「自己肯定感が高まりました」岡奈なな子がYouTubeでの配信を始めて変わったこと

特集・インタビュー
2023年12月06日
岡奈なな子
岡奈なな子

築50年の祖母の家での、昭和レトロな雰囲気や飾らない日常動画が人気を博す岡奈なな子。彼女はYouTubeにて、日常を配信する「岡奈なな子の日常short movie」と映画紹介チャンネル「岡奈なな子の映画紹介」を展開している。そんな岡奈なな子にとって、「YouTube」「映画」とは。それぞれのチャンネルを始めるきっかけなどを含め、これまでの活動を振り返ってもらった。


◆本日はよろしくお願いします。まず、そもそも日常を配信するYouTubeを始めようと思ったきっかけを教えてください。

私、東京に上京して仕事をしていたのですが、人間関係の悩みがあって辞めちゃって。それからしばらくニートだったんです。趣味も特になかったので、本当に何もすることがなくて(笑)。そんなとき、おばあちゃんの家を取り壊すことになったという話を聞いたんです。それなら、おばあちゃんの家に引っ越して、記録を残すがてら映像でも撮ろうかなと思ったのが、「岡奈なな子の日常short movie」を始めるきっかけでした。どうせやることもないから、日記がてらやってみようかなと。

◆そうだったんですね。

私、いちばん好きなものが映画なのですが、そういうことを配信で最初からやっちゃうと、何かとこだわっちゃって、逆に続かない気がして。それなら、2番目に好きな料理をメインにしたら、ある程度妥協できて、続くかなと思ったんです。それで今の形になりました。

◆東京ではどんなお仕事を?

ミュージックビデオの映像制作に関わっていました。そこで動画編集のスキルが多少は身に付いたんです。

◆もともとYouTubeでの配信に興味はあった?

全くなくて(笑)。正直、配信できるなら何でもよくて、YouTubeがいちばん流行っていたっていうくらいの理由しかないんです。そしたら、いつの間にかVlogやAMSRが流行っていって。まさに「岡奈なな子の日常short movie」がそれに近いことをやっていたんですよ。全く意図しないところで、流行りの先駆けになっていました(笑)。

◆「岡奈なな子の日常short movie」の登録者数は61万人。多くの人が楽しみにしているチャンネルになりました。YouTubeを始めてから日常は変化しましたか?

それが、全く変化していなくて。もっと言い寄ってくれる人がいたり、チヤホヤされたりしてもいいと思うんですけど(笑)。もうビックリですよ。ぜんぜん華やかではないです。河川敷を散歩して、ゆったりと過ごす毎日。

◆でも、それが自分には合っていると思っていたり。

しますね。東京にいた頃、EDMがすごく流行っていたんですよ。そのときは友達と「クラブ行こうぜ!」と遊びまくっていました。でも、それが私にはどうも合わなくて。ノリだけの友達って何だろうって思っちゃったんです。当時一緒にクラブへ行っていた友達とは、もう誰とも連絡を取っていません。その場だけでの友達だったのかなと。夕方の特売セールをしているときにスーパーに行く。私には、そういう幸せをかみしめる今の生活のほうが性に合っているんだろうな。

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◆地元にいた友達とは連絡を取っている?

私、地元に友達がいなくて。中学生のとき仲のいい子が1人だけいたんですけど、成人式のときその子から久しぶりに家に電話がかかってきたんです。てっきり「飲みに行こう」って話なのかなと思っていたら、「子供の面倒見ていてくれない?」というお願いだったんですよ。「いや、噓でしょ?」って思いましたよね。普段から遊んでいて、たまたま用事が重なって……とかなら分かりますが、10年近く会っていない友達に、いきなりそんなお願いします(笑)? ショックでした。

◆そんな出来事が……!

そういうこともあって、YouTubeを始めた頃には、もう一匹狼気質になっていたんです。誰とも関わらなくていいやって。

◆それは、家族とも?

