鈴木京香インタビュー「恭子を演じられる幸運をひしひしと感じました」ドラマスペシャル『人間の証明』

特集・インタビュー
2017年03月31日

森村誠一の名作「人間の証明」。これまでドラマや映画などで映像化されてきた本作が、主演に藤原竜也さんを迎えスペシャルドラマで蘇る。鈴木京香さんが演じるのは戦後の壮絶な時代を生き抜いた高名な美容家・八杉恭子。家庭や地位、名声を守るため“母性”を捨てた彼女を「決して嫌いにはなれない」と語る鈴木さんに、恭子を演じる並々ならぬ思いと覚悟を見た。

恭子を演じられる幸運みたいなものをひしひしと感じました

鈴木京香インタビュー

◆『人間の証明』といえば、これまでに何度も映像化された作品です。今回鈴木さんが演じられた八杉恭子役について、以前「女優だったら誰もがやりたい役」とおっしゃっていましたが、プレッシャーはありませんでしたか?

そうですね、八杉恭子の“役の大きさ”というんでしょうか。女性としての強さ、あくの強さ、そして意思の強さを持つ彼女のすごさを感じると、演じるのは難しそうだなと思ったことはあります。ほかの女優さんがおやりになった役は今までも何回か演じてきましたので、その点ではもう慣れっこというか(笑)。私が映画の「人間の証明」を見たとき、岡田茉莉子さんが八杉恭子を演じていたのですが、あのとき「すてきだな」と思った役を演じていた女優さんと比較されるのは、光栄なことでしかないですね。なので全然プレッシャーではないです。とにかく「あの役を演じられる!」という幸運みたいなものをひしひしと感じました。

◆そんな中で、どのように恭子を演じようと思われたのでしょうか?

ドラマの設定の恭子は、母であり妻であり海外進出を企てている有名な美容家。世界に打って出ようとするというのは現代の世の中においても、すごく能力のある人じゃないとできないと思うんです。その難しい事業を戦後から昭和の時代、ずっとこつこつと自分でやり遂げようとしたということは仕事のできる才覚のある女性だと感じたので、知性をしっかり打ち出しさないといけないと思いました。それがないと八杉恭子がただ愚かな女性になってしまう。私は彼女のことを「罪は犯したけれども決して嫌いにはなれない」と思って脚本を読みました。彼女のためにも、美容業界でみんなに一目置かれ、そしてこれからも成功するであろう女性として年齢なりの貫録のある女性にしたいと思いました。

◆表現される上で特に苦労されたことはありますか?

まずは“戦後”という時代背景をしっかり理解するのが、彼女を演じる上で一番大切なのかなと思いました。大変な時代を生き、自分の意思を曲げずに実現するまで仕事を進めていく強さというは、生半可なことではできなかったんじゃないかと。完全に理解できたかといったら、自信がないです。心はそこにすごく傾け集中しましたけど、私が想像する以上の大変さだったと思うので。

ドラマスペシャル『人間の証明』

◆藤原竜也さんとは2004年のドラマ『新選組!』以来、13年ぶりの共演です。久しぶりにご一緒されて何か変化はありましたか?

私はあまり参加できていないですが、毎年『新選組!』の集まりがあったり藤原さんの舞台も拝見したりしているのでそんなに久しぶりという感覚ではなかったですね。今回の共演で、藤原さんのせりふを通して役を伝える集中力というのでしょうか、やっぱりさすがだなと思いました。棟居刑事(藤原)の気持ちも伝わるし、私のこともよく見てくれているし。役同士でしっかりやり取りできたので、とってもありがたかったです。

◆京都での撮影で、美術やセットをご覧になって印象に残っているのは?

戦後の焼け野原シーンの再現や、防空壕の中、戦後の街の中の様子など、さすが京都の東映さんだなと思いました。時代を経たものがそのまま残されていて、撮影でもそれを使っていたり。本当は食べ物を買いたい状況の中で、恭子がなけなしのお金を出してみすぼらしくなっている自分の髪の毛を切ろうとはさみを選ぶシーンがあるんです。撮影ではいろんな種類の時代を経てきたようなはさみが現場に並んでいて、そこにはイメージしていたどおりの八杉恭子が手にするはさみがあったんですよ。さすがなだと思いましたし、恭子を演じる私としてもありがたかったですね。あとはエキストラをやってくれた子供たちが印象的です。ワイルドでとっても元気で“昔の子供”みたいなお子さんがいっぱいだったんですよ(笑)。ボロボロの服を着てるんだけど、子供らしく生きる活力にあふれる感じで騒いでくれてましたので。絶対にそれはいい空気を与えてくれていると思います。

◆鈴木さんご自身のお母様との思い出で印象的なものはありますか?

夏になるとよく家族で海に行っていたんですが、そのときの母の水着の柄をよく覚えています(笑)。70年代の柄で、ちょっと派手だったんです。兄や父には「よくそんなの覚えていたね」って驚かれましたし、今も時々、母との会話で話題にすることもあるんですよ。劇中でも八杉恭子として白いワンピースを着て、旅行に行くシーンがあるんです。それでつい、母の水着のことが思い出されました(笑)。

◆最後にドラマを楽しみにされているファンの方へメッセージをお願いします。

ドラマを見ていただけたら “生きるための力”がとても興味深く映るはずだと思います。驚きを感じる方もいるだろうし、よくも悪くも強い印象を持ってもらえるんじゃないかなと。とても骨太で面白いドラマになっていると思うので、『人間の証明』をご存じない方にもぜひ見ていただきたいですし、本当に私も仕上がりが楽しみです。

 

■PROFILE

鈴木京香●すずき・きょうか…1968年5月31日生まれ。A型。

 

■番組情報

『ドラマスペシャル 人間の証明』
テレビ朝日系
4月2日(日)後9・00~11・10

出演:藤原竜也 緒形直人 宅麻伸 堀井新太 中原丈雄 草笛光子 鈴木京香 他
原作:森村誠一
脚本:浜田秀哉
演出:雨宮望
ゼネラルプロデューサー:佐藤凉一
プロデューサー:船津浩一 目黒正之 石﨑宏哉

番組サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/ningennosyoumei/

<ストーリー>
とあるホテルの最上階に向かうエレベーターの中で、黒人青年の遺体が発見される。麹町東署の棟居(藤原竜也)らは青年が向かおうとしていた最上階で聞き込みを始めるが、そこでは美容家の恭子(鈴木京香)のレセプションパーティーが開かれていた。程なくして、殺された青年はジョニー・ヘイワード(ラバンス)と判明する。棟居が捜査を続けていくと、ジョニーが死の間際に「ストウハ」という謎の言葉を残していたことが判明する。

©テレビ朝日

 
●photo/干川 修 text/多田メラニー styling/藤井享子、斉藤悠子(株式会社banana) 衣装協力/CASUCA(ネックレス、リング)