奥平大兼「できるだけその時自分が思ったことを言える状況にしようと思った」映画「MOTHER マザー」

特集・インタビュー
2020年07月08日

奥平大兼

映画「MOTHER マザー」で長澤まさみさん演じる母のゆがんだ愛に育てられた息子・周平役を演じた奥平大兼君。本作が初オーディションとなり、そこで大役をつかんだ奥平君は、現在高校生で「今は学校が楽しい!」と明るく話す。そんな奥平君にお芝居について、学校生活についてなど伺いました。

◆「MOTHER」で受けたのが初オーディションだったそうですね。緊張しました?

あまり緊張しないタイプなんですけど、自分で想像していた以上に緊張しました。オーディションというのは、いろんな人と一緒に受けるんだろうなと思っていましたんですが、実際は1人でした。今はオーディションでせりふを言った時の記憶もあまりないです(笑)。

◆オーディションではどんなことをされたのですか?

女性の方がいらっしゃって、その方と一緒に演技をしてくださいと言われました。演技をしたこともなかったので、特別な工夫なんて思いつきもしないし、できないので。とりあえずせりふを忘れないように、そして変なミスをしないように気をつけました。初めてのオーディションだったので、「オーディションではこういうことをするんだ」ということを覚えて帰ろうと思って。本気ではやるけど、オーディションを受けるのも勉強!という意識で受けました。そんな感覚で行ったので受かった時はビックリしました。

◆手応えはありましたか?

家に帰るとお母さんに「オーディションどうだった?」って聞かれて。特別すごいことができたりはしなかったけど、ミスはしなかったんです。せりふもちゃんと言えたし、自分の中では「できたな」って感じはありました。でも「できた!」と言って落ちたら恥ずかしいから「まあまあかな」ってお母さんには言ったんですけど(笑)。

◆もともと暗記は得意ですか?

得意です。社会系や歴史って覚えればいいじゃないですか。そういう科目はめちゃ得意ですね。

◆演技するとなると、与えられた役の気持ちを考えたり、せりふの言い方を考えることが必要ですが。

オーディションではせりふを覚えるだけでしたけど、撮影に入ってからはせりふを覚えないというか…相手に何か言われたらこういうことを言うんだろうなってニュアンスでしか覚えないようにしました。普通ならダメだと思うんですけど、せりふを完璧に覚えちゃうと、どうしても頭の中にせりふとして出てきてしまって、何て言うんですかね…。棒読みみたいになっちゃうんです。なので完璧には覚えずに、できるだけその時自分が思ったことを言える状況にしようと思いました。

◆大森立嗣監督にアドバイスされてそのやり方にしたのでしょうか。

撮影の前にワークショップがあって、演技が全然できなかったんです。その時、監督に「自然にやるという意味でも自分がその場で感じたことを体や言葉で表現して」と言われたんです。でもせりふが頭に出てきてしまって、なかなかできなくて。だったらどうすればいいかなって考えて、「台本覚えなくていいかな」と(笑)。それを試してみたらうまくできたので、「この映画はこのやり方でいこう」と思えるようになりました。

奥平大兼

◆長澤さんと一緒に演技をしてみていかがでした?

生で見ると迫力が違うなって思いました。一緒にいると、テレビで見ているだけでは分からない、役として伝わってくることがあるんだなって思いました。

◆周平がなぜそこまで母親に引きずられるようにして生きているのか理解し難い部分もあると思いました。周平の気持ちはどう理解していましたか?

そうですね、演じていると、「あ、実際はこうなんだ」って気づくことがあるというか。台本を読むと、お母さんに無理矢理やらされていることばかりで、お母さんのことをあまり好きじゃないんだろうなって思っていたんです。でも実際に演じてみるとお母さんのことが好きで、だからこそやってしまったことがいっぱいあったんだろうなって。自分の考えが変わっていったことがたくさんありました。

◆周平という男の子を演じて一番難しかったり大変だったりしたことは?

