草彅剛主演『終幕のロンド』遺品整理人×脚本家×プロデューサーが明かす物語の舞台裏

ドラマ
2025年11月03日
『終幕のロンド』
(左から)遺品整理人の増田裕次氏、脚本家の高橋美幸、プロデューサーの河西秀幸

草彅剛が主演を務める『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ系 毎週月曜 午後10時)より、ドラマの監修を務める遺品整理人の増田裕次氏、脚本家の高橋美幸、プロデューサーの河西秀幸の3ショットインタビューが到着した。

本作は、妻を亡くし、幼い息子を男手一つで育てるシングルファーザーで、遺品整理人の鳥飼樹が、遺品整理会社の仲間たちと共に、ときに孤独死した方の特殊清掃や遺品整理から、依頼主と直接向き合う生前整理まで、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添っていく、心温まるヒューマンドラマ。遺品に隠された真実を知った登場人物たちは、思わず心を揺さぶられる。また、感動的な人間ドラマの裏では、せつない大人の恋も描かれ、先の展開が気になるオリジナルストーリーとなっている。

草彅剛が主人公・鳥飼樹を演じ、中村ゆり、八木莉可子、塩野瑛久、長井短、小澤竜心、石山順征、永瀬矢紘、要潤、国仲涼子、古川雄大、月城かなと、大島蓉子、小柳ルミ子、村上弘明、中村雅俊、風吹ジュンが共演する。

このたび、遺品整理人の増田裕次氏、脚本家の高橋美幸、プロデューサーの河西秀幸の3ショットインタビューが実現。3人が物語の舞台裏をたっぷり語った。

『終幕のロンド』
(左から)遺品整理人の増田裕次氏、脚本家の高橋美幸、プロデューサーの河西秀幸

◆今回の作品で、“遺品整理”を題材にした理由を教えてください。

河西:草彅剛さん主演で、『銭の戦争』(2015年)、『嘘の戦争』(2017年)、『罠の戦争』(2023年)に続く新たな作品をやろうと考えたときに、草彅さんがまだやっていない役どころで、かつ草彅さんらしい役ってなんだろうと、三宅喜重監督と話し合いを重ねました。そんなときに、たまたま遺品整理について知る機会があり、同時に、増田さんが出演されていた2020年の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)の録画が残っていることを思い出して、見直したんです。その後、2年ほど前に増田さんに初めてお会いすることができ、直感的に、増田さんの仕事に向き合う姿勢がそのままドラマの主人公に生かせると思いました。

高橋:私は、河西さんが増田さんの話をメモした取材ノートを受け取って、そこに書かれていた、我が子を思う故人様がよだれかけをつけた縫いぐるみを大切にしていた話や、会社が故人様の遺品を持ち去ってしまったという話にすごく惹きつけられたんです。増田さんが、現場で作業を始める前に必ず花を供えるというエピソードもすごく印象的で、それこそが遺品整理人の心なんだと感じましたし、“死者の尊厳を守る”というテーマなら、11話のドラマを完成させられる、ぜひやってみたいと思いました。

河西:増田さんは、遺品整理をビジネスとして考える以前に、ご遺族様に寄り添うことを信条とされてますよね。遺品整理という仕事に対してすごく誇りを持っていることが伝わってきて、それをドラマで体現したいと思いました。とはいえ増田さんはとてもお忙しい方なので、監修をお引き受けいただくまで、なかなか会うお時間をいただけなかったのですが(笑)。

増田:私としては、この仕事を始めてからの20年分の思いというか、遺品整理という仕事をドラマで扱ってもらうことが、果たしてご遺族様に対していいことなのか、面白おかしく描かれてしまうんじゃないかという一抹の不安があったんです。河西さんになかなか会わなかったのは、その自問自答の期間(笑)。結局、その後も熱心にメッセージをくださった河西さんを信じて協力しようと決めましたが、ドラマを作るにあたって一つだけ、第1話や第3話の孤独死の特殊清掃の場面で、「悪臭」と「汚染」という言葉は使わないでほしいとリクエストしました。「臭い」や「汚れ」でいいんじゃないですかって。そもそも私は、「孤独死」という言葉も「自宅死」でいいと思っているんです。「孤独」という強いワードで悲壮感をあおる必要はなく、故人様は住み慣れた自宅でただ最期を迎えただけ。だから、「自宅死」だと私は思っています。

『終幕のロンド』
遺品整理人の増田裕次氏

◆現場で、草彅さん演じる“遺品整理人”を見たときの印象はどうでしたか?

