お笑いトリオ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、『辞書で呑む』発のイベントに出演した話。(TVLIFE 2025年7月23日発売号より転載)
「よかったら今度番組の方も出てください」とのこと
夏になると大掛かりなライブや番組のイベントが目白押しだ。数年前まではあまり縁がなかったが、近年少しずつ関われる数が増えており、ネクストブレイク冥利に尽きる。
今夏もいくつかの番組イベントに出させていただいているのだが、その中でも特殊だったのが『辞書で遊ぶ~第2のニシダクイズを開発する会~』という、テレビ東京で放送されている『辞書で呑む』という番組が手がけるイベント。これがなぜ僕にとってそんなにもイレギュラーだったかというと、出演者の中で唯一番組に一度も出たことがなかったからである。普段絶対に出ないようなスペシャルゲストならわかるが、MCである麒麟の川島さんも「森本って出たことなかったんや」とおっしゃっていた。こんなぬるっとした初登場あるんだ。
番組名にならい、イベント中の僕は薄めのハイボールをご機嫌に飲みながらそれぞれが持ち込んだ辞書を使ったオリジナルゲームを楽しんでいたのだが、エルフ荒川が考案した『ミッション・イン・辞っしょぶる』の番になると、突然雲行きが怪しくなった。
「森本さん!こっちに来てください!」
荒川にステージの端へと誘われると、膨らんだ風船が貼り付けられたカチューシャを頭に装着させられた。
「森本さんは、人質になってしまいましたー!このままだと風船が割れてしまいます!みなさんで救ってあげてくださーい!」
全く感情移入できないストーリー展開に困惑する会場を尻目に、荒川が考えてきたオリジナルゲームの説明を続ける。どうやら制限時間3分以内に指定された種類の言葉を辞書から10個見つけるというものらしい。かろうじて内容を把握したところで、カウントダウンが始まる。
さすがは番組出演経験のあるみなさん。初めからスムーズな辞書さばきで快調に正解を重ねていく。このペースなら難なくクリアできそうだと安心していると、
「ここで!ギャルターーーイム!!みなさん、踊ってくださーーーい!!」
荒川が持ち前の伸びやかなギャルボイスで高らかと宣言。その瞬間、僕以外の全員がなんの疑問も持たずに辞書を扇子代わりにして踊り始めた。僕が必死に踊りをやめるよう懇願するも、誰も辞書を引くことなくそのままタイムアップしてしまった。人質を救えなかったということで荒川がおそるおそるこちらに近づいてきて風船に針を刺し、「パーンッ!」という音が東京体育館に虚しく響き渡った。
5000人キャパの会場で少し大きめの破裂音はインパクトに欠けたのか、なんだか引くほどウケなかった気がする。
引くのは辞書だけでいいのに。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。初の書籍「ツッコミのお作法」(KADOKAWA刊)も好評販売中!