入江甚儀、市川知宏、竜星涼、山本涼介ら期待の人気俳優陣が、研音主催の舞台「大きな虹のあとで~不動四兄弟~」(8月29日(火)より上演)で四兄弟を演じる。終戦前の特攻部隊に志願する兄弟を明るくも切なく描く本作は、何度も再演された名作だ。四兄弟の長男・月を演じる市川知宏さんと、末っ子・草太を演じる山本涼介さんに、本作へ懸ける思いから、仲むつまじいプライベートのエピソードまで話をうかがった。
舞台が終わるころには僕たちの絆も絶対に深まってると思う(市川)
気心の知れた皆と一緒なのでより作品に集中できます(山本)
◆同じ事務所の同世代の4人で主演をやられるということですが、決まったときの率直な感想を聞かせてください。
市川:4人の関係性が大事になってくる作品なので、気心知れた仲間とできるのはよかったです。3人は僕がどういうふうにぶつかっても応えてくれるだろうし、役についての話し合いも壁なくできそうなので、そこを強みとしてやっていきたいなと。きっと、舞台が終わるころには僕たちの絆も絶対に深まってると思うんですよね。日ごろ僕たちを応援してくださる方に作品を直接お見せできるいい機会でもあると思うので、信頼できる仲間とすてきな作品を作れたらいいなと思っています。
山本:今までレッスンで一緒にお芝居をしたことはあっても、お仕事としては今回がほとんど初めてなので、決まったときは「どうなるんだろう?」という楽しみがありました。普段、作品に入るときは初対面の人も多いので最初は緊張してしまうんですけど、今回は気心の知れた皆との共演なのでより作品に集中できるんじゃないかなという期待があります。稽古はこれからですが、どういう形になっていくのか楽しみです。
◆四兄弟が主人公ということですが、それぞれ演じる役どころについて教えてください。
市川:月はとにかく明るくて、つらいことも苦しいことも笑いで吹き飛ばすタイプ。でもそれは先天的なものというより、月なりに長男として弟たちに余計な心配をかけまいとものすごく考えた上でのことだと思うんです。どんなにつらい状況でも「悩んでもしょうがない」と切り替えて笑いで吹き飛ばす月は人として尊敬しますし、そんなキャラクターを演じられるのはうれしいです。僕も月のようにありたいんですけど、やっぱりすべてを楽観的に考えるのはすごく難しいので、物語の中で思い切り演じたいなと思います。
山本:草太はそんな月お兄ちゃんをはじめ、上3人の兄が大好きな末っ子という役。すごく純粋で、思ったことを素直に伝える子です。
市川:そういう草太の兄弟愛が物語のポイントになるんじゃないかと思ってて。草太もだけど、もしかしたらこの時代の人は自分がいつ死ぬか分からないっていう状況だから、自分の気持ちをしっかり伝えたのかもしれない。現代の若者は「まぁいっか」って直接言わなかったり、後回しにしたりすることが多いよね?
山本:確かにそれはあるかもしれないですね。
市川:あと、涼介はクールな役を演じることも多いけど、一緒にレッスンやってて、こういう明るい役もハマると思ってた。
山本:本当ですか! 純粋で優しい役も経験はあるんですけど、草太はまた今までとは違ったタイプの、本当に何にも染まっていない真っ白な子なんですよね。難しそうな役ではあるけど、すごく楽しみです。
特攻隊員の方の手紙を読んで、涙が止まりませんでした(市川)
◆今回は戦争、そして特攻隊がテーマということで、普段とはまた違った難しさや重みがあると思いますが、何か準備していることはありますか?
