吉沢亮・黒崎博インタビュー「『生きてるな』と感じた時間でした」『青天を衝け』

ドラマ
2021年12月19日

12月26日(日)に最終回・第41回の放送を迎える大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合ほか)。主人公・渋沢栄一役を演じる吉沢亮さんと、最終話の演出を手掛ける演出家・黒崎博さんにインタビュー。

『青天を衝け』は史実に基づいたフィクション作品。昨年7月末にクランクインして以来、およそ1年4か月にわたり撮影を行ってきた。主人公・渋沢栄一(吉沢亮)は12月26日(日)放送の第41回まで「日本を守る」という強い意志を胸に世界へ飛び出し、すべての人が手を取り合うために挑戦を続けていく。

最終回の放送を前に、吉沢さんと黒崎さんに本作のなかで印象に残っているシーンや栄一に対する思いの変化、そして最終話の見どころについてお話しいただきました。

吉沢亮・黒崎博 インタビュー

◆まずは最終回直前の12月19日(日)放送の第40回について教えてください。パリ編の手法を使って演出された旅行のシーンがありましたが、撮影の現場はどのような様子だったのでしょうか。

吉沢:旅のシーンでは、電車をスタッフの皆さんが全力で揺らして走っているように見せてくださって。窓の抜けとかもグリーンバックなので、想像して演じていたのですが、みんなと相談しながらやっていたのでその感じも逆に楽しかったなと。演説のシーンは難しそうだなと思っていていろいろ考えながらお芝居していたのですが、仕上がりを観たらすごく良くて。自分の芝居ではあるんですけど、ちょっとうるっときましたね(笑)。

黒崎:撮影では、なかなか列車が上手く揺れないなんてこともありました(笑)。大人数でセットを囲んで揺らして…今となっては笑い話ですけど、現場のスタッフが本当に頑張ってくれて。大変だったとは思うのですが現場の結束感も生まれましたし、これまでにはない栄一と兼子の夫婦の関係性が見えるシーンを撮ることができました。そして、演説のシーンでは吉沢さんの芝居の熱量に驚きました。想像を超えた芝居をしてくださったので「こんなに強いシーンになるんだ」と…アメリカ編をやって良かったなと思いました。

◆また、40回では年老いた栄一と喜作(高良健吾)のシーンもありました。2人に関するシーンで思い入れの深いものはありますか。

吉沢:喜作との印象深いシーンはたくさんありすぎて…(笑)。2人で布団にくるまりながら酒を飲んでいる姿も、2人の道が違えていくところも印象的でした。でも、やっぱり40回の栄一と喜作はすごく良かったですよね。どちらが兄貴なのかよくわからない、でこぼこな関係性が最後まで続いていく感じが喜作と栄一らしいなと。すごく好きなシーンでした。

黒崎:歴史的には栄一が光の部分を歩き、喜作が影の部分も歩いたのかもしれませんが、交互に入れ替わりながら進んでいった感じがありますよね。若かった頃は栄一が正論を言うことが多かったですけど、歳をとったら喜作が栄一を正すこともたくさんありましたし。“2人で1人”のような関係性は、吉沢さんと高良さんならではだったんじゃないかなと思います。

そして、40回の2人のシーンは日没まであと1分30秒というようなギリギリのタイミングで綺麗な光を狙って撮っていたのですが、その時の2人のお芝居について僕からは何も言うことはなかったですね。2人が築いてきた関係を醸し出してくれて、それをカメラがドキュメンタリー的に追いかけていくような撮り方でした。光に包まれていく2人の姿を目の当たりにしてしみじみと、この2人をずっと見守り続けることができて良かったなと感じました。

左から)渋沢栄一(吉沢亮)、渋沢喜作(高良健吾)

◆これまでの放送でも、印象的なシーンはございますか。

吉沢:僕が黒崎さんの演出で印象に残っているのは、パリから戻ってきた栄一が自分が日本にいない間に何があったのかを仲間に聞くシーンですね。その中で平九郎の死を聞くことになるんですけど「次回に感情を爆発させるシーンがあるからそれまでためておかなきゃ」と僕の中では計算をしていて、演じる時も真顔で聞いていたんですよ。でも、黒崎さんに「いっちゃってください」と言われてたんです。僕も「いいんですか? やっちゃいますよ」みたいな(笑)。

芝居をした時もモニターで確認した時も、本当にこれでいいのかなと思っていたんですけど、いざ出来上がったシーンを観たときに、演出も併せてすごく感動して。あの時はこれでいいのかなと思ったけど、むしろこれぐらいじゃないと対抗できないなと気づきました。正解の実感がないまま演じていたシーンではありましたが、結果的に栄一がその空間を体感しているような感じに見えたので、本当に素晴らしい演出で「黒崎さん、すごい」と思った瞬間でした。

