原作者・五十嵐大介&渡辺歩監督が語る「海獣の子供」製作秘話

映画
2019年04月18日

『アートから見る“海獣”たち!映画「海獣の子供」×「大哺乳類展2」スペシャルトークイベント』
 『アートから見る“海獣”たち!映画「海獣の子供」×「大哺乳類展2」スペシャルトークイベント』が行われ、「海獣の子供」原作者の五十嵐大介、渡辺歩監督、国立科学博物館の田島木綿子博士が登壇した。

 映画「海獣の子供」は、自然世界への畏敬を下地に“14歳の少女”と“ジュゴンに育てられた二人の兄弟”とのひと夏の出逢いを、圧倒的な画力とミステリアスなストーリー展開で描くアニメ大作。そして海の中で感じる静けさと荒々しさや海の匂いを、スクリーンからあふれ出すほどの映像と音楽に詰め込み、観る者全てをのみ込んでいく作品となっている。

「海獣の子供」原作や映画を見た感想について、田島博士は「研究者としてはムムッと思うような、実際とは異なる生き物たちの表現もありますが(笑)、漫画や映画だからこそ好奇心が沸きたてられるファンタジー性と同時に、生き物や自然史の本質を描かれていたので、我々研究者と志は同じなのかなと感じました」と研究者ならではの視点で語った。

「海獣の子供」という題材について、五十嵐は「図鑑を集めるのが好きで、よく図鑑を見ながら魚の絵を描いていました。ある時思い立って魚の隣に女の子が泳ぐ絵を描いたら、“フィッシュガール”というタイトルと結びつきました。フィッシュガール=人魚で、人魚のモデルになったジュゴンは、子供を抱えるように授乳する姿が人間に似ているということで、ではそれが本当に人間の子供だったらどうだろう、という発想から漫画へとつながっていきました」と。

 また、シンボルとして描かれているザトウクジラについて、五十嵐は「形が一番好きだったのと、胸ビレが長く、水中を泳いでいる姿がまるで空を飛ぶように美しく見えますし、お腹の白い部分や胸ビレを広げた時に人間に見えたら面白いと思い、意識して描きました」とこだわりを明かした。

 渡辺監督も「海獣たちの描写は、実物を何度も見て佇まいや動きを突き詰め、それらしい誇張を表現するよう努めました。あえて実物のクジラのサイズよりも大きく、胸ビレも長く描くことで、よりダイナミックになるように仕上げました。映画の中のクジラの“ソング”は本物のクジラの声をベースにしながら、映画的な演出を加えて作っていきました」と製作秘話を語った。

 映画製作にあたって意識したことについて、渡辺監督は「元々大好きな作品なのでハードルが高く、挑戦でした。マンガと同じ読後感にもこだわりました。原作が明確な答えや結論のない話なので、映画を作るときも、説明しすぎないようにして、なるべくふくよかに広く物語を完結させようと思いました。矛盾していますが、だからこそ琉花の目線で、琉花個人としてたどり着くものに焦点を当てました。映画を観てくださる方によって見え方が変わると思いますし、そこを楽しんでいただきたいです」と映画をPRした。

「海獣の子供」
6月7日(金)全国ロードショー

原作:五十嵐大介「海獣の子供」(小学館 IKKICOMIX刊)

<キャスト>
芦田愛菜 石橋陽彩 浦上晟周 森崎ウィン
稲垣吾郎 蒼井優 渡辺徹/田中泯 富司純子

<スタッフ>
監督:渡辺歩 音楽:久石譲 キャラクターデザイン・総作画監督・演出:小西賢一 美術監督:木村真二 CGI監督:秋本賢一郎 色彩設計:伊東美由樹 音響監督:笠松広司 プロデューサー:田中栄子
アニメーション制作:STUDIO4℃
製作:「海獣の子供」製作委員会
配給:東宝映像事業部

公式サイト:www.kaijunokodomo.com
公式twitter:@kaiju_no_kodomo

©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会