良健吾、西川可奈子、安部賢一、三河悠冴、三宅亮輔

<STORY>
三井(高良)は11年前に大学の講義中に名前を呼んでくれた千尋(西川)と過ごした“人生で唯一幸せだった”一瞬の時間をふいに思い出す。もう一度名前を呼ばれたい一心で、現在の千尋を探し出すが、目の前に現れた彼女にはあのころのまばゆい面影はなかった。

公式サイト: http://underyourbed.jp/

©2019 映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会

●photo/木川将史 text/くれい響 hair&make/高桑里圭 styling/渡辺慎也(Koa Hole inc)