黒崎:吉沢さんは瞬間的にパワーを燃焼させるエネルギーを持っている方なので、それをいつ点火させるかということを話し合ってきました。どう演じるかは吉沢さんが1番わかっていることなので、そのタイミングをいつも測っていましたね。僕の個人的なお気に入りは、第28回の大隈重信と栄一の掛け合いのシーン。2人はずっと座った状態でしたが熱量のぶつかり合いがすごかったので、引き込まれながら撮っていたの思い出します。

◆たくさんの別れを経験してきた栄一ですが、つらかったのは誰との別れでしょうか。

吉沢:やっぱり円四郎(堤真一)と千代(橋本愛)ですね。とっさまやかっさまももちろん悲しいことではあるんですけど、“やり遂げた”という感触があるというか、ポジティブな感情が流れている次に進める別れだったのかなと思うんです。でも、円四郎と千代はあまりにも突然すぎて。消化しきれないまま時間が進んでいってしまいますし…引きずりますよ。特に千代は撮影が始まった頃から一緒でしたからね。話が進んでいくにつれて最初のメンバーがどんどんいなくなっていって、最終的に僕しか残っていないので寂しかったです。現場でも「この人もいなくなっちゃうのか」「誰と話せばいいんだ」みたいな状態でした(笑)。

◆物語終盤の年老いた栄一は、どのようにつくられたのでしょうか。

黒崎:やはり、どうやって高齢の栄一を演じるかという点はかなり考えたところでした。栄一は本当に最後まで元気な人なので、エネルギーを持続させながら老いていくとはどういう感じなんだろうと試行錯誤していましたね。でも、撮影の終盤にはその答えも見つかってきたのかなと。肉体を封印している吉沢さんの感じも面白いんじゃないかなと思います。

吉沢:歳をとっていくお芝居は本当に難しかったです。栄一なのでエネルギーが失われることは絶対に避けなくてはならないですし、その上で歳を重ねるということがすごく難しいんですよね。ちなみに、撮影の終盤は役作りで8kg程度増やして、パンパンに太っていたのですごく体が重くて。年をとったなと思いました(笑)。

◆栄一に対する思いに変化はございましたか。

吉沢:最初は調べれば調べるほど偉大な功績に関する情報ばかりが出てきて、とんでもないスーパーヒーローを演じるんだなという印象を持っていました。でも、演じていくうちに少し抜けている部分があったり、失敗していく姿も見えてきて、そしてそんなところもすごく魅力的に感じて。人間臭い男だなと思いました。

そして、本作にはその瞬間瞬間の主人公がたくさん存在するんですよね。そういった一人ひとりの主人公たちが何かを成し遂げた瞬間や失敗した瞬間、そして散っていく瞬間まで、時代の変化をずっと見つめてきた栄一はたくさんの人からバトンを渡されて、生きて、つないで…人に愛された人なんだなと感じています。僕も栄一が好きでした。

黒崎:演出としても、まさに栄一の“失敗だらけ”な部分はすごく大事に作ろうと思っていたところなんです。ただの成功者じゃなかったからこそこの物語の主人公になって、そして吉沢さんが演じてくださったからこそ愛すべき栄一になったんだと思います。なので、そんな栄一をみなさんに愛していただいたのだとしたら、とてもうれしいことです。

◆吉沢さんご自身には、撮影前と今とではどのような変化があったのでしょうか。

吉沢:1年以上同じチームで誰1人欠けることなく、そこにその人がいたから1つの要素ができていって、僕が栄一を演じることができて。みんなで作り上げた渋沢栄一という感覚を強くもっています。そして大河の主演として、うれしい思いも苦しい思いも、辛い思いもたくさん経験してきてめちゃくちゃ「生きてるな」と感じた時間でした。こんなにも刺激的な現場はそうそう出会えるもんじゃないですし、それは一生、言い続けていそうですね。年相応のところからかけ離れた年代を長い間演じてきたので、人としても成長できていればいいなと思っています。

◆最後に、いよいよ最終話を迎える物語のみどころを教えてください。

黒崎:この物語を最後どう閉じようかということをずっと考えてきたのですが、綺麗に閉じるのは無理でした(笑)。栄一は最後の最後まで駆け抜けるように生きた人で、次から次へとこれをやった、あれをやったということがたくさん出てくるので、収束しきらない物語になりました。最終話まで吉沢さんが全身全霊で演じてくださったので、そのパワーが皆さんに伝わることを信じております。エネルギーに満ちあふれた物語を、ぜひ楽しみにお待ちいただけたらうれしいです。

吉沢:終わりに向けてまとめに入るのではなく、最後まで現役でやりたいことをやって、失敗もして…というように、栄一はどんなに年を重ねても挑戦し続けます。その姿がこの作品の肝だとも思いますし、自分自身も最後まで演じきれたなと感じているので、そういった部分を観ていただきたいです。

番組情報

『青天を衝け』第41回(最終回)
2021年12月26日(日)
NHK総合:毎週日曜日 後8・00~
BSプレミアム・BS4K:毎週日曜日 後6・00~

公式サイト:https://www.nhk.or.jp/seiten/

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