距離を取っていましたね。私、4人兄弟の末っ子で、年齢も7歳以上離れているんです。それもあったのか、構ってもらったという記憶があんまりなくて。学校に行きたくないとき、親は「なぜ行けないのか」という理由を聞いてもくれませんでした。東京に上京してからは家族と会う機会も減っていき、より疎遠になっていきましたね。

◆そうだったんですね。

ただ、ネット友達だった女の子と触れ合ってから、私の気持ちがどんどん変わっていきました。ある時、私が見に行くライブのチケットが1枚余っていて、一緒に行く人をSNSで探していたんです。そしたら、そのネット友達の女の子から、久しぶりにDMが飛んできて。しばらくやり取りしているうちに、「青森の実家で動画を撮りに来なよ」って話になったんです。青森ではその子のあたたかさに触れて、すごくほっこりしました。もう誰も信じられないというくらいでしたが、人ってこんなにあったかいんだなと思えたんです。

◆信頼できる人に出会った。

そうですね。中学時代から友達がほとんどいなかったので、付き合い方が分からなかったんだと思います。友達とクラブに行って「テキーラうぇーい」なんてやっていた頃もそうでしたが、深い付き合い方が分からなかったんですよね。そんな気持ちだった私も、彼女と出会って生まれ変わりました。

◆さきほどチヤホヤされることはないというお話でしたが、YouTubeを始めてから気持ちの面では変化しているかもしれないですね。

確かに! YouTubeを始めるまで、人生で1回も「かわいい」なんて言われたことなかったんですよ。ただ、活動を始めてから「かわいい」ってコメントをくれる方がいて。最初は「嘘や」「おちょくるためだろ」と信じていませんでしたが、そういう声が多くなっていくうちに、自己肯定感が高まりました。

◆YouTubeが自己肯定感を高めるきっかけになったんですね。

はい。家族との関係も変化しました。2021年にエッセイ本を書いたのですが、そこに幼少期・思春期の私の心境をつづったんです。そしたら、本を読んだお母さんから「ごめんね」って連絡があって。私も、「言えなくてごめん」と伝えました。改めて思うと、友達付き合いなども含めて、きっと私の精神年齢が低すぎたんですよね。ずっと子供だったんだなと。エッセイ本を書いたことで心の整理がついて、大人になりました。

◆「テキーラうぇーい」ってできるから大人というわけじゃない。

そうなんです。YouTubeをやっていて、いろいろなことが解決しました。

非日常だから好き

岡奈なな子
岡奈なな子

◆岡奈さんは「岡奈なな子の映画紹介」というチャンネルもやっていますよね。先ほど「いちばん好きなものが映画」とお話されていましたが、こちらのチャンネルを始めたきっかけは?

「岡奈なな子の日常short movie」をやっていたら、ある日キングレコードさんから「映画チャンネルやってみませんか?」とお声がけいただいて。先ほども言ったように、いちばん好きだからこその悩みもあったのですが、私のファンの方が映画を見るきっかけになったらいいなと思い、カジュアルな映画紹介動画を始めることになりました。

◆そもそも映画を好きになったきっかけは?

父がB級ホラーやSF映画がすごく好きで。それを見て育ったので漠然と映画というものへの意識は前からあった気がします。自分で映画を見始めたのは、21歳でニートになったとき。知り合いに「今はサブスクで映画を見るのが流行っているんだよ」と言われて。それから配信サービスに登録して、映画を見まくりました。当時は「有名だけど見たことないシリーズ」というテーマを自分のなかで決めて、『エイリアン』や『猿の惑星』などのシリーズを見ていたんです。何で名作と言われているのか、自分の目で確かめようと思って。

◆サブスクがきっかけだったんですね。

そうなんです。「月額数百円でぜんぶ見放題なの!?」って驚きました。便利な時代ですよね。それからしばらく時間が空いて、おばあちゃんの家に引っ越してYouTubeの配信を始めた頃、友達が周りに全くいなくて。だから再び配信サービスに登録して、時間があるときに映画を見ていたんです。そこで一気に見る数が増えました。

◆年間500本は映画を見るとうかがいました。せっかくなので、そんな岡奈さんがオススメするクリスマスシーズンに見たい映画を教えてください!

