関口アナム インタビュー「気持ちのまま行動できるカンボジアの子供たちに学ばせてもらった」『R旅行社』に出演

特集・インタビュー
2017年03月22日

女優・竹下景子さんと写真家・関口照夫さんの次男・関口アナムさん。俳優として活動する一方で、“毎月おこづかいを20万円もらっていた”など2世タレントとしてのエピソードでバラエティでも活躍中。そんな何不自由ない環境で育ったアナムさんが“Rebirth(生まれ変わる)”ことをテーマにカンボジアのへき地へ。子供たちのために1人でサッカーコート作りをして学んだことや、旅での印象的なエピソードを伺ってきました。

関口アナム インタビュー

◆今回の旅のテーマが“Rebirth(生まれ変わる)”ということですが、まずはアナムさんがどんな環境で育ったのか教えてもらえますか?

高校までは両親がちゃんと育てるんだという感じでしたので、僕自身がお金で困るような生活はしていなかったです。教育に関してはすごく熱心で厳しかったんですけど、毎年冬になるとあたたかいところに家族旅行に行っていたので、そういった面では恵まれていたと思います。

◆周りの友達と比べて、自分の家族はちょっと特殊かもと感じたことはありますか?

そうですね、例えば家にお手伝いさんがいるとか、毎年オーストラリアとかグアムに行くとか、そういうことができているのは特別なのかなと思ってました。

◆月におこづかいを20万円もらっていたというエピソードはいつごろの話なんですか?

僕は大学を卒業してロンドンに行っていたんです。おこづかいの話は、帰国してからのことなので、3年前くらいのことですかね。今の仕事を始めて、最初は全く収入がなかったので、親が心配してちょくちょく援助してくれたんです。それをざっくりまとめると20万円くらいだったと思います。

◆そういったエピソードをテレビなどで話されて、周囲からはどんな反応がありました?

親しい人たちは知っていたというか“やっぱりそうだったんだ”みたいな感じでした(笑)。あと、僕はエゴサーチをするのが好きで、ネットとかで自分のことをよく調べたりするんです。そうすると“うわ!やばい2世がいるわ”とか“絶対こいつとは仲良くなれない”みたいなコメントがありましたね。でも、それでへこたれるというより“そんなこといってもねえ…”というポジティブな捉え方をしてます(笑)。

◆そんな中、カンボジア行きを決めた理由は何だったんですか?

一番最初は単純に面白そうだと感じたんです。今まで発展途上国に行ったこともあまりなかったですし、そこの暮らしぶりを見てみたいという気持ちもありました。ただ、スタッフの方から“サッカーコートを1人で作ってください”って言われたときは、ちょっと何を言ってるのか理解できなかったですね(笑)。でも、やりがいはあるなと。カンボジアでサッカーコート作りを1人でやって、自分が何を思うのか、それを知りたくてやってみようと決めました。

関口アナム インタビュー

◆カンボジアのどういった場所に訪れたんですか?

プノンペンから車で4時間ぐらい行ったところにある村です。日本だと、車移動4時間で東京から名古屋の手前くらいの距離を行けると思うんですが、あっちの道はとにかくガタガタで、距離的にはプノンペンからそんなに離れてないんです。移動中はずっとジェットコースタに乗ってるような感覚でしたね。

◆カンボジアの洗礼を受けたんですね。

もう、きつかったです! ずっとグラグラしてたんで。あと、移動中に車の窓から外の景色を見てると、途中で電柱がなくなったんです。それは衝撃的でしたね。途中までちゃんと電柱と電線があって、そこから電線が消えて電柱だけになって、村に着くころには電柱も消えてました。

◆日本との文化の違いを感じたことはなんですか?

まず電気が通ってないことが1つですね。電気がない生活って想像したことがなかったので。あと、初日に“今日は疲れたと思うので、うちの天然のお風呂に入ってください”って言われたんです。天然のお風呂って何だろうって思ってたら、川に連れていかれて。しかも、その川が日本の清流みたいな感じじゃなくて、かなり茶色いんですよ(笑)。びっくりしたんですけど、とりあえずそこで頭とかを洗って、最後は井戸のきれいな水でさっぱりするというお風呂でした。

◆向こうではどんな料理を食べていたんですか?

ご飯はお世話になる家のお母さんがカンボジア料理を作ってくれて、全部おいしかったです。特にタマリンドとクウシンサイのすっぱいスープがめちゃくちゃおいしかったです。初日にそれが出てきて、3回くらいおかわりしちゃいました。

◆いろんな方と交流されたと思いますが、印象に残っている出会いを教えてください。

子供たちは、みんなとにかく純粋でした。毎日元気に外で遊んでて、全くすれたところがなくて、すごくかわいかったです。あと、村の面白おじさんにも出会いました。ボッティっていう村の警察官なんですけど、もともと平和なところなので、彼がやっていることと言ったら、たばこを吸っているか、寝ているかくらい(笑)。僕が炎天下で汗だくになって作業しているときも、ハンモックで寝てましたからね。それで、たまにふらっと作業を見に来て“これじゃあ効率悪いよ”って指示を出してきたりするんです。草刈りをしているときは、僕が使っていた鎌の3倍くらい大きい鎌をボッティが持ってきて“これで俺と競争だ”って言いだして、絶対勝てない競争を強いられましたね(笑)。言葉ではなかなか伝わりにくいと思いますけど、そんな面白おじさんがいました。

◆言葉が通じなくて困ったりはしませんでしたか?

