BLUE ENCOUNTインタビュー「悩んでいたり、不安を持っていたりする今だからこそ、僕たちの音楽が必要なはず」

特集・インタビュー
2021年09月11日

ダイレクトに感情をぶつける熱のこもったパフォーマンスが人気の4人組ロックバンド・BLUE ENCOUNT。彼らの新曲「囮囚」は唐沢寿明が主演を務めるドラマ『ボイスⅡ 110緊急指令室』(日本テレビ系)の主題歌として書き下ろされ、疾走感のある曲調が作品の世界観をより一層広げていると話題に。インタビューでは楽曲の製作経緯についてはもちろん、タイトルにちなんだ質問なども伺いました。

◆まずは本作の制作経緯からお聞かせください。

田邊駿一(Vo. &Gt.):ドラマ主題歌のお話を頂いたのが春ごろだったので、ワンマン(「BLUE ENCOUNT ∼Q.E.D :INITIALIZE∼」)終わりからすぐにスタジオにこもり始めました。いろいろとこねたものをメンバーとスタッフ一同に聴いてもらって、「VIVA LA ROCK 2021」の本番終わりにどの曲にするかという会議をして。5月から始まったツアーと並行してレコーディング作業を行っていきました。

◆ものすごいスピード感ですね。

田邊:はい。それはBLUE ENCOUNTがモットーとしているところでもありますね。短期集中的ではありましたが、一曲入魂で作らせていただいた曲です。

◆どのようなイメージで書き下ろされたのでしょうか?

田邊:プロデューサーさんから今回の作品のテーマをお伺いして。「今作は“善”と“悪”のお話。善の裏には必ず悪があるという、表裏一体の部分を表現したい」と言われたんです。それって、実は僕自身がここ一年くらいの間で考えていたことでもあって。何が善で何が悪なのか、何が正しいのか分からなくなっていた今の僕が思うことと、ドラマが掲げるテーマが偶然合致していた。そこは歌詞にも反映されていて、主題歌でありながら、自分自身のことについて書けた部分も多かったです。

◆前作に引き続き主題歌を手掛けるという点で、意識された共通性はありますか?

田邊:全くなかったですね。「バッドパラドックス」(ドラマ『ボイス 110緊急指令室』の主題歌)の続編を作る気はなかったので、いつもどおり、その時思っていたことを形にしました。

◆デモを聴いた時の印象は?

辻村勇太(Ba.):候補は3曲あったんです。全部色が違って、僕はどれも好きでした。どれがタイアップになっても後悔のない曲たちだったし、まだ仮の歌詞ではありましたけど、サビはしっかりブルエンっぽさがあって。

高村佳秀(Dr.):「囮囚」は初期のデモでは、もうちょっとクールな感じに仕上がっていたんです。ドラマ主題歌であることはもちろんですが、今後やっていく僕らの音楽性をどう示していくかというのも形にしたいなと思っていたので、より自分たちらしく、かつドラマによく合う曲にしようと。

江口雄也(Gt.):もともとはもう少し爽やかなテイストを土台にしていたんです。でも曲作りが進むにつれて、ちょっとずつ今のダークな形になっていって…。

田邊:ポップスから、徐々に化けていったんだよね。

江口:そう。タイトルは最後に決めたんですが、曲ができていく過程が“バケモノ”になっていく様そのもので面白かったですね。

◆なぜ「囮囚」(読み:ばけもの)というタイトルに?

田邊:今作のボスキャラである白塗り野郎は、善だった人を悪にしていき、弱った人の心を毒していくのですが、それはドラマに限った話じゃないんですよね。僕らの日常でも、誰かが誰かを言葉で傷つけたり、誹謗中傷で人を殺めたりしている。その人にとっては正義で、善だと思っていたことが、他人にとっては悪になっていることもあるし、弱さに付け込まれて、気づけば自分が化け物になっていることもあるんだよと。

◆“囮”と“囚”を組み合わせたタイトル表記も話題です。

田邊:文字の二つは、もともと別個で歌詞に入っていたんです。囮にとらわれて、弱い心に付け込まれ、化け物になっている…という方程式ができた時に、二つを掛け合わせた造語を作ってみようと考えて。化け物自体もまた、足枷や首輪でつながれて囲われてるなと。これに気づいた時、結局世の中は堂々巡りなんだということがこの文字で表せるのではないかと思いました。