そうだなぁ。ひとつは「バイオレント・ナイト」(2022年/アメリカ)。主人公がサンタさんなのですが、まさかのアクションクライム作品なんですよ。クリスマスって、めっちゃハッピーって感じがあるじゃないですか。ただね、ちょっとこの作品には悪い人が出てきて……。本作がどういう内容なのかは、ぜひみなさんの目で確かめてください。あとは「ホリデイ」(2006年/アメリカ)。恋がうまくいかないふたりが住む場所を交換するという作品なんです。そこで出会う男性といろいろある、という恋愛映画ですね。キャメロン・ディアスやジュード・ロウが出ています。

◆ぜひ見てみたいと思います! 映画でいえば、今度「ボディ・ホラー」のテーマ「肉体変容」をモチーフにした岡奈さんのグッズが販売されるとお聞きしました。なぜ、「ボディ・ホラー」がお好きになったんですか?

見ている作品がたまたま「ボディ・ホラー」だっただけなんですよね。例えば「TITANE チタン」(2021年/フランス・ベルギー合作)っていう映画があるんですけど、この作品は頭にチタンを埋め込まれた女性が主人公なんです。その反動なのか、ちょっと車に対して異常な執着を抱くんですよ。すごく過激ですが、その映画は昨年見た中ではトップ3に入るくらい好きで。それが「ボディ・ホラー」というジャンルだったんです。こういう作品って、非日常じゃないですか。だから好きなんだと思います。ジェットコースターと一緒ですね。

◆非日常を映画で体感したい。

そうですね。どうやって生きていたらそういう作品を作ろうと思えるのか、興味があります。

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◆音楽鑑賞もお好きだと聞きました。どういうジャンルの音楽を聞きますか?

何でも聞きますが、特に80年代の音楽が好きですね。例えば、ザ・スミス。「(500)日のサマー」(2009年/アメリカ)という映画があるんですけど、そこでスミスに触れるシーンがあって。映画って、音楽好きだから分かる描写がある作品も多いんですよ。登場人物がバンドTシャツを着ていたり、建物の後ろに貼られているポスターがバンドメンバーやジャケット写真だったり。そういうのを発見して、小さな幸せを噛み締められるのも、映画のよさだなと思っています。

◆映画や音楽以外でハマっているものはありますか?

えー、トイレスタンプを押すことですかね。あの感覚、気持ちよくないですか?

◆そ、そうでしょうか?

そうですよ(笑)。あとは……寒くなってきたので、そろそろ銭湯に行くようになると思います。近所の銭湯がサウナ付きで70円で利用できるんですよ。銭湯行こ。

◆今後はどんな活動をやっていきたいですか?

うーん。よく聞かれるんですけども特になくて。今は毎日生きることで精いっぱい過ぎて。難しいですね。

◆もしかしたら、10年経ったら、「こんな活動をしてみたい」という新たな目標が見つかるかも。

確かに。そうかもしれません。

PROFILE

岡奈なな子
岡奈なな子

岡奈なな子
おかな・ななこ…1994年1月4日生まれ。築50年以上の祖母の家で一人暮らしをするYouTuber。YouTubeチャンネル「岡奈なな子の日常short movie」では、昭和レトロな雰囲気を醸しだす日常動画が人気を博し、日本を超え海外でも話題となる。YouTubeチャンネル登録者数は60万人を超える。趣味は映画観賞と音楽鑑賞。とりわけ映画をこよなく愛し、年間鑑賞本数は500本を超える。YouTubeチャンネル「岡奈なな子の映画紹介」では、自身が好きな映画を中心に紹介中。

グッズ情報

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WEB

YouTube「岡奈なな子の日常short movie」:https://www.youtube.com/@shortmovie_okanananako
YouTube「岡奈なな子の映画紹介」:https://www.youtube.com/@user-dh3ne5dv9t
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