いや、通訳してくれる方もいたので大丈夫でした。僕はほとんどボディランゲージに近いコミュニケーションの取り方で、日本語で“ボッティすごいね!”って言って肩をたたくと、向こうも伝わっているのか“OK、OK、頑張れよ”みたいなことを返してくれるんです。基本的にほとんど作業していたので、がっつり日本語を教えたりすることもなかったんですけど、それでも気持ちは通じ合っていたと思います。

関口アナム インタビュー

◆旅の目的のサッカーコート作りはどんな作業から始めたんですか?

まずサッカーコートを作る小学校のグラウンドに行ってみたら、草がすごいんですよ。僕の身長くらいある草がボーボーに生えてて、草というかちょっとした木が生えてる感じ。その草を鎌とかノコギリを使って全部刈りました。それで草刈りの次は地面に埋まっている石や木の枝を取り除く作業をやりました。向こうの子たちは基本裸足で遊んでいるので、けがにつながりそうなものはなくしたいなと。でも、最初は地面から小石程度しか見えてなかったのが、掘り出したら最終的に150キロくらいのが出てきちゃったんです。しかも、それが1個じゃなくて3個とか4個とか、ごろごろ出てきちゃって。当然、僕1人じゃ全然持ち上げられなくて、そんなときは子供たちが手伝ってくれたんです。すごいなと思ったのが、向こうの子供たちは日常的に道具を使って作業しているので、5人くらい集まったら僕のやることがなくなっちゃうんですよ(笑)。僕は石を持ち上げる最後の段階で、ちょっと力を貸したくらいで、本当に助かりました。

◆子供たちとはどんなきっかけで仲良くなったんですか?

一番最初は僕が何をやっているのかよく分かってなかった感じなんです。そんなとき、ふらっと遊びに来た男の子がいて、その子を僕がつかまえて“一緒にやろうよ”って言ったら、手伝ってくれたんです。それから次第に手伝いに来てくれる子が増えてきて、すごく礼儀正しく“家の手伝いがあるので、少ない時間ですが、手伝わせてください”って言うんです。小学校が朝7時半に始まって、授業が終わるのが10時半、その後に家の手伝いをするまでの1時間を使って手伝ってくれて、すごいうれしかったですね。

◆子供たちに手伝ってもらったりしながらサッカーコートが完成して、苦労した分、喜びもひとしおだったんじゃないですか?

サッカーコートになる姿を想像できなかった草ボーボーのグラウンドが、どんどん整地されて、白いゴールが立ったとき、なんか思った以上にサッカーコートな感じで驚きました。けど、完成した達成感はあっても、コートは物でしかなくて。一番幸せだった瞬間は、コートが完成した次の日に子供たちとサッカーをやったときでした。もともとカンボジアにサッカーは普及しているんですけど、僕が行った村に限って言えば、サッカーは知ってるけど情報がないという状態で、まずは子供たちにルールを教えるところから始めました。いろいろ基本的なことを教えて、動けるようになると、走り回れる広いスペースが今までなかったせいもあるのか、子供たちがめちゃくちゃ楽しそうな顔をするんですよ。それを見た瞬間に、僕もちょっとだけ彼らの力になれたのかなって思えました。

◆カンボジアから日本に戻ってきて、環境の変化に戸惑いませんでしたか?

東京に帰ってきて、まず情報の多さに驚きました。カンボジアでは、朝6時に起きて、1日力仕事をして、夜は早いときには8時半に寝るというシンプルな生活をしていたんです。それが東京に戻ると、夜は明るいし、電車は深夜も動いてるし、ケイタイはずっと鳴ってるしで、疲れちゃうんです。まあ、その生活にも2日、3日で慣れちゃうんですけど、戻ってきた最初のころはぐったりしてましたね。

◆今回の旅を通して学んだことは何ですか?

人への優しさみたいなものはすごい学びました。子供たちは家の手伝い、生活していくために必要な仕事があるのに、僕の作業を助けてくれて、しかも全然知らない日本人にすごく丁寧に礼儀正しく接してくれたんです。困っている人に手を差し伸べるって、すごい簡単で単純なことなのに、日本だとやりづらかったりするじゃないですか。例えば電車の中で席を譲ることをためらったりとか。そういうシンプルなことを、自分の気持ちが動くままにできる素直さを見せつけられて、今回すごく勉強になりましたね。

◆自分が“生まれ変わった”という感覚はありますか?

いやあ、どうでしょう(笑)。たぶん変わっているはずですけど、変化を実感をするのはもうちょっと時間がたってからなのかなと思ってます。

◆では最後に、視聴者にメッセージをお願いします。

僕の頑張りとかは本当にどうでもよくて、向こうの人たちのたくましさを感じてほしいです。お金がなくても心は豊か、そう言うとチープに聞こえてしまうかもしれないけど、人ってこんなにシンプルに楽しく生活できるんだってことを分かってもらえると思います。視聴者の方にとっても“生まれ変わる”きっかけになってくれたらいいなと願っています。

 

■PROFILE

関口アナム インタビュー●せきぐち・あなん…1988年9月17日生まれ。AB型。東京都出身。ドラマ『僕のヤバイ妻』『グーグーだって猫である2』などに出演。また、2世タレントとして『アウト×デラックス』など、バラエティにも出演。


■番組情報

『R旅行社』
BSフジ 3月25日(土)後7・00~8・55

「Rebirth(再起・再生)」「Reform(矯正・改心)」「Remember(思い出す)」など、さまざまな人の「R」にまつわる旅に密着するドキュメンタリー。関口アナムの旅のほか、騎手から調教師に転身する田中博康にも密着。

 
●photo/中村圭吾 text/松田大介