周平をこういうふうにしようって普通は考えないといけないんでしょうけど、正直に言うと、僕は経験がないので難しいことができなくて…。大変だったことを聞かれると食事制限ぐらいしかないんです(笑)。

◆食事制限してんですね。

はい。朝ちゃんと食べて、夜はあまり食べないようにしたり。おなかが空いたらとりあえず海苔を食べるとか(笑)。海苔が好きだし、ちょっと食べるだけで満腹感があったんですよね。夜ご飯も食べるんですけど、夜9時くらいになると、またおなかが空いてくるので、その時は炭酸水と海苔でしのいでいましたね。取りあえずおなかを満たそうと(笑)。

◆周平には冬華という幼い妹がいますが、冬華役の浅田芭路ちゃんとは本当の兄妹みたいに仲良くなったそうですね。

一番一緒にいました。芭路はすごく元気で、集中しないといけないシーンの前でも芭路ちゃんが「遊んで遊んで!」って来ると、僕もどうしてもそっちに行っちゃうんですよね(笑)。体力が追いつかないくらい元気でした。役としても日々の生活の中で、冬華は周平にとって癒やしというか救いで、カメラが回っていない時もそんな感覚だったので、これでいいのかなって思っていました。

奥平大兼

◆奥平さんは俳優や芸能界に興味はあったのですか?

いえなかったです。中学1年生の冬にスカウトされたんですけど、そのころ、バスケットボール部に入っていて試合にも出たかったので、事務所の方に「部活に専念したいので、今はやらなくてもいいですか?」とお願いしたら「分かりました」と。中学時代はずっと部活に専念して、中3で部活を引退してから、演技レッスンとかに少しずつ行くようになりました。ただ中3は行事も忙しくて、演技レッスンを1か月くらいしか受けられずにすぐオーディションの話を頂いて、なのでなかなか自分の状況についていけなかったです(笑)。

◆普段、お友達と遊ぶ時はどんなキャラクターですか?

うるさいですね。友達が近くにいるとすごくしゃべっちゃうので、(どちらかと言えば)先生に注意されるタイプですね(笑)。楽しいことがあるとそっちしか見えなくなっちゃいます。友達も面白い人たちばかりなんですよ。

◆今一番楽しいことは?

外出自粛期間は学校に行けなかったので、学校に行ける楽しさが身にしみて分かりました。自粛中もずっと「学校行きたい!」と思っていて、勉強は嫌だけど、友達に会うだけで楽しいなって分かりました。今は本当に学校に行くのが楽しいです。映画「MOTHER マザー」の情報解禁後、初めて学校に行ったので…。

◆周りの反応はどうでした?

ずっと「周平~」って言われています(笑)。「もういいじゃん!」っていうくらいネタになっていますね。

◆ちなみに今ハマっていることは?

ゲームが好きで夜中までやっちゃうタイプだったんです。でも、やめました。今は、音楽がもともと好きなので、普段は6時間、休日は10時間とか、ずっと音楽を聴いています。スマホでどんなことに時間を使っているか見られるからアプリがあって、それを見るとほぼ音楽を聴いてますね。

PROFILE

Daiken Okudaira
●おくだいら・だいけん…2003年9月20日生まれ。東京都出身。O型。中学1年生の時にスカウトされるが、中学3年間は部活に専念。映画「MOTHER マザー」が初めて受けたオーディションで、メインキャストに大抜擢される。

作品情報

映画「MOTHER マザー」

「MOTHER マザー」
全国公開中

<staff&cast>
監督・大森立嗣
脚本・大森立嗣、港岳彦
出演・長澤まさみ、阿部サダヲ、
奥平大兼、夏帆、皆川猿時ほか

<STORY>
シングルマザーの秋子(長澤)は、ゆきずりの男たちと関係を持ち、その場しのぎの生活を送っていた。息子・周平(奥平)が頼れるのはそんな母親だけ。実家にも見放され、自堕落な生活を送り続ける秋子は、周平に依存し続ける。17歳になった周平は事件を起こしてしまう。

©2020「MOTHER」製作委員会

●photo/干川修 text/佐久間裕子 hair&make/速水昭仁(CHUUNi.inc) styling/伊藤省吾(sitor)