増田:所作については最初にまとめてお伝えしていて、撮影中は、まるで私の考えが全部乗り移っているかのようにご自身で自然に動かれていて、特にアドバイスするような場面はなかった気がします。むしろ監督に、「こうやったほうがいいんじゃない?」と提案している場面をよく見ましたし、そこから私が学ばせてもらうこともありました。初めてお会いしたとき、「難しい役を演じてくださってありがとうございます」とお伝えしたら、すぐに「一生懸命頑張るんで大丈夫です!」と言ってくださって、そのときに、この役はもう草彅さんしかいないと思いました。

高橋:私も『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(NHK)で草彅さんとご一緒しましたが、優しさと強さを併せ持つ主人公がぴったりの俳優さんですよね。増田さんの、ビジネス関係なく、ご遺族様に寄り添う気持ち、遺品整理人としてのプライドや信念、そういうところが草彅さんを通して伝わってきます。すごく骨がある、でもソフトな印象を抱かせる、不思議だけど唯一無二な俳優さんだと思います。

◆高橋さんは脚本を書くにあたり、増田さんにどのような取材をされたのでしょう?

高橋:増田さんがこれまで見てきた現場の様子やご遺族様のエピソードなど、リアルな話を聞かせていただいて、それを元にストーリーを生み出したり、反対に、こちらでご遺族様の設定を考えて、それに合う話がないか、相談したりしました。

増田:よく、ここ(増田さんの会社)で脚本を書いてましたよね。

高橋:そう、本当によく通い詰めました。1話につき3回くらいですかね? 分からないところが出てきたら増田さんにメールして、3日以内に15分でいいので時間ください!って。で、15分どころか2時間居座る(笑)。

河西:お2人のホットラインが出来上がっていたので、僕や監督はプロットを読んで初めて知ることも多かったです。打ち合わせで何回「へぇ~」と言ったことか(笑)。第1話で、故人様が息子に見立てた縫いぐるみによだれかけをつけていたエピソードも、増田さんが心を動かされた遺品として僕たちに教えてくれた話を採用しています。そういう具体的なことは、想像だけではなかなか出てこないですよね。

『終幕のロンド』
脚本家の高橋美幸

高橋:そう! 机の前に座ってるだけでは想像の範囲に限りがあるので、それを超えるためにも増田さんにリアルな話を伺いたかったんです。第2話でも、最初に盗みを疑われるエピソードにしようと決めたとき、私は、そういう場合は絶対に謝らないと思ってたんです。だって、謝ったら泥棒だと認めるようなものだから。でも増田さんに聞いたら「謝ります」ってあっさり。ただ、これは劇中にも出てきましたけど、「見つけられなくて(・・・・・・・・)すみません」と謝ることがポイント。しかも、ご遺族様の気が済むまで探す。その労力がご遺族様の心を納得させたり癒やすのだと聞いて、それは机の前に座ってたんじゃとても思いつかないなと思いました。

河西:寄り添うって、まさにそういうことなんでしょうね。第4話で、樹が子供を亡くした父親に、「ぜひ、(話を)お聞かせください」と耳を傾けるシーンがあるのですが、その姿勢も、普段、いかにタイムロスを少なく、効率よく撮影するかを考えている僕からしたら、かなり衝撃的でしたよ。あれも、普段の増田さんの姿ですよね?

増田:話を聞くのが楽しいんですよ。ご遺族様は、話をすることで自分の中にたまっていたものが一気にあふれ出すんですけど、その正直な気持ち、故人様をこう思ってたんだ、っていうのを知ることができて、うれしくて、話してくれたことに感謝です。それに、ご遺族様が遺品整理を頼んでよかったと思うのは、荷物の整理のほかに、心の整理ができたときだと思うので、話を聞くことでそのお手伝いができるなら何よりですね。

高橋:この増田さんのホスピタリティの高さ、グリーフケアの考え方が、第1話で樹が口にした「橋渡し」という言葉につながってるんです。「必ずお伝えします」という言葉のとおり、遺品を片付けて終わりではなく、故人様の伝えられなかった思いをご遺族様に伝えるところまでが遺品整理。残されたご遺族様は、深い悲しみに陥ったり、自責の念に駆られたりするので、樹たちの手を借りて、故人様からそれを上回るだけの愛情を降り注がれると、心は一気にほどけていく――。それを「橋渡し」という言葉で表現しました。

増田:第1話で、吉村界人さんが親の残してくれた愛を知って泣くシーンがまさにそれでしたよね。私もオンエアを見ながら、目頭が熱くなりました。

高橋:ドラマをご覧になった方の中には、樹を見て「こんなにいい人はいない!」と感じた方もいるようですが、ドラマに登場する遺品整理人は、本当にいるんです、ここに!(笑)

増田:遺品整理の仕事を志すようになったのは、昔、結婚の約束をした恋人が突然亡くなってしまったからなんです。そのときに私は何もできなくて、涙を流し続けるご両親にも何もしてあげられなかった。だからこそ、当時できなかったことを全部やろうと思って今、この仕事をしているんですけど、それが皆さんから見ると、ビジネスの範疇を超えてお節介に見えてしまうのかもしれないです(笑)。でも、自分にできることは出し惜しみしないでやりたいし、それが私自身の生きる原動力になっていると思います。

『終幕のロンド』
プロデューサーの河西秀幸

◆ドラマの制作を通して、ご自身の死生観に変化はありましたか?