市川:実際に特攻隊員の方々の気持ちになるのはすごく難しいと思うんです。そのすべては分からないけど、少しでも知ることができればと思って、自分で調べたり、鹿児島の知覧特攻平和会館に行ったりしました。平和会館には特攻隊員の方々の遺品が展示してあるんですけど、特攻隊員の方々が書いた手紙がそのまま残っていたりするんです。でかでかと「突撃」と書いてあったりして、残酷さを感じるというか。「本心は違うのかな、無理してたのかな」と思うとグッときて、泣いても泣いても涙が止まりませんでした。そういう方々を演じる責任感はすごく感じますし、作品を見た人にも数十年前の日本を知って帰ってもらいたいので、真摯に向き合わないといけないと思っています。
山本:僕はこれから準備に入るところですが、市川君のように伝える側として資料館は行くべき場所だと思っています。小学生の修学旅行で広島に行ったときも当時はまだ子供でそこまで深く考えられなかったですし、歴史を知るという意味でも、今回こういう歴史に触れる場所に行くきっかけができてうれしいです。当時のことを感じて、それを見た人に伝えないといけない役割があるので、準備は入念にしたいと思っています。
◆この作品は、戦争以外に青春物語という側面もあると思います。物語の前半部分は、女学生4人とのやり取りがコミカルになっていますね。
市川:そうなんです。結構、女学生たちとのシーンも多くて、笑える要素も取り入れつつ恋模様が描かれていて。僕が思うに、四兄弟にとって女学生たちの存在ってすごく癒やしで、救われたと思うんです。厳しい日々の訓練の中で女学生4人がいてくれたのは、男4人にとっては貴重な存在だったと思うので。そこはとてつもない愛情を持って接したいです。
山本:そういう空気感も、みんなで話し合って作っていきたいですよね。
市川:涼介は結構女学生から好かれる役だから、女学生との絡みも多いんですよ。
山本:そうですね。ありがたいことに…(笑)。
市川:オレは誰からも好かれない役だからちょっと寂しいんだよね(笑)。
◆女学生を演じる大友花恋さん、桜田ひよりさん、喜多乃愛さんらは初舞台だそうですね。
市川:「先輩についていきます!」みたいなスタンスらしいので…すごく重荷です(笑)。もちろん気にかけたりはしますけど、自分もそこまでの余裕はないと思うので、もう一緒に頑張ろうという感じです。初舞台の恐怖感とかは、自分も経験しているので共感できます。こうして同じ事務所の人と初舞台を踏める彼女たちは、すごく恵まれてるなって思います。楽しんでもらいたいし、自分も楽しんでやれたらいいなと。
山本:僕も自分のことでいっぱいいっぱいになりそうなので(笑)、まずは自分のすべきことをしっかりやりつつ、支えられるところは支えたいなと思います。
先輩たちからのイジりには、もう慣れちゃいました(笑)(山本)
◆今回、兄弟を演じられる4人の普段の関係性を教えてください。
市川:先輩後輩ではあるんですけど、そんなに気は使っていないと思います。仕事の話もプライベートな話もしますし、すごく仲はいいです。4人で遊んだりもするよね?
山本:そうですね。すごくフランクに接してくれます。
◆それぞれどういったポジションなのですか?
市川:涼介は完全にイジられ役ですね(笑)。年下だし、事務所に入ったのも4人の中では一番後なので、僕たちからイジられにイジられてますね(笑)。
山本:もう慣れちゃいました(笑)。
市川:快感でしょ?(笑)
山本:快感というか、イジりに対してただツッコんでるだけです(笑)。
市川:涼介は返しが結構しっかりしててイジりがいがあるから、さらにみんなイジりだすという…(笑)。涼介がボケても、スベってる感じを出すとかね(笑)。
山本:いつもそんな感じなんですよ!
◆山本さんにとって市川さんはどんな先輩ですか?
山本:市川君は僕が一番頼っている先輩で、お仕事のこともプライベートのことも全部市川君に相談してます。それこそ、長男と末っ子の関係性でもあるのかなって。
市川:うれしいですね。僕自身はあまり引っ張って行くタイプではないんですけど、今回は長男なのでそこは切り替えていこうって思います。草太も月を信頼している役ですし、普段の関係性も生かしたいです。
◆では、季節に関する質問も。間もなく夏を迎えますが、「夏」で連想するものだったり、あとはこの夏やりたいことはありますか?
市川:バーベキューがしたいです。夏ってやることがいっぱいあると思うんです。海とか花火とか…(話が止まらなくなる)。
山本:もう言わないで!(笑)
市川:分かった分かった(笑)。バーベキューにした理由だけど、昔は僕、大人数が苦手だったんです。でも、最近この年になって楽しめるようになってきたので、バーベキューを大人数で楽しみたいなと。
◆バーベキューではどんな役回りなんですか?
