宇垣美里&古市憲寿がハラスメント問題に切り込む!映画『スキャンダル』公開記念イベント

映画
2020年02月17日

 映画『スキャンダル』の公開記念イベントが行われ、試写会後のトークショーにフリーアナウンサーの宇垣美里、社会学者の古市憲寿が登場した。

 2016年、全米ニュース放送局で視聴率No.1を誇っていたFOXニュースを吹き飛ばした衝撃のスキャンダルに際して、巨大権力に立ち向かった3人のキャスターたちの華麗なる戦いと逆転劇を描いた本作。セクハラ、パワハラ、トランプ政権の裏側など、まさに今、社会を揺るがす事実を描いた刺激的かつ意義深い作品となっている。

 また、本年度アカデミー賞にて3部門でのノミネート、メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞を果たし、オスカー女優のシャーリーズ・セロンとニコール・キッドマン、さらにオスカーノミネート女優で最旬のマーゴット・ロビーというハリウッドの至宝3大女優の豪華共演でも話題を呼んでいる。

 本編上映後、イベントに登場した宇垣と古市。本作を見た感想について、宇垣は「これがつい最近の2016年に起きたことだということ、それをアメリカはこのスピードで映画にできるんだということに驚きました。セクハラは醜悪なもので、私も映画で描かれていることは見覚えがあり、現実を諦めてしまう気持ちになりながらも映画の中の女性たちに共感し、声を上げる勇気に、自分も頑張らないとと思いました」とコメント。古市は「一番得なのは、自分は黙っていて誰かが声を上げてくれること。自分から声を上げるのは大変なことです。映画に登場する女性たちも、セクハラを告発した後も新しいキャリアを確立させていてスカッとしました」と感想を述べた。

 そして、実際に起こったスキャンダルを会社名や登場人物の実名をそのまま忠実に描いた本作について、「日本とアメリカではアナウンサー、キャスターに求められる像が違うように思いました」と語った宇垣。続けて「日本のアナウンサーは強すぎず、派手すぎず、セクシーすぎず、ニュースを伝えるにあたってノイズにならないのが一番大事だと思って局アナウンサー時代は働いていました。この映画で描かれているような権力構造、こういったことは日本でもいろんなところであると思います」と自身の見解を明かした。

 古市は「現在進行形で日本でも起こっていますよね。サラリーマンの方が夜家に帰ってきて見るニュース番組のキャスターは大体女性だし、自分の意見を言う人ではなくて、ただニュースを伝えてくれるきれいな人を求めてる」と考察。さらに「減ったとはいえまだまだ正直セクハラはありますよね。リベラルとされているメディアでもパワハラがありふれているのを知っているし、ショックなのはこの映画を見てあまりショックを受けず、これってよくあることだよねって思っちゃう人が日本には多いのかなと思ってしまいました」とコメントした。

 本作では世代やポジションの違う三人の女性キャスターたちが登場。マーゴット・ロビー演じる若手キャスターはトップキャスターであるシャーリーズ・セロンやニコール・キッドマンの演じる先輩キャスターのように活躍することに憧れ、そのための努力や苦労も描かれている。テレビ局のアナウンサーだった宇垣は、「私は枡田絵理奈アナウンサーに憧れていました。枡田さんから、『アナウンサーは100準備しても1伝わるかどうか。それでも準備できるかどうかが大事。自分が映らなくても番組が円滑に進んでほかの出演者さんがやりやすいと思ってもらえたらそれがアナウンサーの仕事』と教わってきました。なので、マーゴット・ロビーが演じるケイラのようにトップを目指したい、たくさん映りたいという気持ちはありませんでした」と明かした。さらに、「映画の中のシーンにもありますが、セクハラを受けたことがある人、それを良くないことだと思っているならば、自分の後輩には同じ思いをさせないように声を上げることが大切だと思います。ラストシーンは涙してしまいました」と、かつての自分の経験を振り返りながら映画の中のキャスターへ共感する思いを明かした。

 日本でも連日のように取り上げられている「セクハラ」や「パワハラ」について、宇垣さんは「私は恵まれていてある程度発言権があったのですが、企業の一般職などに勤めている友人の話を聞くと、それ絶対セクハラじゃん、と思うことがたくさんあるんです。でもその組織の中にいる彼女がセクハラだって気づいてなくて。ハラスメントがまかり通っているなと思っていました」と自身の周りのエピソードを明かした。

 また、ハラスメントが起きてしまう社会について、古市は「基本的には当事者同士の問題。ハラスメントはいけないしすべきではないけど、第三者が糾弾をすることはバランスを変えてしまうと思います。みんなでちょっとずつ意識を変えて、ハラスメントをしても得しない仕組みを作っていく必要がある。スマホも普及して、記録・録音・録画もしやすくなったこともハラスメントを減らすことにつながるのではになるのではと思います」とその解決に向けて、観客に呼びかけた。

 最後に、宇垣は「描かれているセクハラは醜悪で、だからこそ立ち向かっている女性たちの勇敢さはすべての人に刺さる話だと思います。セクハラに関係があると思っている人もないと思っている人も、ぜひ見てどうやって生きていこうか考えてみてほしいです」とコメント。古市は「ちょっとでも生活に不満がある人、社会に対して何か言いたいことがある人は共感できることがあるはずなので、セクハラに関心がない人でもスカッとできる作品だと思います」と会場に向け呼びかけ、イベントは終了した。

 映画『スキャンダル』は2月21日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。