森口博子インタビュー「“生きる力”につながる表現者でありたいと思っています」

特集・インタビュー
2021年08月04日

「みんなそれぞれの歌を歌って生きてほしいなと」

◆原曲のイメージを守られているわけですね。

もちろん声に関しては(デビュー当時)17歳の少女の声からやっぱり大人の声に成長するわけですけど、みんなが「今の声のほうが断然良い!」と言ってくださるんですよ。「表現力も増して、世界観がより伝わる」と言ってくださって。それを聞くと、人間は変化していくものだけれども、良いように変化していっていると受け止めてもらえていたんだなと思えますね。キーの高さも変わらずに歌えているので、そういった意味でも皆さんからの評価は本当にうれしいです。

◆そういったファンの声が、活動を続けるエネルギーにもなっているのでは?

もう、それに尽きます! 本当に落ち込んでいる時にそういった声を読み返したりしていて。新作のリリースや購入特典の内容、そしてミュージックビデオの公開やコンサート情報といった何か新しい発表をするたびに、みんなの反応がすごいんですよ。ファンのみなさんが一緒に喜んでくれて、一緒に興奮してくれて、一緒に感動してくれて…そういう声があってこそですね。

◆ファンの声に支えられ続けている。

あとはやっぱり、私にとってライブが生命線なんです。ライブでファンの皆さんが涙を流されている姿やだんだん笑顔になっていく様子だったり、一緒に握りこぶしを掲げて1つになっている瞬間だったり…、あのエネルギーに私は突き動かされて生きていると実感しています。

◆ライブもそうですが、森口さんにとって“歌”というものが“譲れない居場所”になっているということを今作に収録の「ポジション」の歌詞からも感じました。

まさに今おっしゃられた通りで、私にとっての居場所は音楽であり、ライブであって。私だけに限らず、大人って日々揺れるものじゃないですか。その時のコンディションや仕事の人間関係だったり、夫婦仲や家庭環境だったり、いろんな原因があって、揺れ動いたり挫けそうになったりもする。そんな中でも“大人だし、揺れ動く日もあるよね。だけど今、自分がいる立ち位置は譲れないんだ!”と痛感しています。居場所を丁寧に生きる!! “核はブレないという気持ちで生きていくのが大切だ”という想いをこめて、「ポジション」の歌詞は書きました。

◆そういう想いもこめた曲なんですね。

この曲には“ため息をブレスに変え”という歌詞があって。マイナスな気持ちで息が漏れることもあるんですけど、その息を歌のためのブレスに変えて、みんなそれぞれの歌を歌って生きてほしいなと。自分自身へのエールでもあり、同世代の皆さんへのエールでもありますね。

◆この曲もそうですが、今作で森口さん自身が作詞している曲にはどれも“困難を乗り越えてきた”というメッセージが共通しているように感じられます。

デビュー曲『機動戦士Ζガンダム』のオープニングテーマのセルフカバー「水の星へ愛をこめて〜35人の森口博子によるアカペラヴァージョン〜」をレコーディングしている時に、まさにそれを感じたんです。35周年にちなんで35トラックを目指していこうということで、自分の声を1トラック1トラック重ねていく作業をやって。今までいろんなことがあって苦しいこともあったけど、それを乗り越えて1年1年を積み重ねてきたことがその作業にすごく重なりました。

◆これまでの1年1年で乗り越えて来た困難も思い返しながら、35トラックを重ねていったと。

それこそ私は17歳でデビューして、堀越学園を卒業間近に(当時の所属事務所から)リストラ宣告を受けたりもしたんです。でもどうしても歌が歌いたかったので、どんな仕事でも歌に繋げるという気持ちでバラエティのお仕事をやらせていただく中でレギュラー番組が増えていって。その先でまた2度目のガンダムのテーマソングに出会い、やっとオリコンのベスト10にランクイン!! それ以外にもいろんなアニメのテーマソングもいただいて、オリジナル曲もプリンセス プリンセスの岸谷 香さんをはじめ素晴らしい方々に楽曲を書いていただきながら、本当にたくさんのことを乗り越えてきたという想いはありますね。

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