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原一男監督“本作を見て日本は変わってしまった…”と痛感『ローサは密告された』公開記念トークショー

132740_01_R フィリピン映画界に初の三大映画祭の主演女優賞をもたらした『ローサは密告された』が公開され、同時にトークイベントが行われた。

 フィリピン映画界で初となるカンヌ国際映画祭主演女優賞を獲得し、各国の映画人から高い評価を得ている『ローサは密告された』が公開。同時に初日にはジャーナリストの丸山ゴンザレス、二日目には映画監督の原一男によるトークショーが行われた。

 まずは初日、丸山ゴンザレスは「スラム街が本当にリアルでした。ちょっと違う点は、スリムな人はもっと少ない。 ジャンクフード食べてるのでみんなデブです。(笑)」と冒頭から会場を笑わせた。「フィリピンを訪れるたびに思うのは“頭で理解するものじゃない” ということ。それほどにフィリピンは日本と善悪の価値観は全く違います。いいとか悪いとか正義とか二の次です。個人や家族のメリット、自分たちの利益が第一なのです」と自身の体験からくるフィリピン観を話した。

 フィリピンの警察と関わったことありますか?という問いには「もちろん。この前、仲良く散歩しました(笑)。日本人だと分かると、すぐ難癖つけてお金を要求されたりと、警察は全く信用なりません。そもそも途上国の警察は、そんなに賢い人が就く職業ではないです。警察になるための試験は簡単で、多くの人が目指すんです。だから日本と比べて警察の質が悪い」と、警察が抱える問題についても言及。「そして一番問題だと思うのは警察が“密告”を捜査の手法に取り込んでいるのです。日本みたいな科学捜査より目撃情報などを重視しています」と警察システム自体も警察の腐敗の一要因であることを指摘した。

 二日目、原監督は「この映画を観て思ったことをお話ししようと思います」と、椅子に座らず前のめりで語り始め、30分間立ち上がったままで本作の魅力を語った。「昔、私が助監督していた浦山桐郎さんは『映画は人民のものである』と言いました。人民=市井の人々、つまり映画は貧困層を描くものでした。しかし、世の中が豊かになるにつれて、誰も社会派映画を欲しなくなりました。今の日本は余命がもうすぐという難病でお涙頂戴な映画ばかり。『ローサは密告された』を見て強く感じたのは『日本は変わってしまった!』ということでした。フィリピンに比べて日本は豊かになりました、でも幸せかと言われると『ウーン…』となる世の中です」。

 作中で警察が当たり前のようにワイロを要求するシーンに触れて、「私も、一回だけ撮影でワイロを使ったことがあるんです。『ゆきゆきて、神軍』で奥崎謙三さんについてパプアニューギニアで撮影することになったんですが、カメラを持ち込むことができないと事前に言われてました。でもワイロを渡したらいいんだよ、って教えてもらって。案の定、税関で止められて、『これで……』とお金を渡したら、簡単に通してくれました。本当にワイロは当たり前のことなんです。警察たちは、決して私たちに憎しみがあるわけじゃありません。給料だけでは生きていけない、だから小銭稼ぎする。そんなシステムが成り立ってしまっているだけなんです」と警察の現状について述べた。

 映像技術についても「3台のカメラで撮っているそうですが、私が観ても分からないくらいに、自然に撮られていました。脚本も渡さない、まさしくドキュメンタリーの撮り方。その結果、貧困層の人たちの息遣いが、リアリティをもって描かれていますよね。デジタルカメラで撮られる意義も感じられます。デジタルカメラは肉眼で感じられるより明るく映るんです。だから本作もノーライト(照明なし)で撮られています。場所が持っている光で表現できるのです。本作は今の映画技術と昔ながらの視線が合わさった映画。まさしく“最先端”の映画だと思います」と語った。

 そして本作についてあらためて「今村昌平監督は『映画は人間を描くもの』といいました。私は、一言加えて『映画は人間の感情を描くもの』と理解しています。人間は社会に組み込まれて生きていきます。その社会の中には必ず縛りや、矛盾がある。その仕組みを強いられるのは貧困層の人たちです。この映画では主人公の感情をとおして『政治体制の矛盾、闇、社会のもつ歪み』を描き出しています。『クソみたいな社会を生き抜いてやる』という決意を感じられたラストシーンには、思わず共感してもらい泣きをしてしまいました。どれだけ大変なことがあっても腹は減る。食欲というのは人間のエネルギーの根源です。素晴らしかった」と熱っぽく称賛した。

『ローサは密告された』
上映中
配給:ビターズ・エンド

公式HP:www.bitters.co.jp/rosa

©Sari-Sari Store 2016

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