◆いろんな考察ができそうな。

田邊:大歓迎です! 余白を持って曲を作っているので、そこに対して聴いてくれた方が気持ちを乗せてくれるのはありがたいです。どれも絶対正解だと思うし。本当にこの時期に、よくこの言葉に出会ったなという感じです。

◆歌詞にもたくさん当て字が散りばめられていますね。

田邊:今回の楽曲に限らず、僕らは結構当て字で遊んでいて。洋楽の和訳が人によっていろんな解釈を持つように、日本詞でもそういうことができればと思ってインディーズ時代からやってきたことではあります。ただ、今回は特にしつこいくらい当て字をいれてやろうかなと。いろんな憶測も飛ばしてもらいたかったので、耳で聴こえてくる情報プラス、歌詞として見る視覚の情報を別にしたいなと思いました。このサブスク時代、耳で聴くだけになっているところをいったん立ち止まって、言葉として“見る”も合わせた二つで完結する世界観を作りたかったんです。

◆完成した「囮囚」は『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL20>21』でライブ初披露となりましたね。

田邊:みんなもう、ものすごく聞き耳を立ててくれましたね。めちゃくちゃ盛り上がってくれていた中で「新曲やります!」って言った瞬間に空気がガラッと変わって。

辻村:すごかった。あれは今しか味わえない体感でした。今後、どうお客さんがノッていってくれるんだろうね。

田邊:気になるよね。これからのツアーで育てていけたらいいなと思います。

辻村:きっとお客さんが一緒にこの曲を育ててくれるはず。楽しみです。

◆コロナ禍の影響を受け、楽曲制作のスタイルに変化はありましたか?

田邊:影響が出始めた昨年の時点では、まず4人で集まること自体ができませんでした。

辻村:昨年リリースしたアルバム「Q.E.D」のうち何曲かは、データでのやりとりをして膨らませて、緊急事態宣言が解除されてからようやく集まって作れたものもあります。

田邊:「囮囚」に関してもスタジオでの作業はほとんどなくて、僕は辻村の家で仮レコーディングをやりました。僕のアイデアを辻村がDTMでいろいろやってくれて、仮歌を歌って…近所迷惑になってしまったのではないかと(汗)。

辻村:やっぱ、声デカいなと思った(笑)。俺、家であの声量出したことないもん!

田邊:俺も久々に人の家であんなに歌ったよ(笑)。今までならスタジオにずっとこもって、僕がたたき台を作って、それをみんなと合わせるって感じだったんですけど、今回はおのおのでやりつつ、柔軟に合わせていったからこそのサウンドの強さになったと思います。どっちも良さがありますよね。こういう今っぽい作り方って正直言うと抵抗があったんですけど、今回僕らにもできるんだなということが分かりました。

辻村:考えすぎるのは良くないなってことはある程度ありますね。データを渡されてフレーズを聴けたほうが、こうやりたいっていう意図が見えたりするし。

高村:対面できない分、読み取れるよね。「なるほど、そういうことをやりたいんだ!」って。

辻村:「じゃあ、2サビはこう来るかな?」っていうのを予想できたりね(笑)。昔はよく深夜練で、何度も何度も同じ曲をやったりしていたんですけど…結果、あんまりよくなかったこともあったんです。次の日に聴いたらあんま印象に残ってなかったり、1か月たてばライブでやらなくなったり。直感的に見えたビジョンを勢いで合致させたほうが良くなることもあるし、それでできた曲のほうがブルエンっぽいとお客さんが言ってくれるんですよね。結果的に、BLUE ENCOUNTの音楽性ややり方は、段々と時代にマッチしてきているんだろうなとは思いました。

◆ちなみに、ドラマ『ボイスⅡ 110緊急指令室』はチェックされていらっしゃいますか?

全員:もちろんです!

田邊:ほんと手に汗握る展開ですよね。小学校からずっとテレビドラマを見続けてきた人間なんですけど、久々に味わう痛快さでした。あれだけリアルな血の飛び散り方は、結構タブーに挑んでるんではないでしょうか。そして音がすごいんですよね。生々しい! どこからサンプル拾ってるんだろ?

