“ナスD”がヒマラヤ最奥の聖地へ…150日間の命がけ取材【コメント全文】

エンタメ総合
2020年02月25日
『氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間』

 テレビ朝日開局60周年記念として3月8日(日)に放送される『氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間』(後9・00)で“ナスD”こと友寄隆英ディレクターがヒマラヤ最奥の聖地ネパール・ドルポを取材する。

 日本から約5000キロ、行きつくまでに最悪1か月かかるドルポは、富士山を越える高度4000メートルに位置し、冬季はマイナス40度まで下がることもある。地球上でも屈指の極寒の地だ。

 目指したのは、そのドルポのさらに最奥にある集落・ティンギュー村。標高5000メートル以上の3つの峠を徒歩で越えなければならず、総勢20人のスタッフが命がけで進んだ。その先で何世紀もの間、変わらない暮らしを送る部族と出会う。

『氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間』

 旅には、元テレビ朝日局員で『ニュースステーション』の取材ディレクターだった大谷映芳さんも同行。世界第2の高峰“K2”の西陵世界初登頂やパキスタン・ラカポシ北稜初登攀などを成功させた“伝説の辺境ディレクター”で、ナスDとの初タッグが実現した。

 取材は、四季を通じて計150日間に及んだ。雪と氷に閉ざされ、完全に周囲から孤立する厳冬期のドルポを取材するのは世界初。文化、歴史、絶景、人物、グルメ、動物など知られざる現地の今を伝える。

『氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間』

<友寄隆英ディレクター コメント>

◆なぜ新たな冒険の地にヒマラヤを選んだのでしょうか?

『いきなり黄金伝説。』を担当していたとき、僕はチーフディレクターとしてチヤホヤされていたんですよね(笑)。でも『黄金伝説。』が終了したら周りから人もいなくなって行き場も失って…。ずっとVTRを作ってきた人間なのでデスクワークなんかできるわけもなく、どうすべきなのか悩んでいたんです。それを察してくれた上司が「お前は何がしたいの?」って声をかけてくれ、「子供の頃からアマゾン、ヒマラヤ、アフリカに行って動物を撮るのが夢だった」と話したんです。そしたら、「まずアマゾンに行ってこい!その代わり、出演もしてみろ」と言われたんです。
 僕は自分が賢くないことを分かっているので、ロケの前にはその土地について猛勉強してノート2冊分ぐらい調べ上げるのですが、上司はそれをよく知っていて、「いちばん詳しいお前がリポートすればいい」と…。それで『陸海空 地球征服するなんて』でアマゾンを旅したのですが、それが終わったときにまた呼ばれて、「次はヒマラヤだって言っていただろう?」って言われたんです(笑)。

◆四季を通して取材したとのことですが、実際の取材期間は?

 2018年10月末から2019年12月まで、計4往復しました。冬は氷と雪に阻まれて危険すぎてドルポに踏み入ることができないので、厳冬期の取材は世界初です。ドルポを取材するのは日本のテレビでは『ニュースステーション』以来ですが、そのときも厳冬期は撮影できていません。

◆同行した大谷映芳ディレクターはどんな方でしたか?

 その『ニュースステーション』でドルポを取材したディレクターが、大谷映芳さんなんです。大谷さんは2年ほど前に紹介されたのですが、すぐに意気投合して2人で飲みに行くようになって、この企画が実現しました。73歳の大谷さんは僕よりもだいぶ大人なので温かく見守ってくれる感じ。そしてまた大谷さん自身もディレクターなので、何を撮影しようか話し合いながら進むことができました。そもそも大谷さんはK2西陵を世界初登頂した、スゴイ登山家。地図も読めるし、“進めるか否か”の感覚が研ぎ澄まされている。そして僕もそうなのですが、大谷さんも日本よりも向こうのほうが過ごしやすいんです。2人とも酸素濃度53%といわれても、なんともないんです(笑)。ちなみに自分も、無人島やアマゾンでしんどいと思ったことはなくて、東京にいる方がしんどいんです(笑)。

◆現地を訪れて感じたことは?

