吉田羊インタビュー「今後も百合でいる機会があればいいなと思います」ドラマ『コールドケース~真実の扉~』主演

特集・インタビュー
2016年10月14日

未解決凶悪犯罪、通称“コールドケース”を扱う捜査チームの活躍を描き、2003~2010年まで全7シーズンにわたりアメリカで放送され大ヒットを記録したドラマ『コールドケース』。その日本版となる『コールドケース~真実の扉~』が10月22日(土)よりWOWOWプライムでスタートする。主人公・石川百合を演じた吉田羊さんに本作への思いや見どころなどを聞いた。

すごく大事な現場、宝物のような現場でした

吉田羊インタビュー1

◆大人気海外ドラマ『コールドケース』の日本版となる『コールドケース~真実の扉~』の主演というお話を最初に聞いたときの感想を教えてください。

どんなお話でもそうなんですけど、その作品が面白ければ面白いほど、私で大丈夫なのかなという気持ちにはなります。特に今回は全米で大ヒットしたドラマであること、そして原作の主演、キャスリン・モリスがとてもチャーミングで、私の雰囲気では到底表現できないような女性らしさを持っている方なので余計に私でいいのかなという思いでいました。

◆ほかの作品などで「私は主役肌ではない」とおっしゃっていましたが、今回主役として大変な部分はありましたか?

『コールドケース~』が主役として座長としての初めての現場だったんですが、共演者の滝藤(賢一)さん、光石(研)さんとは何度か共演させていただいていることもあり、あのお2方が現場にいてくださる安心感がとても絶大だったんですね。座長として気負わずに現場に入りたいなと思う私の気持ちをそのとおり実現させてくれたというか。三浦(友和)さんも(永山)絢斗君もそうですけど、自立した俳優さんばかりだったので、わりと自由でいられたというか。とても居心地が良かったですし、自分が座長なんだってことを必要以上に背負わずにいられた気がしますね。
でも実際に撮影が始まると、対外的には私が座長であり、外でロケをすれば何のドラマですかと聞かれて、「吉田羊さん主演の~」という冠詞が付く。そういう場面を目にしたり耳にしたりして自覚を促されていくことはありました。少なくともそういうことは今までの現場では感じ得なかったことなので、主役をやらせていただくことで初めて気づけること、見える景色っていうのはやっぱりあるなと貴重な機会をいただきましたね。

◆いい経験したなという思いのほうが強いですか?

『コールドケース~』は、共演者はもちろんスタッフさんを含めて本当に素晴らしい職人の集まり、奇跡のチームだったので、このチームで仕事をやり続けたいと思わせるチームでした。すごく大事な現場、宝物のような現場でしたね。

◆今回、主人公・石川百合を演じるにあたり、原作の主人公と比べ、ご自身では石川をどういった役どころだと思いながら演じられましたか?

キャスリン・モリスをなぞることだけはやめようと思いました。やっぱり私は彼女ではないし、逆を言えば彼女に持っていないものを私は持っているのかもしれないという期待を持って現場に入ったんですね。それで完成したものを見てとても安心したんです。
というのも、最初に台本を読んだときに、私は石川百合という人物と似ているなと思ったんですね。それは、人とお付き合いをするときにある一定の距離を保つ癖があるということ。かといって心を開かないかというとそうではなく、自分がこの人はって思った人には甘えも見せるし、本当にフルオープンで心を開いて付き合っていく部分もあるし、自分が気持ち悪いと思っていることに対して妥協ができない、そういう融通の利かなさというか頑固さが私自身に通じるものがあったので。どこからか百合でどこからか吉田羊なのか分からなくなるぐらい、演じているときはとても心地よかったんです。それは、百合であることが許されているというかそこに存在することを、百合を演じることでイコール吉田羊も許されている、というすごく不思議な感覚にもなりました。
で、第1話を客観的に見たときにそのとおりだったなと確認できるぐらい、無理なく自分がそこに存在していたんです。やっぱりこの作品は私にとってすごく大きかったですし、今後もそういうチャンスがあれば、百合さんとして生きる機会があればいいなと思っています。

日本の『コールドケース~』としてきちんと1人立ちしている作品だと思った

◆第1話をご覧になっていかがでしたか?

私は日本の作るドラマの丁寧さとか繊細さがすごく好きで、それが原作とは違う日本らしい面白さを作れると思っていたんです。第1話を見て、本当にもうなんか手前みそになりますけど(笑)、面白くて2回見ちゃったんですね。自分大好きみたいで嫌なんですけど(笑)。
でもそれは根底にある原作へのリスペクトを感じて原作を思い出しながら見る部分と、一方で流れてくる曲は日本の曲もあり、演じているのは我々日本人として目にしている身近な俳優さんたちできちんと成立しているので、より身近な事件として身近な人たちの事件として描かれている。その日本ならではのトピックがたくさん散りばめられていたので、これは米国版のまねとかリメイクとしてではなく、日本の『コールドケース~』としてきちんと1人立ちしている作品だなと思いました。

◆未解決事件の当事者たちは悲しみを背負っていて、事件解決することが逆に心に深く踏み込まなくてはいけない。でも見終わった後には何か温かい気持ちになります。

ドラマの中で、事件によっては踏み込まないほうがふたを開けないほうがよかったんじゃないかという方もいらっしゃると思うんです。でもそれがエンディングを見ると、どこか救われた気分で見られるのは、もちろん乗り越えるのは個人なんだけども、その乗り越えるときに、家族だったり友達だったり周りの人間が手を差し伸べて助けてあげることもできるよねっていうことを日本らしく描かれている。なのでどこか悲しい事件で掘り起こさなくてよかったじゃないっていう事件でもやっぱり愛を持って踏み込んだからこそよかったんだと納得できる、そんなドラマになっていると思います。
日本の刑事ドラマは捜査というと例えば捜査一課とかチームで事件を解決していくことになるというか、捜査一課のメンバーにフォーカスされて警察中心に進んでいく話が多いような気がするんです。
でも『コールドケース~』の場合はあくまで毎回のゲストである事件の被害者たちや当事者たち、その家族たちの心に深く深く踏み込んでいく。そしてその事件の当事者たちの抱えているものは我々の身近にある題材だったりするので自分のこととして見ることができるのかもしれません。

◆当事者たちの心に深く踏み込んでいくというこれまでの刑事とは違った刑事役だと思いますが、気をつけていたことはありますか?