高橋:増田さんや医療監修の田中裕之先生の話を聞く中で、こはる(風吹ジュン)と同じように、最後にどう死ぬかより、最後までどう生き切るかが大事なんだと思うようになりました。たとえ人生の最期を1人で迎えることになっても、それまでは自分で自分の尊厳を守って生きる、プライドを持って生きていけたらいいなと思っています。

河西:“尊厳”は、この作品のキーワードの1つですよね。亡くなった方にも生きている方にも尊厳を持って接することが大事だし、草彅さんを見ていると、まさにそれを体現している方だなと思います。草彅さんは、「何かあっても、そばに人がいてくれることが一番価値のあることじゃないかと思う」とも仰っていたんですけど、まさに、人は1人では生きられない。そういう意味で、まわりの人、特にそばにいてくれる人には感謝しなければいけないなとあらためて思いました。

『終幕のロンド』

◆今後の見どころを教えてください。

増田:第4話では、親から子への愛を知っていただけたらうれしいです。

高橋:六平直政さん演じる父親が、息子の遺品を整理しながらやり場のない怒りを樹たちにぶつける話ですね。これも、増田さんの経験を基に書かせてもらったものです。

増田:そうですね。2話でも描かれていましたけど、理不尽な疑いや怒りをぶつけられるのは見ていて気持ちのいいものではないかもしれませんが、私はそれを受け止めるのも遺品整理人の役目だと思っています。なぜなら、いずれもその根底にあるのはご遺族様から故人様への愛情だからです。私自身、子供を亡くされた親御さんに、「親より先に死なないでね」と言われたことがあって、その言葉には「ご両親がこれだけ想っていてくれたことを故人様が知ったら、どれだけ幸せだったでしょうね」としか返せませんでしたけど、そのとき、親の愛はこれほどまでに深いんだと身をもって知りました。だからこそ、第4話では、そんな親の愛を知ってほしいです。

河西:中盤からは、樹と真琴(中村ゆり)の関係が深まっていく中で、「遺品整理」はもちろん、「母娘の生前整理」「御厨家のサスペンス」など、さまざまな角度から“死”と“尊厳”を描いていきます。前半でちりばめられた謎や伏線が解き明かされていくサスペンス要素も楽しんでいただきたいですよね。

高橋:そうですね。この物語は単に遺品整理のお話ではなく、草彅さん演じる一人の遺品整理人の “生き様”のお話でもあります。どう子供と向き合い、人を愛するのか。さまざまな仕掛けは“尊厳”というこの作品の大きなテーマを引き出すためのもの。最後は “腑に落ちる”展開になっているはずですので、どうぞ最後までお楽しみください!

プロフィール

●増田裕次
遺品整理・特殊清掃の専門家として25年間業務に従事。2000年に遺品整理・孤独死の特殊清掃専門の『遺品整理クリーンサービス』を創業し、2010年に株式会社ToDo-Company として専門チームの孤独死清掃本部を設立。遺品整理人を育成している。

●高橋美幸
脚本家。2024年、NHKドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』が「東京ドラマアウォード」の作品賞(単発ドラマ部門)を受賞。代表作にNetflix『火花』、NHKBSプレミアム『クロスロード~声なきに聞き形なきに見よ』など。

●河西秀幸
プロデューサー。2002年に関西テレビ入社。2007年に東京制作部に異動し『SMAP×SMAP』を担当。2010年『逃亡弁護士』でドラマ初プロデュース。その後、『ハングリー!』『サイレーン』、『銭の戦争』ほか戦争シリーズ、『GTOリバイバル』など多数手がける。2025年7月より関西テレビ東京制作部・部長に。

番組情報

『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』
カンテレ・フジテレビ系
毎週月曜 午後10時

出演:草彅剛、中村ゆり、八木莉可子、塩野瑛久、長井短、小澤竜心、石山順征、永瀬矢紘・要潤、国仲涼子、古川雄大、月城かなと・大島蓉子、小柳ルミ子、村上弘明、中村雅俊、風吹ジュン

脚本:高橋美幸
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:河西秀幸、三方祐人、阿部優香子
演出:宝来忠昭
演出・プロデューサー:三宅喜重
制作協力:ジニアス
制作著作:カンテレ

©カンテレ

下記の「CTAボタン」を設定することで、ユーザーがスマートフォンで記事詳細ページを開いた際に「続きを読む」の下に「CTAボタン」を2つ追加できます。上段「CTAボタン」に設定したものは上に表示、下段「CTAボタン」に設定したものは下に表示されます。
2025秋ドラマ最新情報まとめグラビア関連記事一覧