古川琴音が明かす役作り秘話「玲奈のファッションは武装だと思った」『ペンディングトレイン』インタビュー

特集・インタビュー
2023年05月19日
『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』古川琴音©TBS

山田裕貴さん主演の金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS系 毎週金曜 午後10時~10時54分)に出演中の古川琴音さんにインタビュー。本作は、偶然乗り合わせた電車が未来の荒廃した世界にワープし、何もかも遮断され“ペンディング”された“非日常”の世界へと放り出された乗客たちが、共にサバイバル生活を生き抜く姿を描くヒューマンエンターテインメント。自分本位なわがままな振る舞いで和を乱してしまうネイリストの渡部玲奈を演じる古川さんに、役作りや印象に残っているシーンなどを聞きました。

◆古川さんから見た本作の魅力はどこでしょうか?

ジャンルをくくれないところが一番面白いなと思っていて、SFでもあるし、アドベンチャーでもラブストーリーでもヒューマンドラマでもある。かと言って、その全部を詰め込んだという感じではなくて、それが自然に物語の中に存在しているというのが一番の魅力かなと思います。

◆ここまで玲奈というキャラクターを演じてみていかがですか?

自由奔放でちょっと非常識だったり、協調性がなかったり、思い切った行動をするのが楽しくもあって。ただ周りにうまくなじめなかったり、そういう孤独みたいなものに若干共感するような、玲奈の寂しい心を感じて、悲しくなったり。結構気持ちがジェットコースターみたいな感じで、でも総じて演じていて楽しいです。

◆寂しさも共感しつつも楽しいが勝っているという感じですか?

そうですね。結構自分の欲望のままに動いているだけなので、玲奈本人としては悪気がないと思っているんです。「この人に何か意地悪してやろう」とか、そういう悪い気持ちがあるわけじゃなくて、本当に「これ食べたい」「あれ、欲しい」という純粋な感情で動いているので楽しいです。

◆玲奈を演じるに当たって、心がけていることはありますか?

一番は悪気がないこと。そして玲奈の心はどこにあるんだろうというのは意識するようにしています。派手なアクションや強い言葉にキャラクターが引っ張られがちなのですが、そういう部分ではなくて玲奈が本心で思っている弱い部分というのはどこで出せるかなと考えながらやっています。

◆古川さんの方からご提案された玲奈の設定はありますか?

監督と衣装のことについてよく話し合いました。私は玲奈にとってファッションは武装だと思っていたので、“自分はこういう人間です”というのを玲奈は強く発信していかないとたぶん玲奈ではないなという話を監督としていて、その玲奈が持つ毒の部分が見える衣装がいいと思ったんです。なので、「じゃあ大胆に肌を見せてみよう」とか、「アクセサリーをもっとたくさんつけてパンクの精神が見えるようにしよう」とか。2回目の衣装合わせで玲奈の性格と内面、外面がマッチするような衣装が決まったという感じです。

『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』©TBS

◆玲奈を演じて得たものはありますか?

今回、声のトーンをいつもより変えてみることにちょっとチャレンジしてみました。ただ声のトーンを変えるといつもの自分の振れ幅で話していないので、なかなか感情表現が難しいですね。あとは、玲奈自身の猪突猛進というか、考えるよりも先に行動するところから、「なんでもいいからやってみよう」といったパワーを自然ともらっているような気がします。

◆古川さんご自身は、どういうタイプですか?

半々なんですよね。どっちにも振り切れてないんですけれど、例えば今この仕事をしてるのは衝動の部分だと思っていて、衝動で今の事務所に応募して、この仕事をしていると思うのですが、ささいなことに臆病でもあって、今このタイミングでこれをしていいんだろうかと考えすぎて動けなくなることもたくさんあるので半々かなと思います。

◆直哉を演じる山田さん、優斗を演じる赤楚衛二さん、紗枝を演じる上白石萌歌さんの印象を教えてください。

皆さん、それぞれキャラクターと重なる部分があると思っていて、山田さんは直哉そのものに、私は見えています。責任感が強い方で、直哉と違う部分を言うなら、直哉が引いて見ている人だとしたら、山田さんは中に入ってみんなを引っ張ってくれる方。でも、直哉は自分のひと言がどうみんなに影響するかを考えていて、たまに厳しい言葉とかもかけられる、そういう強さを持っているんです。それは山田さん自身にもそういうみんなのためを思う優しさと、それを伝えられる強さがある方だなと思いました。

赤楚君はお会いするまでは正義の人のような役をやっていらっしゃる印象があったので、大人しくてクールな方なのかなと思っていたのですが、面白くておちゃめな人でした。みんなにイタズラをしかけたりしていて先日、「玲奈、これあげる」と言われてパッと出したのが本当のカエルだったんですよ(笑)。そういったところはとてもチャーミングで、役とギャップを感じるところです。

萌歌ちゃんは紗枝みたいな無条件の優しさというか、愛情深さがある人。毎日撮影をしていて、大変なスケジュールの中、体力を削りながらやっていると思うのですが、それを見せずに周りの人をすごく気遣ってくれるんです。「昨日寝れた?」とか、「ちゃんとご飯食べてね」とか、そういう声かけを積極的にしてくれる優しい人だなと思います。

◆この役者さんのお芝居が台本を読んだときと違ったとか、驚かされたみたいなシーンはありましたか?

