伊藤万理華インタビュー!展覧会「HOMESICK」

特集・インタビュー
2020年01月24日

乃木坂46時代からアイドルの枠を超え、アートやファッションの世界でその類まれな才能を発揮してきた伊藤万理華さん。東京・福岡・京都で開催され約3万人を動員した「伊藤万理華の脳内博覧会」から約2年。自身2度目となる個展「HOMESICK」が、1月24日(金)より東京・渋谷パルコ地下1階の「GALLERY X」で幕を開ける。開催前日の会場で本人を直撃し、今回のイベントに懸ける思いや作品の制作秘話などを聞いた。

伊藤万理華

◆2年ぶりの個展が始まりますが、今の心境はどうですか?

2年ぶりではあるんですけど、作り方は前回とは全く違っていて。今回は半年以上時間をかけていろいろな方と何度も話し合いながら練りに練ったものなので、やっと形になったという思いがあります。個展って、何をやってもいいと思うし、その時その時の自分の感情を表現できる場所だと思っていて。半年前の私の衝動的な感情をこの場所に全部詰め込んだので、ここに立つと自分が前に進めたんだなと感じます。

伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」
共作ドレス/母親との共作で作られたオリジナルドレス

◆再開発が進む渋谷で開催されるというのも、今の万理華さんとリンクする気もします。

そうですね。街が激しくどんどん進化していて、人が渦巻いている中でできるのはうれしいです。前回の個展もこの「GALLERY X」で開催させていただきましたが、今回は新しい「渋谷パルコ」の新しい「GALLERY X」を使わせていただけるという部分でもすごくご縁を感じています。この地下1階って「GALLERY X」以外ほとんど飲食店なんですよね。たくさんの方に目につきやすい空間なのもいいなって。食事を楽しみつつ、ちょっとこっちも気にしていただけたらありがたいです(笑)。

◆前回の個展が終わった時、「またやりたい」という気持ちにはならなかった?

前回は前回で完全燃焼したので、全く思わなかったです。私の中ではこういうイベントを毎年の恒例行事みたいに繰り返すようにはしたくなくて。何か思うことがあって、そこで初めて生まれるものだと思うんです。前回はグループを卒業するタイミングだったし、将来に不安がある中でやらせていただいたんですけど。今はそういう気持ちは全然ないし、少し大人になった私を見ていただけると思います。

伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」
漫画ゾーン/漫画ゾーンでは、漫画家・椎名うみが本イベントのために短編新作を描き下ろし。会場では書籍化されたものを閲覧できる

◆今回開催しようと思った具体的なきっかけや経緯は?

昨年、家に引きこもってた時期から少しずつ外に出るようになって、いろんな方とお話ししたというのが大きいんですけど。一番のきっかけは、漫画でコラボしていただいた椎名うみさんです。私が初めて直接会ってみたいと思った漫画家さんで、実際にお会いしたら“うみさんと何かやりたい、そうしたら何か変われるかも”と思ったんですよ。それでオリジナルの作品を描いていただいたんですけど、さらにそれを実写化したら面白いんじゃないかと思って。漫画を展示しながら、同じ空間でそれをすぐ実写化するなんて聞いたことがないじゃないですか。それなら先取りしてやっちゃおうと、うみさんに加えて監督の柳沢(翔)さんにも協力してもらって、3人で作り始めて。そこから自分の好きなファッションだったり、写真だったり…とどんどん広げていきながら、全体的なテーマを固めていった感じですね。

伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」

◆そのテーマがタイトルの「HOMESICK」につながると。

グループを卒業してからこれまでの期間で“自分に何が起きたか”“何を思ったか”ということを全部まとめたら、このタイトルが一番しっくりきたんです。そもそも「HOMESICK」って、家が恋しいとか寂しいという気持ちを表しているじゃないですか。でもそうじゃなくて、私は今回“その気持ちを乗り越えた”という意味で使っているんですよ。と同時に、“病気”とか“イヤになっている”という意味にもとらえられる面白い言葉でもあるので、ちょっと造語に近いですね。前回は「伊藤万理華の脳内博覧会」と自分の名前を前面に打ち出していたんですが、あれは乃木坂時代だったから成立していたタイトルだと思っていて。今回はそうじゃなくても成立させたいという思いがあります。そこも私にとって挑戦ですね。

伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」
ショートムービーゾーン/場内シアターが設けられたショートムービーゾーン。漫画コラボレーションをベースに、前回の展覧会で「トイ」を監督した柳沢翔がオリジナル映像を制作。※シアターではSONYの高性能ヘッドフォンWH-1000XM3(ノイズキャンセリング機能があり、ショートフィルム作品を集中して視聴できる環境が作られている)を体験できる。公式サイトhttps://www.sony.jp/headphone/products/WH-1000XM3/

◆今回は特にクリエイターとのコラボレーションがメインでもありますもんね。

そうですね。自分の個展というよりも、関わってくださったデザイナーさん、漫画家さん、映像作家さん、振付師さん、カメラマンさん…全員が主役というか。それぞれで融合させてもらって、気づいたらこういう展覧会ができていたという感じです。それがたまたま…って言ったらアレですけど(笑)、それができるのはこれまでいろんなクリエイターさんと関わらせていただいた私だけなんじゃないかという自負も少しあります。アイドル時代からご縁がある方だったり、新しく出会った方が今この場所に集結していて、すごく不思議な空間だなって。

伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」
ファッション×ダンスゾーン(衣装)/BODYSONG.、Tanaka Daisuke、PERMINUTEの3ブランドとのコラボで衣装を制作
伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」

◆この2年間の万理華さんを表現する中で、昔からのつながりも感じると。

今回は“人と人とのコミュニケーション”というのも自分の中のテーマの1つとしてあって。“この人と何かをやってみたい”というのを自分から伝えに行くのって、言葉にして伝えないといけないから難しいなと思うんです。特に私は言葉にするのが得意じゃないので…。でも、自分の思いや熱意って口にしないと人には伝わらないし、作品を作るっていうのはそういうことなんじゃないかと今回あらためて学びました。

伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」
ファッション×ダンスゾーン(ダンス映像)/伊藤万理華の核をなす、ファッションとダンスを融合。3ブランドの衣装に母との共作を加えた4つのオートクチュールを身にまとい舞い踊る映像を、振り付け師・菅尾なぎさが制作。

◆ファッションデザイナーでもあるお母さんと作ったドレスも展示されていますよね。

初めて一緒にドレスを作ったんですけど、お互いモノ作りが好きで、これはやっぱり遺伝だなと感じました(笑)。このイベントの軸になっているメインビジュアルの衣装なので、会場に入ってすぐのところに置かせてもらいました。“あのポスターの服だ!”って思った瞬間、お客さんがこの個展の世界に入れたらいいなと思ってます。そんな母との共作もぜひ見ていただきたいです。

伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」
展覧会記念商品/展覧会記念商品としてさまざまなグッズを販売。本人がディレクションに関わり、衣装や写真、椎名うみの描き下ろし漫画「おかえり」などを収録した“HOMESICK”スペシャルZINEなどが。

◆この個展を通して伝えたいことはありますか?

自分の中で消化し切れなかったりする部分を、作品として形にするのが私のできることだなと思うんです。ただそれは自分一人だけじゃなくて、いろんな人と一緒に作っていて。しかも23歳の私でもできるんだということを、特に同世代の人に伝えたいです。これは半年前の私自身に向けたメッセージでもあるんですけど、同じように引きこもってなかなか外に出られない人は世の中にたくさんいると思うんですよ。そういう人に頑張って外に出てもらって、この会場に足を踏み入れてもらえたらうれしいです。

伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」

◆乃木坂を卒業して独り立ちした万理華さんが言うと説得力ありますね。

いやいや、私自身も引きこもりを経験しているから(笑)。外に出ることによって変わることって絶対いっぱいあると思うんですよ。それを一番伝えたいです。

■PROFILE

●いとう・まりか…1996年2月20日生まれ。神奈川県出身。O型。乃木坂46の1期生として約6年間活動後、17年12月にグループを卒業。最近の出演作にドラマ『潤一』、映画「映画 賭ケグルイ」、舞台「月刊『根本宗子』第17号『今、出来る、精一杯。』」「仮面山荘殺人事件」など。

■イベント情報

伊藤万理華EXHIBITION“HOMESICK”
1月24日(金)~2月11日(火・祝)
東京・渋谷パルコ GALLERY X
https://art.parco.jp/galleryx/detail/?id=342

チケット販売
イープラス:https://eplus.jp/sf/word/0000123907

●photo/中田智章 text/橋本吾郎