中山優馬、ただいま“蛙化”中!? 舞台『蛙昇天』で「ここまで蛙について考えたことない(笑)」「この世の中に生まれていないレベルのエンタメになる」

特集・インタビュー
1時間前

中山優馬

木下順二の名戯曲『蛙昇天』は、蛙たちの世界を通して人間の本質を描く問題作。主人公・シュレ役を演じる中山優馬に、初めて組む演出家・ウォーリー木下のワークショップや役柄への思い、現代にも通じる作品の魅力について語ってもらった。さらに独立後のライフスタイルの変化、料理からこだわりの包丁まで、近況&素顔にも迫ります!

◆『蛙昇天』への出演が決まったとき、作品にどんな印象を持ちましたか?

これは自分がやりたい、他の誰かにはやられたくないと思いました。人間が抱えている“業”といったところを表現するのが演劇という場所だと思うし、そういうものを表現するために、実在の事件を扱うなどいろんな方法がある。この作品は言葉の有効性を最大限に生かしながら、深いところに切り込んでいっているんです。人間とはどういう生き物なのか、人間が寄り集まるとそこでどういったムーブメントが起こるのかとか、そこに生じる暴力性みたいなものを言語化するのってすごく難しい。それを人間ではなく、蛙という存在と関係性でもってきれいに伝えていて、『蛙昇天』は本当に見事な戯曲だなと。台詞の量も膨大ですし、大変な日々が待っているとは思いますが(笑)。

◆ウォーリー木下さんの演出について、現時点(9月初旬)ではどんな稽古から始まっているのでしょうか。

本読みの前に、3日間くらいワークショップをやりました。今回は蛙ということで、蛙になってエチュードをやってみるなど、思っていたより、わりと蛙な感じです(笑)。戯曲の中ではとてもインテリジェンスなやりとりが繰り広げられるんですが、だからこそ、蛙らしさがないと、この作品の面白さも発揮されない。でもただ単純に、蛙の形態模写をするというレベルではなくて。形態模写に寄りすぎると、そっちが気になって物語が入ってこなくなってしまう。今は“座る”という一つの動作にしても、どんな座り方があるのだろうと、参加者それぞれが考えて意見を出し合っています。いろんな想像を働かせながら、身体表現として蛙の世界を探っている感じですね。

◆これまでの経験も生かせる一方で、かなり難易度の高い表現になりそうですね。

そうですね。難しいのは、人間的じゃない形で縛りながら、文字数の多い戯曲を前に進めていく必要があるということなんです。体に言うことを聞かせることと、ストーリーを進めることを同時にやらなきゃいけないので、かなり難易度は高い。いったん、能で言うところのすり足みたいな、蛙の“型”みたいなものが見つかって、それが自分のものになってしまえば、そこからはバーッと進めるような気がするんですよね。みんな手の長さも足の長さも違うので、ベースを共有して表現していくうちに、それぞれの個性も生まれてくるんじゃないかな。

中山優馬

◆蛙を演じるために、実際の蛙の研究も?

「蛙ってどういう生物なんだろう!?」って、こんなに人生で考えたことはなかったです(笑)。昨日の夜中からずっと蛙の動画を見ていましたし。僕はリアルな蛙を観察していますけど、矢崎(広)さんは蛙のキャラクターではこうやって表現していたから、こういうのもいいんじゃないかと提案していました。それぞれにいろんな見方、考え方がありますし、そういうものをみんなでセッションしていくのは楽しいです。どこまでも止めどなく発展していくので、その秩序を守ってくれるのがウォーリーさんで、ゼロを1にする作業が一番、大変だと思います。

◆ウォーリー木下さんは、どんな演出家だと感じていますか?

可能性を無限に探している人だなと。こういう、ちょっとおかたい戯曲を、KAAT神奈川芸術劇場のホールという大きな劇場で、蛙の世界としてエンタメに昇華していく。そのために、演者の僕たちがどこまで体を動かせるのか、どんなアイデアを持っているのかと、いろんな可能性を探ってくれているんです。もちろん、ご自身の中にある程度決まったラインはあると思いますが、そこからどれだけ肉付けできるかを常に探してくれているし、僕らにも聞いてくれる。一人一人から出たアイデアをすごく紳士的に受け止めてくれる方ですね。

◆シュレという役については、今、どんな人物だと捉えていますか?

戦争そのものに殺されたわけではなく、戦争というトラブルが引き起こした時代や、そこから派生して作られた環境、社会、文化みたいなものに殺された蛙なんじゃないかと思います。だから悪人でもないし、善人かどうかさえも分からない。ただ、戦争の被害者であり、加害者にもなっていて、悲しいけれど、誠実な蛙だったんじゃないですかね。シュレは論理的に考えるタイプなので、そういう考え方自体は僕も分かるし、共感できるんです。今のところ、役そのものに難しさは感じていないんですよね。むしろ時代や社会のほうがおかしいというか。人間として生きていくなかで……作中では蛙ですけど(笑)、みんなが抱えているやりきれない部分から目を背けずに向き合っている。役者という仕事は、自分の弱さや醜さみたいなものと向き合うことが多いんです。だから僕としては、アプローチしやすいキャラクターだと捉えています。