 最初に訪れたときは秋だったので、大地は全面、茶色。正直、まったく面白くなくて、この土地で特番なんか撮れるのかなと思いました。でもそれは思い違いでした。その茶色の大地が冬は白銀に覆われ、春になると人々が水を引いて大麦の種を植え、真っ黒になるんです。それが夏になると全面、緑になり、やがて実って金色に…。そのとき初めて“大地ってこんなに変わるんや”って、大地に愛しさを感じたんです。“大地で人間は生きている”ということ、そして“ドルポにはこんな生活を送っている人たちがいる”ということを日本の皆さんに伝えたいと心から思いました。

◆本作で最もこだわっていることは?

 今回は風景、現場の音、ナレーション、音楽で魅せていきたいと思っています。目指すところは“打倒NHKスペシャル”(笑)。ヒマラヤはめちゃくちゃ絶景が広がっているので、150日の間に映像的にはNHKさんを超えたのでは!?と思える瞬間がたくさんあるんです。僕はテレビでいちばん大事なのは奥行きだと思っているんです。今はYouTubeも技術的にすごいと思いますが、奥行きがない。テレビの強みは深さ、高さが見せられること。視聴者の皆さんにはぜひヒマラヤの奥行きを感じていただきたいです。
 そして僕らはリアルなものを真っ正直に撮り続けるしかない。今や部族だって裸じゃない。普通の服を着ていたり、靴も履いていたりする。でもこれがリアルなんです。100%、本物。2020年のヒマラヤ部族のリアルは、これなんです。

◆…ということは、ナスDの破天荒ぶりは封印なのでしょうか?

 もちろん“笑い”の部分はありますが、破天荒なキャラがヒマラヤでどんなことをしてくれるんだろう…と期待してくれている皆さんの期待はある意味、裏切ってしまうのかもしれません。でもその裏切りを超えるものを作らなければならないと思うので、今は日夜、編集に没頭していますし、僕のこれまでを超えたものがこの番組にはあります。正直、ディレクター人生の集大成として全てを出していますし、恥ずかしくないものを作っているつもりです。
 僕はひたすら普通の人間で、いまだにテレビ出演に値する人間だとは思っていませんし、芸人さんにはやっぱりかなわない。だから死ぬほど努力して誰もやっていないことに挑戦する。そんな普通の人間でも、命がけで頑張ったら視聴者もちょっとは見てくれる。それを芸人さんたちが見たとき、「オレらはプロなんだからもっと頑張ろう」と思ってさらに努力してくれるんじゃないか。そうしたらテレビはもっと面白くなる、活性化すると信じています。

◆視聴者へのメッセージをお願いします!

 僕の今の思いは“皆さんの代わりにヒマラヤに行ってきましたので2時間半、お付き合い願えませんか?”ということ。“150日間を何とかぎゅっと2時間半に詰め込もうとしていますので、一緒に旅してもらえませんか?”と…。見終わった後、“幸せってなんだろうな”と考えたりすると思いますし、決してムダな時間にはさせないのでぜひ2時間半、お付き合い願いたいです。

<大谷映芳氏 コメント>

私が初めてネパールのドルポを訪れたのは、1993年だった。
当時の『ニュースステーション』の取材だったが、ヒマラヤの奥深くの辺境の地に住む人々に圧倒された。それ以来、何度もドルポに足を運んだが、厳しい自然に守られたそこは地球上に残された桃源郷のような気がしてならない。
そのドルポをあのナスDくんが取材した。5000メートルの峠を何度も越え、厳冬の村へも分け入り長期間にわたり撮影を敢行した。
初めて訪れたドルポで彼が独自の感性で、何を感じ、どう心を打たれたか?
とても興味深い。
ヒマラヤのドキュメンタリーとしては久しぶりの、厚みがあり幅のある番組になったに違いない。

©テレビ朝日