江口:4話の最後(※取材時の最新話)、ヤバかったよね。「おいおいおい!」って。

田邊:あの時の「囮囚」のかかり方、めっちゃ良くなかった!?

高村:そう! 今までで一番鳥肌立った。

江口:だって、ラストに至るまでの話の流れが最高だったもん。

◆皆さんも、曲のタイミングが気になるんですね。

高村:気になります! 兄弟からも毎回「今日もよかったよ!」とか連絡来ますもん。

田邊:ソムリエみたい(笑)。

辻村:俺らが決めてるわけじゃないのにね(笑)。

田邊:まだ4話なのに、こんなに熱いなんて。この先どんな展開なのか、めちゃくちゃ楽しみです。

江口:実はこの間、ドラマの撮影現場に表敬訪問させていただいた時に、先のシーンの内容をちょっとだけ知っちゃって。

高村:いやぁ、怖かったね。「この先、こうなるのか!」って。

田邊:唐沢(寿明)さんとは前作の打ち上げでお会いさせていただいて以来で。ものすごく和やかで優しい方という印象だったのですが、現場では完全に樋口刑事モード。役に入っているのが伝わってきて思わず圧倒されてしまって…。でも合間にお話させていただいた時には、以前と変わらない優しい唐沢さんだったのでホッとしました(笑)。

辻村:コロナ禍でライブを完全な状態でやれていないことを、すごく心配してくださったんです。そういう普段の温かいお人柄が、樋口刑事の役柄にもにじみ出ている気がします。

◆では楽曲のテーマにちなんで、メンバー内で最も正義感の強い人を教えてください。

辻村:「正義」はさ、田邊っちじゃないの?

田邊:そう? 俺なんかヒールでしかないじゃん?

高村:でも、正義一貫な人っていないと思うんですよね。

江口:うん。少なくともうちにはいない(笑)。

高村:正義という言葉を無理やり使うなら、正義が見えている後ろでダークな部分が同時に見えている感覚なんですよ。僕も含めてなんですけど。

辻村:全員アクが強いですからね(笑)。

高村:だからこそ、僕はヒロアカ(『僕のヒーローアカデミア』)のデク(緑谷出久)みたいなタイプに憧れたりするんですけど。

田邊:すごい、深い話になった気がする(笑)。

◆では、“悪”ノリな人は?

田邊:これはもう、僕ですね。

辻村:自己申告(笑)。

高村:ダントツですね。

田邊:悪ノリができないと曲が書けないというか。常に面白いことを探しています。

高村:それでいいと思うよ。いろんな色を知ってないと、曲は作っていけなくなっちゃうから。

田邊:ありがと…なんか、すごいフォローしてくれるじゃん(笑)。

江口:アーティストって悪ノリというか、どこかしらネジが外れている人のほうが、ある意味魅力的だったりするんですよね。

田邊:メンバーの誰しも、ふとした瞬間に突然、何かに引っかかる感覚を持っている気がする。「ん? どうした?」っていうタイミングがあるんですよ。

辻村:そう。江口は飯食うの遅いしね。

高村:それ、関係ある!?

田邊:だってさ、あんなに食いたいって言ってたアツアツご飯を半分くらい食べてちょっと休憩しだすのは引っかからない?

江口:ラーメンだけは別なんだけどね。

田邊:なぜかラーメンだけはおいしく食おうとするんですよ! ほかのご飯もアツアツのうちに食べてよ!

辻村:弁当とかもすごいタイミングで一旦残すんだよね。休憩挟んで、時間たってからまた食べたりしてる。

高村:ラスト一口だけとかね。

田邊:一番いいところじゃん!

辻村:…っていう感じで、ネジが外れています(笑)。

◆今、皆さんの悪ノリが垣間見られました(笑)。さて、1027日(水)には自身初となった横浜アリーナワンマン公演を収録したライブDVD&Blu-ray「『BLUE ENCOUNT Q.E.D : INITIALIZE~』2021.04.18 at YOKOHAMA ARENA」の発売も控えています。今、当時を振り返ってみて思うことは?

田邊:これは本当に、もう…楽しかったです。ひたすら楽しかったよね?