ここまで被疑者の心に踏み込んで対峙していく刑事役というのは初めてでしたので、まずは自分が感じる気持ち悪さとか、台本を読んだときの気持ち悪さとか、知りたいという思いを大事にしたいと思って臨みました。
特に2人きりで取調室で対峙するシーンは、絶対に本当のことを突き止めるんだという心を強く臨んでおりました(笑)。本当に一筋縄ではいかない、犯人といいますか、対象者ばっかりだったので、俳優さんとしてもそうですけれども、ただでは転ばない怪優たちばっかりがいるものですから(笑)、まずは俳優としてはのまれてはならないという気持ちと、刑事役として負けてはならないという気持ちでした。
でも百合さんは完璧な人ではないので、捜査の過程で間違ったり、ミスリードされたりするんですよ。そういう人間らしさっていうのもこの石川百合さんの魅力の1つかなと思うので、むしろそこをかっこつけずに大真面目に間違うというか自信を持って間違うと、逆にそういうところが人間らしくかわいらしく映るのかなと、見ている人が“百合さん違うよ”って思いながら見るもの楽しんでいただけたらと思いました。

人生の半分損するぐらいに思っています(笑)

◆共演者の皆さんの印象をお聞かせください。

絢斗君は不器用な方なんです。それは台本を読んで腑に落ちないと芝居ができなくなる、で事前に監督さんやプロデューサーさんとディスカッションを重ねて重ねてやっと信次郎を演じられていた。でもその不器用さが信次郎そのままだったんですよね。真っすぐで。実際に彼の絞り出すような表情から出るせりふから受けるものは大きかったですね。
滝藤さんからは、まず『コールドケース』の話がきたときに断ろうと思ったとおっしゃっていたんです。それはなぜかというと、自分のやりたい役じゃないっていうのが1つと(笑)、もう1つが吉田羊とのコンビは『ウロボロス~この愛こそ、正義。』や「SCOOP!」などでこれまで何度もしているから、視聴者の方が見飽きてるんじゃないかと。
でも、「ビリギャル」を見て、女優・吉田羊と共演したいと思ってくださったんですって。こいつが主役ならどんな作品になるのか見てみようじゃないかと俳優魂をくすぶられたよって言ってくださって。そんなことを言ってくださったこともあり、現場でも全力でぶつかってきてくださいました。
滝藤さんって不思議な人で誉めると、謙遜しないんです(笑)。でもそれが嫌味じゃないんです。それは滝藤さんがどれだけ努力をして、準備をして、作品に向かわれていることを周りは知っているから手ばなしの称賛ができるんですよね。今回も台本は最初から全部上がっていたんですけど、わりと早い段階で最後のほうまでせりふを入れていて、撮影の合間も繰り返し繰り返し練習していて。滝藤さんまだ先だよって言っても、早めにやらないとダメなんだよって。俺はできない自分を知っているから準備をしないとダメなんだって。
実は滝藤さん、「SCOOP!」で体重を増やしたんですが、『コールドケース』の撮影に合わせてすぐに体重を落としたんです。…でも1つ面倒くさかったのは、「体触る」って筋肉を触らせてきたのはちょっとやめてほしかったですね(笑)。

◆最後にあらためて見どころをお願いします。

とにかく脚本がべらぼうに面白いです。それは第1話を見ていただいたら分かっていただけると思うんですけれども、毎回出ていたく豪華ゲストの方々もそうですし、4K・HDRで撮影した映像美もそうですし、それから何と言っても原作と同じように事件が起こった時代に合わせたヒット曲など見どころありすぎて、上げれば切りがないんですけれども(笑)。それらを1つひとつ楽しみにしていただいて、1話も見逃すことなく、私は「1話見逃すと人生半分損するよ」ぐらいに思っておりますので(笑)、1話も見逃さず最終回まで全10話見届けていただけたらうれしいなと思います。

◆続編は?

あるとうれしいですね。私は百合さんが本当に好きなので。

 

■PROFILE

●よしだ・よう…2月3日生まれ。福岡県久留米市出身。映画、ドラマ、CMなどで活躍中。現在放送中の『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』(フジテレビ系)にて主演を務める。映画「SCOOP!」「グッドモーニングショー」が公開中。11月5日(土)より「映画 ボクの妻と結婚してください。」が公開。三谷幸喜作・演出の舞台「エノケソ一代記」が11月から世田谷パブリックシアターにて上演。

 

■ドラマ情報

『コールドケース~真実の扉~』『コールドケース~真実の扉~』

10月22日(土)スタート
WOWOWプライム 毎週(土)後10・00~(第1話無料放送)

<STAFF&CAST>
監督:波多野貴文
脚本:瀬々敬久、吉田康弘、蓬莱竜太、林宏司
出演:吉田羊、永山絢斗、滝藤賢一、光石研/三浦友和ほか
ゲスト:吉沢亮、大野いと、仲里依紗、ユースケ・サンタマリア、村上虹郎、門脇麦、仲代達矢、江波杏子ほか

©WOWOW/Warner Bros. Intl TV Production