市川:焼かれるほうです(笑)。
山本:肉ってことですか?(笑)
市川:違う違う(笑)。焼くのを待つほう。でも何もやってないと思われるのが嫌なので、要所要所で「あ、飲み物とか大丈夫?」って言ったり。
山本:ずるい!(笑)
市川:臨機応変に対応してるから(笑)。涼介は、夏といえば何?
山本:夏といえば、うーん…祭りですかね。
市川:いいね~!
山本:全然行けてないんですけどね。でも、竜星君と昔行ったかも。竜星君が屋台でいろいろ買ってくれたんですよ。あ、市川君とも前に行きましたよね?
市川:行った! 混んでたからほぼ歩くだけで終わったけど(笑)。まぁでも、今年の夏は舞台の稽古だね!
山本:そうですね! 一緒に汗を流しましょう!
◆稽古はこれから始まるということですが、最後に舞台を楽しみにしているファンの方に向けてメッセージをお願いします。
山本:こういう重い題材の作品を重たく演じたら、ただつらいだけになってしまうと思うんです。もちろん、そういった作品も大事だと思うのですが、今回は敢えて日常の暮らしは明るく演じることで、急に下る特攻命令をより残酷に感じ取っていただけるのかなと。特攻隊の話ではあるけど、戦時中でも人々は今と変わらず兄弟で楽しく話したり、恋をしたり、夢を追ったりしている。なので、お客さんもそういった楽しい部分から入ってもらって、特攻隊のことをより知っていただけたらと思います。
市川:戦争を扱った作品の中では、よりエンタメ感の強い舞台になっています。そのほうが、そういった作品が苦手な方も見やすいですし、歴史に興味を持ちやすいかもしれないですね。演出家さんの「普段から現代人の頭の中に戦争のことがあったら、こういう作品はやる必要がない」という言葉が印象的だったんですが、僕も戦争を伝えていくという責任感を感じていますし、舞台を見た人に「もっと当時のことを知りたい」と思っていただけたらそれが成功なんじゃないかなって。重いテーマではありますが、僕らも楽しんで演じていけたらいいなと思います。ぜひご覧ください。
■PROFILE
市川知宏
●いちかわ・ともひろ…1991年9月6日生まれ。東京都出身。A型。
舞台「學蘭歌劇『帝一の國』―大海帝祭―」が、8月11日(金・祝)より日本青年館ホールにて上演。映画「曇天に笑う」「プリンシパル~恋するヒロインは私ですか?」が、ともに2018年公開。
公式HP:http://www.ken-on.co.jp/ichikawa/
公式ブログ:http://ameblo.jp/ichikawatomohiro/
公式ツイッター:https://twitter.com/ichitomo96
山本涼介
●やまもと・りょうすけ…1995年5月15日生まれ。奈良県出身。O型。
MEN’S NON-NO専属モデル。
「山本涼介ファンイベント2017」が、7月22日(土)に時事通信ホールにて開催。映画「ちょっとまて野球部!」が公開予定。
公式HP:http://www.ken-on.co.jp/yamamoto/
公式ブログ:http://ameblo.jp/yamamoto-ryosuke
公式ツイッター:https://twitter.com/ryosuke_y_515
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/ryosuke_y_515/
■作品情報
「大きな虹のあとで~不動四兄弟~」
公演日程:8月29日(火)~9月3日(日)
演出:秦秀明(TEAM DD)
脚本:ニイボシアタル(TEAM DD)
<キャスト>
入江甚儀、市川知宏、竜星涼、山本涼介、大友花恋、桜田ひより、喜多乃愛、矢作穂香、津枝新平、肘井美佳、森山栄治
劇場:中野 ザ・ポケット(中野区中野3-22-8)
チケット:一般 6月17日(土)前10・00~
主催:研音
公演に関するお問い合わせ:S-SIZE 03-6427-2440(平日10:00~17:00)
公式HP:http://www.ken-on.co.jp/stage/nijiato/
公式Twitter:https://twitter.com/kenon_stage
●photo/中村圭吾 text/金沢優里