【インタビュー】映画『KIRI -「職業・殺し屋。」外伝-』主演!釈由美子インタビュー

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2015年06月19日

主演・釈由美子×監督・坂本浩一の映画『KIRI -「職業・殺し屋。」外伝-』が6月20日(土)に公開。本作で「修羅雪姫」以来、14年ぶりにアクション映画に挑戦した釈さんに作品への想いや撮影中のエピソードを聞きました。

悲哀感があるような切ないヒロインにしたかった

――「修羅雪姫」以来、14年ぶりのアクション映画ですが、このお話を聞いたときの感想は?

デビューが「修羅雪姫」で、14年ぶりに巡り巡ってアクションに戻ってこれたということで、感慨深いものがありました。3年前からプライベートで古武道のお稽古をしていて、いつかアクションで披露できたらいいなって思っていたのですごくうれしかったです。

――釈さんが演じた女暗殺者キリというキャラクターについて教えてください。

キリは幼いころに両親を殺されて、プロの暗殺者のグループに連れ去られて暗殺者として育てられます。自分が背負った宿命を受け入れながらも、家族同然に愛していた妹のような女性とその母親の仇を取るために、それだけを自分の生きがいとして犯人捜しをしているんです。
キリは一見クールビューティーですごく強そうなんですけれども、目の奥が悲しみや孤独であふれていて、悲哀感があるような切ないヒロインにしたくて、その点を意識して演じました。

――陰のある悲しい雰囲気が、釈さんが以前演じられた「修羅雪姫」の雪や「スカイハイ」のイズコと重なりました。

私はグラビアでデビューして、バラエティに出たりして“釈ちゃん”って言われるような姿って、すごく明るい天真爛漫なイメージだと思うんです。でも、たぶん監督さんやプロデューサーさんは、私のそれとは少し違う部分っていうのを見抜いてキャスティングしてくれているんだなっていうくらい、「修羅雪姫」「スカイハイ」「ゴジラ×メカゴジラ」「相棒 -劇場版III-」と、陰のある役柄が多いですね。

――アクションに定評がある坂本浩一監督の現場はいかがでしたか。

クランクインする前に、坂本監督が私の古武道の道場に足を運んでくださったんです。何も言わないでずっと私の稽古風景をご覧になって、私が普段どんな訓練をしているか見た上でそれをアクションに入れてくださったようです。
今回は小刀を使ったアクションが多かったので、割と接近戦が多かったんです。受け身でつかんで、払ってまた入れてって、クルクルクルって回るようなアクションはやったことがなかったので、それを体で覚えるまでちょっと時間がかかりました。でも、やり始めたらすごく面白かったです。

――キリと戦う相手役を演じた久保田悠来さん、水崎綾女さん、小宮有紗さんら共演者の方々は、戦隊ものでアクションを経験された方たちでしたね。

皆さんプロのスタントマンではないのに、すごく動けて。特に女優さんたちが回し蹴りができたりしてすごいなって思いました。すごく助けられた部分がありましたね。

「これ、スポーツジムの広告じゃない?」って(笑)

――本作で釈さんは見事な肉体美を披露されていますね。タイトなボディスーツ姿がかっこいいんですよね。

ピタッピタですからね(笑)。クランクインする前に特注で作っていただいたんです。ミリ単位で採寸していただいて。素肌に1枚着ているだけっていう感じだったので、真冬の撮影だったのに、中に防寒着も仕込めないし、どうしようって。お昼食べたらおなか出るなとか、そういう緊張感もありました(笑)。
でも、撮影がハートだったので、クランクアップのころにはどんどん勝手に体が絞られて。最初からガーっとアクションシーンを撮ったので、すっごい体がマッチョになってて、腕とか全然色気ないなって自分では思いました。

――実戦で絞られただけあって、魅せるためのシェイプアップというよりは、使うための筋肉、という感じですよね。だからこそ、女暗殺者というキャラクターやアクションに説得力がありました。

実はクランクインの前に地方の舞台のお仕事があって、古武道のお稽古があまりできなかったんです。そんな状態でクランクインしたから、ヘナチョコ暗殺者に見えたらいやだなと思ったんですけど、現場があまりにも過酷で(笑)。そこで自分の中でも殺気立ってきて、一気に筋肉が付いたっていう感じでしたね。
余談ですけど、クランクアップしたすぐ後に、久しぶりの水着のグラビアのお仕事があったんです。グラビアでは女性らしい柔らかいラインを出したりという、魅せる体っていうのをやっていたんですけど、そのときは初めて腹筋がタテだけじゃなくてヨコにも割れてたんです(笑)。

――完全にアスリート(笑)。

スタッフも「これ、スポーツジムの広告じゃない?」って(笑)。そのころはすっかり色気のない体になっていましたね。

――3年前から始められたという古武道と出会ったきっかけはなんだったんですか?

10代のころは、勉強もしていない状態でアクションのお仕事をやらせていただいていたんです。その後、しばらくアクションから離れていて、久しぶりに時代劇のお仕事で“くノ一”の役をやったんです。そこで殺陣をやったときにぜんぜん動けなくて。周りの人からは「まあ女性だから仕方ないよ」って言われたんですけど、それが悔しくて悔しくて。そのときに共演した方が習っていらして、誘っていただいたんです。やり始めたら本当に奥が深くて…黒帯まで取りました。

――黒帯…古武道と聞いて、合気道のようなものを想像していたのですが、もっと幅広いそうですね?