中山優馬

◆シュレは、ある意味で社会や集団の力に翻弄された人物でもあります。

結局、人間は一人では何もできないけれど、みんなが集まれば、動かないものが動いたりする。それを正しい方向に動かすのかというと……「正しい」と言った瞬間に正義、非正義みたいな話になるので難しいんですけどね。誰から見ての正義なのか、という問題もありますが、民衆や大衆、個々が集まって動かすパワーが、一人の人間を殺してしまう方向に動くこともあるという。もしシュレがもうちょっと悪い人間、いや蛙だったらよかったのになと。うまくやり過ごすことができず、まともに世界とぶつかってしまい、それがシュレを苦しめたんじゃないですかね。とても清らかな“蛙”だったんだと思います。

◆優馬さん自身も、言葉を大切にしている印象があります。

考えていることをできるだけ言語化して、論理的に組み立てて伝えようとはしています。雰囲気で話してしまうと、受け取り手の自由な解釈に委ねられる部分が大きくなってしまうので。聞き手側に正しく理解してもらわないと、言葉って危険なんですよね。大人になるにつれて、特にそういうことを意識するようになりました。最近は特に、普段の話し言葉で主語をつけなくなってきているじゃないですか。そういうところでも誤解は生じてしまうし、ちゃんと話さないと、ヘンな切り取られ方をしたり、本当は分かっているのに突っ込まれたりすることもある。聞き手側に国語能力がなかったら終わりですから(笑)、日本語の正しい使い方をしようと心がけています。

◆今回の舞台『蛙昇天』で楽しみにしていることは?

最初にお話をいただいたときは、ここまで蛙の形になりながらやるとは思っていなかったんです。もっと蛙的な要素は少なくて、人間の会話劇だと思っていたんですけど、どうやらそうじゃなさそうで(笑)。それだけに、この世の中に生まれていないレベルの、爆発的なエンタメになるんじゃないかという予感があり、すごく楽しみです。

中山優馬

◆独立してから、仕事やプライベートの過ごし方にも変化はありましたか?

変化というか、プライベートな時間っていうものがどういうものか、ちょっと分からなくなりました(笑)。今日は仕事現場に行かないという日でも、家でやる作業があるので。自分でやることは増えましたけど、楽しいですよ。家では台本を読んだり、戯曲を調べたりする時間も増えましたし。会社業務や経理関係も自分でやらなきゃいけない。ちゃんと把握しておかないと、税務署に怒られるだろうから(笑)。

◆生活のリズムは決まっていますか?

全然決まってないです。起きる時間も決まっていないし、夜型で、夜中もずっと何かやっていますね。うちのワンちゃん、ティンクも一緒に起きています(笑)。こうやって僕が外で仕事をしている間は家で寝ているので、夜中のほうが起きているんですよね。なので決まったルーティンはないですけど、料理は相変わらずやっています。頻度は増えているかもしれない。まぁ基本的には毎日、週7でやっています。

◆作り置きとかはしない?

食事のルーティンを決めて毎食食べるものが決まっているときは作り置きしていましたけど、料理をしている時間が好きなんですよね。野菜を切ったり、煮込んだり、料理をしながら別のことを考えたりしているときに、いろんなことが発展していくんです。芝居のことから友達関係のことまで(笑)。何か大量に作りたくなって作ったときは、結果的に作り置きになります。今はあんまり使っていないけど、一時期は寸胴で鶏ガラや豚げんこつ、もつ煮を8時間くらい炊き続けていました(笑)。

中山優馬

◆最近の料理で「うまくできた」と思ったものはありますか?

一昨日、餃子を作ったんですけど、餃子のタネがすごく余っちゃったんですよね。皮を使い切ってしまったので、翌日はレンコンで挟んで揚げたり、中華っぽいスープにしたり、うどんに混ぜて焼いたりしました。余ったものをどう使うか考えるのも楽しいです。

◆料理道具や調理家電についてのこだわりは?

最新家電にはそこまで詳しくないんですけど、包丁は5本くらいあります。3週間に1回くらい研いでいますね。この間、母親がちょっと犬の面倒を見に来てくれたんですけど、「あんたんちの包丁はキレイすぎて怖い」って言って帰っていきました(笑)。包丁を研ぐのも楽しいんですよ。シャカシャカやっていると、ちょっと精神統一みたいな感じにもなるし。あと、飯田屋さんってお店のオリジナルのピーラーがめちゃくちゃ使いやすい。YouTubeの撮影で伺ったお店なんですけど、おすすめです。ぜひYouTubeの動画のほうも見てください(笑)。

PROFILE

●中山優馬 なかやま・ゆうま…1994年1月13日生まれ。大阪府出身。血液型A型。
中山優馬オフィシャルサイト:https://www.nakayama-yuma.com/
公式YouTube:@yuma.nakayama.official
中山優馬officialファンクラブ~You&YUMA~:yuma-nakayama.com

公演情報

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『蛙昇天』
2026年10月24日(土)~11月8日(日)
KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
公式HP:https://www.kaat.jp/d/kaeru2026

米ソ冷戦激化の時代、シベリア抑留者の帰還をめぐり当時の世間を騒がせた実際の事件を題材に、劇作家・木下順二が書き下ろした『蛙昇天』。誠実に生きたいと願った青年が政治的対立の抗争の場に引きずり込まれ、自らの命を絶つに至った事件を個性豊かな蛙たちの世界で描く。

作:木下順二 演出:ウォーリー木下
出演:中山優馬 矢崎広 音月桂 中村里帆 市川しんぺー
久ヶ沢徹 町田マリー 百瀬朔 白又敦
神保悟志 温水洋一ほか

●photo/小澤正朗 text/根岸聖子 styling/柴田拡美(Creative Guild)hair & make/野原ゆりえ

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