1話の山田さん演じる直哉が崖からはい上がってきて、「疲れた」と涙を流すシーン。ただ疲れたというそのひと言に私は台本を読んだときはそこまで深く読めていなかったので、崖から上がっても、このいろんな困難に疲れたんだろうくらいにしか受け取っていなかったんです。ですが、直哉の過去の部分がにじみ出ていたというか、弟のことだったり、ペンディングされる前に自分が抱えてきたものをすごく感じて切なくなりました。

◆俳優としての山田さんの魅力はどの辺りにありますか?

山田さんのシーンが始まると空気がガラッと変わるところです。空気が締まるといいますか、もちろん直哉の言葉だったり、直哉のシーンでの役割ということもあるとは思いますが、それ以上に山田さん自身が伝えたいものが直哉に向かってきている感じがするんです。なので、より説得力があるというか、山田さんを通した直哉の言葉を聞いて、みんなのお芝居が動き出すような、そういう力を持っていらっしゃるのが素晴らしいなと思います。

◆これまで放送された中で印象深いシーンはありますか?

3話の撮影が全体的に楽しかったです。というのも1話2話は、起承転結の起の部分に当たるので緊迫感のあるシーンが多かったんですが、3話になってみんなが生活に目を向け始めて、車内を豊かにするために、お皿を作ったりとか寝るスペースを作ったりするところは、常に絶望はあるんですけど、目先の楽しみというか、そういうものを感じられたシーンがたくさんあったので、とても和気あいあいとして楽しかったですね。

◆サバイバルで印象に残っていることは?

伊豆大島ロケで、崖の上で撮影したのですが、その撮影場所の一番近くに車がつけられなかったので、車から降りて片道40分の山を切り抜けて、みんなで崖に行ったことが「これから本当にサバイバルに入るんだ」なと、このドラマにある意味歓迎されたような、これからこういう世界が始まるんだぞとメッセージをもらったような気がして、すごく印象に残ってます。

◆古川さんの元に反響は届いていますか?

90歳になる祖母が北海道にいるんですが、『ペンディングトレイン』を毎週すごく楽しんで見てくれているみたいです。

◆『どうする家康』の撮影も並行してやっているとのことですが、演じ分ける難しさや切り替えのコツなどがあれば教えていただきたいです。

声の出し方から言葉遣いといったギアが全く違うので、切り替えで難しいと思ったことはあまりないですね。各々のヘアメークと衣装を着たときに自然と切り替わっていると思います。

◆女優として5年目ですが、ご自身の中で女優業への向き合い方の変化はありますか?

まだ分からないですね。もう5年もやってきたんだっていう驚きの方が強いです。何が変わったかと言われると、まだまだできていないことの方が多いですし、もっともっと自分自身と役をつなげるというか、役と自分を一体化させたいのですが、まだまだそこにまでに至ってないかなと思っています。

◆演じることの楽しさや難しさみたいなのものに変化はありますか?

いいことなのか悪いことなのか、まだ分からないですけれど、ちょっと自分自身を客観的に見られるようになっているような気がします。そうすると実際にお芝居したときに、心でカバーできないことを形に逃げてしまうような、計算で働くようになったというのが最近の悩みではありました。なので、台本の読み込みは昔よりもどんどん深くしていきたいですし、お芝居をやってるときは初心というか自分に制限をかけたりとか、何かに依存をしたりとかせずにできるのがいいなと思っています。

◆5話の見どころを教えてください。

一難去ってまた一難じゃないですけど、また新しいニュースがたくさん出てきます。その中でも玲奈の内面がよく見える回になっていると思っています。いつも強気な玲奈が本当は何を感じているんだろうというものを視聴者の皆さんにも感じていただけたらうれしいですし、その玲奈の柔らかい部分に、共感する人がたくさんいると思うので、そこが届いたらうれしいです。

『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』©TBS

PROFILE

古川琴音
●ふるかわ・ことね…1996年10月25日生まれ。神奈川県出身。A型。

番組情報

金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』
TBS系
毎週金曜 午後10時~10時54分

<配信>
Paravi:各話の初回放送直後配信
Netflix:世界配信 日本国内では、4月22日(土)より配信開始
その後、海外にて順次配信予定

<キャスト>
山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、杉本哲太、松雪泰子 ほか

<スタッフ>
脚本:金子ありさ(『恋はつづくよどこまでも』『着飾る恋には理由があって』ほか)
主題歌:Official髭男dism「TATTOO」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝

番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
番組公式Twitter:@p_train823_tbs
番組公式Instagram:@p_train823_tbs
番組公式TikTok:@p_train823_tbs

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