居合もあるし、木刀を使った殺陣のようなものもあります。黒帯まで取ったので、基本は体に染みついていて、道場にお稽古にいけないときは家で訓練しています。
劇中にトレーニングシーンがあるんですが、まるごとおかませだったんです。普通だったら打ち合わせをして、カメラテストをしながらいろいろ型をつけてもらうんですけど、あのシーンのときはカメラがセッティングされて「さあ、どうぞ」って言われて(笑)。「いつもやってるとおりでいいから」って。
芸は身を助くじゃないけど、コツコツをやってきたことが生かせるときがきてよかったと思っています。

前に進もうとするパワーをもらえるような作品にしたかった

――女優としてのキャリアを積み重ね、さらに古武道を学ばれたりして、演じる上でそれ以前と比べて変わった部分はありますか?

「修羅雪姫」は初映画だったので、右も左も分からない、これが映画なのか…っていう状態で。役柄にどっぷりはまっていたので、山で「そこから転がって」とかほぼほぼ自分でやったんです。普通にガーンって落っこちたりとか。今だったら「危ないですよ!」とかなっちゃいますよね。
あのころの無我夢中さもよかったけど、いろんな経験を積んだからこそ“人間力”として出てくるものもあると思うんです。「修羅雪姫」を見てくださった方が“雪”っていうキャラクターを覚えてくれていたら、彼女がすごく成長した女性が今回の“キリ”っていうくらいシンクロしている部分はあると思います。

――特に印象に残っているシーンはありますか?

やっぱりクライマックスの戦いですね。撮影が長かったですし、記憶がなくなるくらいずーっと闘ってました。

――すごく単純な質問ですが、アクションは好きですか?

好きじゃなきゃできないですよね、あんなハードなこと。でも、やってる最中は「もう2度とやりたくない」「もう無理」って思うんですけど(笑)。

――そんなハードなアクションの大変さもありますが、キリという重い宿命を背負った役柄を演じる難しさもあったと思うのですが、役に入り込むスイッチみたいなものはあるんですか?

ありますね。台本を読み込んで、衣装を着て、メイクをしてもらったら“そうなっている”っていう感じです。キリのような役柄のほうがピュンっと入れますね。
でも逆に入り込みすぎて、カットがかかっても自分に戻ってこれなくなっていることがあるらしいんです。休憩中にストーブに当たっていたときに、共演者の方たちが近寄ってこなくて。あとで聞いたら、話しかけにくいオーラが出ていたらしいです(笑)。

――その状態から普段の釈さんに戻るきっかけは…ブログでもおなじみのワンちゃんたちですか?

ワンちゃんと山ですね。
いま登山にはまっているので、時間があると行っちゃいます。けっこうガチな山登り。
NHKの山登りの番組(『実践!にっぽん百名山』)に出演したのがきっかけで始めたんです。
最初はスタジオのMCだったんですけど、実際の山登りを知らない人間じゃその良さが伝えられないなと思って、試しに行ってみたらすっかりはまっちゃって。

――またもやストイックぶりを発揮してますね。

私は1年のうちで初夏の山が一番好きなんです。新緑がバーっと芽吹くあの瞬間はちょっとしかなくて、あのエネルギーで1年分充電できるんじゃないかってくらい、本当に大好きで。
でも3日くらい山に籠るので、だんだん犬たちの顔が浮かんできて。それで家に戻ると「ごめんねー」って言うんですけど、すぐに「また山が呼んでる」みたいな(笑)。

――それでは最後に本作の見どころをお願いします。

坂本監督の迫力のあるアクションが見どころになっています。また、女性が主役のアクション映画ですが、ただ強いとかかっこいいだけでなく、なにか悲哀感とか背負っているものがあって、見ている人も胸の奥が苦しくなるような、でも最終的にはそれでも前に進もうとするパワーをもらえるような作品にしたかったんです。アクションファンだけではなく、女性にも見ていただけたらうれしいです。

 

PROFILE

釈由美子
しゃく・ゆみこ●1978年6月12日生まれ。東京都出身。総合古武道「正伝十二騎神道流」道士初段。

1997年「週刊ヤングマガジン」のミスキャンパスグランプリに選ばれ芸能界デビュー。2001年初主演映画『修羅雪姫』でキレのあるアクションを披露し話題を呼ぶ。主な出演作品に、TVドラマ『7人の女弁護士』『スカイハイ』『ヒミツの花園』、映画『ゴジラ対メカゴジラ』『相棒 劇場版Ⅲ』など。

 

作品情報

映画『KIRI -「職業・殺し屋。」外伝-』
2015年6月20日(土)公開

出演:
釈由美子
久保田悠来 文音 水崎綾女 小宮有紗 荒井敦史 月岡鈴 大西結花 倉田保昭

監督・アクション監督:坂本浩一
原案:西川秀明「職業・殺し屋。」(白泉社「ヤングアニマル」連載)
主題歌:lecca「Shine」(cutting edge)
脚本:伊藤秀裕
脚本協力:江良至
音楽:MOKU 岡出莉菜
製作・配給:東映ビデオ エクセレントフィルムズ

公式サイト(http://kiri-movie.com/

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