【インタビュー】「マダム・イン・ニューヨーク」ガウリ・シンデー監督インタビュー

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2014年12月24日

 日本でも人気を集めるインド映画に、新たな注目作が誕生した。ごく普通の主婦が、コンプレックスをはねのけ、1人の女性として自信を取り戻していく姿を描いた映画「マダム・イン・ニューヨーク」。日本におけるインド映画興行成績で3位を記録し、12週間のロングラン上映を果たすなど特に女性からの支持を得た。監督は、本作が長編作品初挑戦となる、ガウリ・シンデー。日本でのブルーレイ&DVD発売にあたり、彼女にインタビューを行った。満面の笑みとユーモアあふれるトークで、作品に込める思いを語ってくれた。

人間のあり方を描いている作品よ

――世界中で反響があったと思いますが、いかがですか?

この映画のプレミアがトロント国際映画祭で行われて、300人くらいの観衆の中には、いろんな国の女性がいたの。終わったあとに、メールをくれたり、ハグしてくれたり、泣いて喜んでくれたり、「よくこの映画を作ってくれた」という反応があって。人に初めて映画を見せたから、「世界中でこんなにも反応があるんだ!」と気づいた瞬間だったわ。日本では昨年のあいち女性映画祭が初披露で、ナーバスになっていたんだけど、とても反応がよかったの。

――この物語は、世界中で共感を生んだということですね。

インドのストーリーではなく、世界共通で誰の頭にも存在することだと思うわ。人間関係において、誰が優れていて誰が劣っているのかって、自分の頭の中で決めることだと思うの。だから、ある程度、自分が尊敬に値する行動をすればそう見てもらえるし、逆に自分が「私は誰かに従う人間だ」と思うと、そういうふうにとられてしまう。人間のあり方を描いている作品よ。

――長編作品を撮ろうと思ったきっかけは何ですか?

長編はずっと撮りたいと思っていたの。ただ、撮る素材がなければ、逆に撮らないとも決めていて。今回は、撮りたいことがあったから、挑戦したわ。主人公のシャシは、英語ができないことで夫や娘からからかわれてしまう。そこで人間としての自信を失うの。これは私の母に共通する部分ね。この作品は、母のような人がモデルなの。私の母の物語ではないけれど、リアリティな素材がなくてはならなかったから母からヒントを得たわ。時代性も加味して制作したのよ。

――インド映画といえば、踊ったり歌ったりといったイメージですが、本作はちょっと違ったスタイルですよね。

よく指摘してもらうんだけど、私自身、脈略なく踊りだすとかは、はっきり言って理解できない。だから、ちゃんとストーリーになじんでいるということが大事だと思って、音楽監督とか作詞家と話し合って、突飛にならないように気を付けたわ。これまでの自分のキャリアだったり、美的感覚、感性の好き嫌いが、作品には反映されているはずよ。

――魅力的なキャストが集結していますが、思い描いていた通りですか? それとも、撮影していくうちに魅力的なキャラクターになったのですか?

インドとアメリカでキャスティングをしたんだけど、思ったよりも個性的な人が集まったの。英会話学校のキャストは、撮影に入る2日前にワークショップをしたんだけど「みんな仲良くやってね」って言ったら、本当に仲良くなって。飲みに行ったり、いつも一緒にいるから、仲良くなりすぎてコントロールできないくらいよ! 英会話学校のシーンは、いつも私が叱っていたの(笑)。

とにかく見て!(笑)後悔はさせません

――シャシは、英語をきっかけにどんどん自信をつけていきます。監督ご自身は、どのように自信をつけていますか?

自信があるようなふりをしているだけよ(笑)。本当はおびえているの。学生時代はシャイで、多分、仕事を始めて、いろんな人に会ったり、いろんなところに行ったりしてからそうなったのかな。この作品が受け入れてもらえたことで、映画監督としても自信が持てたわ。評価がついてくれば、「間違いじゃなかったんだ。もしかしたら私ってできるのかも!」って。クリエイティブなものを作る人間としては、過程で自問自答するの。「これでいいのかな、これを世に出せるのかな」って一人で悶々とする。でも、そういう時期を経たからこそ、みんなの前では自信があるように振る舞っているわ。

――広島国際映画祭でもトークショーを行ったそうですねが、反応はいかがでしたか?

とてもよかったわ。そして、日本でこんなに受け入れてもらえているんだって驚いたの。すてきな贈り物をもらったような気持ちになったの。広島では、宮島に行ったり、平和記念公園に行ったわ。お好み焼きが、気に入っちゃった! 東京で行きたいのは、表参道ね。思いっきり買い物を楽しみたいの!

――これから作品を見る方にメッセージをお願いします。

とにかく見て!(笑)後悔はさせません。特に女性に言いたいのは、何でもできる可能性を持っているということ。家の仕事もして外でも働いて、いろいろなところで力を発揮しているのに、女性が弱いみたいな発想がどこからきたのか、私にはまったく分からない。自分はできないと思ってしまうと、相手もそう思ってしまうから、自分次第よ。あと、女性の賢い点は、男性に女性より男性が賢いと思わせることができるところ(笑)。男性はそれに乗っかっちゃうしね! そんな関係が幸せだったりするわ。

 

PROFILE

ガウリ・シンデー
インドの映画監督。1974年7月6日生まれ。
大学のマスコミ学科で映画撮影に興味を抱く。卒業後は、ドキュメンタリー監督シダース・ケイ監督に師事する。企業のCMを制作する傍ら、短編映画を制作する。「Oh Man」(2001)は、ベルリン国際映画祭出品作品に選ばれた。


DVD情報

「マダム・イン・ニューヨーク」
ブルーレイ&DVD 好評発売中

発売・販売元:アミューズソフト

■ストーリー
シャシ(シュリデヴィ)は、家族の中で自分だけ英語ができず、夫や娘からからかわれる毎日を送っていた。姪の結婚式の手伝いで単身NYに旅立つも、英語ができず落ち込む。彼女は、NYで「4週間で英語が話せる」という英会話学校に通う。仲間とともに英語を学んでいくうち、1人の人間としての自信を取り戻していく。

公式サイト(http://www.madame.ayapro.ne.jp/

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●取材/飯倉聖蘭、田代良恵