お笑いトリオ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、インフルエンザにかかってしまった話。(TVLIFE 2026年3月4日発売号より転載)
「そんで糧になるわけでもないし」
先日インフルエンザにかかり、いくつかの仕事を休むことになって多方面に迷惑をかけてしまった。なんとなく今までの経験上、体調自体は比較的すぐ良くなっていくけど、感染を広げてしまう可能性があるから大事をとって休む、というのがインフルの印象だったのだが、今回はその印象がまるっきり覆されるほどしんどかった。
解熱剤が効いているとき以外はずっと38℃くらいの発熱があり、お腹も下して食欲もなく、なんとか水分だけ摂れる状態が3日続いた。もう治らないんじゃないかと絶望する瞬間もあったが、4日目あたりからじわじわと回復し、計5日間の休養を経て仕事復帰することができた。
数日前まで病床に伏せていた身でひさしぶりに仕事をするとやはりボケへの反応がすこし遅れたり、ツッコミのキレがいまいちだったりと、いかにも病み上がりといったコンディションで悔しい思いをした。
それから連日お仕事をしていく中で、すぐに戻ると思っていたパフォーマンスもいまいち元通りとはいかず、じわじわと焦燥感に駆られた。ずっとこのままの状態だったらどうしよう。ブレイクへの道が閉ざされたどころか、ネクストブレイクからも外れてしまうのではないかと、負の思考が絶え間なく連鎖していった。
しかし思い返してみると、インフルになる前に撮影した自分のYouTubeがあまりにも納得のいかない出来だったため、編集スタッフに申し訳なさでいっぱいになりながら「あの回、本番うまくいかなかったから編集で迷惑かけるね」と打ち明けると
「え、なにがですか?」
と、あっけらかんとしたトーンで返された記憶があった。僕に気を遣っているとかではなく、本当になにを言ってるのかわからないという表情だった。外国人に道を聞かれたときみたいな顔をしていた。
その出来事を思い出した瞬間、なんだかとても恥ずかしくなってきた。反応が遅れたり、いいツッコミが出なかったりなんてことは、よく考えたら体調を崩す前から日常茶飯事だった。昔の恋人との思い出が美化されていくような感覚で、たった5日仕事を休んだだけで自分のお笑い能力を過大評価してしまっていたのである。危うく、今後スベった責任をもう体内に存在しないウイルスになすりつけ続けるところだった。
結局のところ、ネクストブレイクの道を外したわけでも、後退したわけでもなく、ただ同じ場所でずっとじたばたしていただけの期間だった。
高熱よりも厄介な症状かもしれない。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。初の書籍「ツッコミのお作法」(KADOKAWA刊)も好評販売中!