江口:うん。二日間とも、純粋な気持ちでステージに立っていましたね。あまり余計なこと考えずに、等身大で、最初から最後までライブができた日だった。お客さんの反応も含め、いろんなことを素直に受け止められて、いろんなことを発信できた公演でした。

高村:初のアリーナ2daysだったけど、だからこそ余裕があったかもしれない。二日間できたということを言い訳にするつもりはないんですけど、もし一日だけだったら気合が空回りしていたような気がする。

田邊:そうだね。

高村:いい意味で力が抜けた状態で、100%の力を発揮させてくれたんだと思います。

辻村:ライブは生きてるなって実感しますし、僕ら自身が背負いすぎなかったのが強かったのかも。時勢柄、来ているお客さんはいろんなものを背負って来ている。その状況だと、俺らが背負わないほうが、「ここでは背負わなくていいんだ」って思ってもらえるんだろうなって思ったんです。何も考えずに音を楽しむっていう、すごくシンプルなことをしようと。こういうご時世だからこそ、音楽って本来はそういう楽しみ方をするものなんだと思います。BLUE ENCOUNTは、そういうシンプルなことができるバンドだと思っている。だから単純に楽しめた。前ほど「ここで何かしなきゃ」って概念がない、いい意味でクリアな状態でした。横アリに具体的なイメージを持って臨んだわけではなくて、その場その場で楽しんで、その場のグルーヴ感で切り返してやっていったから。

◆世の中の状況が変わったからこそ、変わらないものが求められている気もします。

辻村:きっと、お客さんもどう楽しんでいいのか分からなかったと思うんです。でも声は出せないけど、体で音楽に乗ってくれている。お客さんの口元は見えないけど、楽しんでくれていることは僕らにも伝わっているよってことを伝えたかったですし。「マスクしてるから楽しめないだろう」っていう概念が本当に嫌で。

田邊:そうだよね。

辻村:そういうしがらみが取れて、真っすぐに思いを放つことができた二日間だったと思います。

◆現在もツアー真っ最中。最後に全国で心待ちにしているファンの方へのメッセージをお願いします。

辻村:悩んでいたり、不安を持っていたりする今だからこそBLUE ENCOUNTの音楽が必要なはず。ぜひ、ライブに来て楽しんでいってもらえればと思っています。

高村:既に延期になってしまったライブもあるし、この先も中止になってしまう可能性もぬぐい切れない。純粋に、ライブが無事にできることをひたすら祈ってます。やるからには最高のものを届けたいので。来てくれる人にとっては、きっと会場に来るまでいろいろと悩ませてしまうだろうけど、本当に来てよかったって思いながら帰れるように僕らは準備をしていくだけ。しっかり準備して、ツアーに臨みたいです。

田邊:僕たちは、しんどい思いを抱えてライブに来てくれる人に対して「ここから連れ出せるように手を引っ張っていくよ!」っていうことをしたくない。それよりも「分かる! 俺らも同じようにきついから、はい上がれるように一緒に頑張ってみない?」っていうのがBLUE ENCOUNTなんです。今は自分の親でさえも会えない日々が続いているし、いつ会えるか分からない。でも会えないことを憂うんじゃなくて、会えた時の喜びをどう分かち合うかっていうのを考えながら音楽をやっています。いろんなものをしっかり守った上で、またみんなで会えたらいいな。会えた時に後悔させないよう、日々躍動していますので、ぜひ遊びに来てください!

江口:コロナ禍の影響で、ライブに行かないことが習慣化しつつありますが…やっぱり、僕たちはずっと、「バンドって楽しい!」「ライブって楽しい!」ってことを伝えていきたいです。僕らの元を離れてしまった人にも、いつか戻ってきてもらえるように、自分たち自身が絶えず音を鳴らしていきたいと思っています。

PROFILE

BLUE ENCOUNT
●ぶるー・えんかうんと…田邊駿一(Vo. &Gt.)、辻村勇太(Ba.)、江口雄也(Gt.)、高村佳秀(Dr.)からなる熊本発、都内在住の4人組。熱く激しくオーディエンスと一体になり、ダイレクトに感情をぶつける熱血なパフォーマンスが話題のエモーショナルロックバンド。20149月にEPTIMELESS ROOKIE」でメジャーデビュー。

リリース情報

ニューシングル
「囮囚」
現在発売中

●photo/干川 修 text/桜居 和

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2021年9月18日(土)23:59