【インタビュー】海外ドラマ「ヴァイキング~海の覇者たち~」土田大インタビュー

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2015年01月29日

CSヒストリーチャンネル初の海外ドラマシリーズとして、全米大ヒットの歴史ドラマ「ヴァイキング~海の覇者たち~」が、2月22日(日)より独占日本初放送。本作で、主人公・ラグナル(トラヴィス・フィメル)の吹き替えを担当している土田大さんにお話を伺いました。

オープニングがいい作品は内容がいい

――最初に本作を観たときの感想はいかがでしたか。

印象に残ったのはオープニング。洋画の吹き替え人生の中でだいたいオープニングがいい作品は内容がいいというのが自分の中でありまして、オープニングを見た瞬間にこれ面白そうだなと思いました。劇中もそうなんですが、ものすごく印象深い曲がたくさん使われていて、曲だけでも楽しめるんじゃないかと。日本人ですが、不思議とスッと入ってくる印象がありました。

――ヴァイキングは“海賊”ですが、土田さんの“海賊”のイメージは

“海賊”っていうと某アニメーションや、ヘルメットに角がついているイメージですね。あとは、食べ放題。僕も調べてみたんですが、“ヴァイキング”って入力すると「ぐるなび」が出てくるんです。そうじゃないんだって(笑)。そんな印象です。

――『ヴァイキング』の魅力はどこだと思いますか

このドラマは民族の風習や生活様式が細かく描かれているんです。特に宗教、というか信仰ですね。たぶん口頭で代々親から子へ伝わってきた、神話に出てくる神様の話をみんな信じていて、「オーディン(北欧神話の主神)がいるから俺は死んでもヴァルハラ(主神オーディンの宮殿・戦士の魂が集まる場所)に行けるから大丈夫なんだ」って、本当に信じていたんだなと思います。他にも、毎年神様にいろんな安全を祈願するためにやぎや牛、人間まで捧げていたというシーンがあり、こんなことが本当にあったんだなと思いました。それがうそ臭くない説得力があるから、こういう文化が実際にあったんだと見ていて、すごく面白いところだと思います。

――印象に残っているせりふがあれば、教えてください。

「前回までのヴァイキングは」です(笑)。非常に悩んだのが、表記では「ヴァ」なんですけど日本語ではあんまり「ヴァ」って言わないんです。「言うな」って逆に言われるぐらい。でも、それだと面白くないなと思って。せっかく「ヴァ」になっているし、ディレクターにも直接「ヴァ」要素を強めに言いました。でも、何にも言われないので「ヴァイキング」でいいかなと思いました。

僕の持っているヴァイキング像を一変させた

――土田さん演じるラグナル・ロズブローク(トラヴィス・フィメル)の魅力を教えてください。

この人のそういう演出なのかもしれないですけど、役どころでパッとイメージすると結構激情型な感じが最初はしていたんです。でも、屈強な戦士なんですが意外に冷静で、強いものに対して力で押していくんじゃないので、頭がいいんじゃないかなと思いました。そういう繊細なお芝居をやっているので、こっちもそれになるべくシンクロさせていただきたいなと思って、いつも役作りをやっています。
あとは、ただの筋肉バカじゃない(笑)。すごい知識人だったと思います。当時の限られた知識の中だけど、その知識に対してすごく貪欲であったと思います。裏社会というか、決められた枠の中で力で出ていくのではなくて、新しい方法がもっとあるんだよということを常に提示していて、略奪のときにみんなすぐ殺そうとするんだけど、「ちょっと、待て。俺は話したいんだよ」っていう人なので、そこに僕はすごいと思いました。僕の持っているヴァイキング像を一変させましたね。

――ラグナルを演じる上で心がけたことはありますか?

息、呼吸です。役だけにとどまらないんですが、息の芝居が非常に多い作品です。役者さんが持つ独特な呼吸も当然あるんでしょうけど…今までこんな音出したことないなとか、息遣いが独特だなと思いました。例えば、食べるときにひたすらくちゃくちゃ音を出して食べるとか…もちろんせりふも重要視するんですけど、呼吸とか空気感みたいなのをリハーサルでいつも見て拾ってきます。今回、今まで感じたことのない呼吸というかどういう呼吸をしているのかなっていうところがたくさんあって、息を多用しました。そういう部分はやっていて面白い部分でもあるけど、ちゃんと見ておかないとって思います。

――土田さんご自身、興味のあるキャラクターはいますか?

フロキ(グスタフ・スカルスガルド)です。「本当に船大工?」みたいな、ちょっと奇妙な感じがします。実際にいたとしたら、フロキはこの時代すごくアヴァンギャルドなんじゃないかと思いました。別に頭がおかしいわけじゃなくて、ただちょっとみんなと異形というか、違う感覚を持ったキャラクターかなと思って、今後どうなっていくか興味があります。

――劇中に出てくる人物で、土田さんが妻にしたい人を教えてください。

それはもうラゲルサ(キャサリン・ウィニック)です。恐妻っていいですね(笑)。恐妻だとすべてうまくいく気がします。それは現代も変わらないんじゃないかなと思います。自分が航海している時は村を仕切って、しっかりやれるぐらい信頼もあるでしょうし…難点といえば少し夫婦喧嘩が激しいってぐらいですね。

――ラグナルとハラルドソン(ガブリエル・バーン)が対立していますが、土田さんはどちらに共感しますか?

たぶん自分が今までやってきたことはラグナルに近い気がしますけど、そろそろハラルドソンになってもいいかな。作品を観ているとハラルドソンって、あんまりできない人なんじゃないかという描かれ方をしているんですけど、実はそんなことないと思います。でなければ、あの歳で首長という座にいないと思うので、それなりの信頼と人々をまとめる能力が高かったと思うんです。そこに若い世代が出てきて、お互いが対立したんでしょうけど、どちらの道理も僕は分かる気がします。どっちもいいかな(笑)。

吹き替えだと“ながら”ができる

――吹き替えを担当されることが多い土田さんですが、吹き替えの良さを教えてください。

情報量の多さです。字幕だと話す人中心に出ると思うんですけど、吹き替えは話す人が多いので入ってくる情報の量が多いんです。あとは、“ながら”ができる。字幕はかまえて見ることが多いと思うんですが、吹き替えだと何かをしながら見れて、気軽さ・手軽さも同時に兼ね備えているのがいいですよね。特に連続ドラマというのは、「大好きで待ち遠しい!」って見てくれるのがうれしいんですが…何かをしながらでも音声の情報が入ってくるから、そういうところでとっつきやすいんじゃないかなっていう気がします。だから、ドラマは特に吹き替えのほうが見やすいと思います。

――『ヴァイキング』の吹き替え時に意識したことはありますか?

作品上戦闘シーンがけっこう出てくるんですけど、戦っているときの呼吸一つとってもなるべく違う、バリエーションを多くするように心がけています。例えば、腹を殴られているのか、頭を殴られているのかをちゃんとやれっていうことをよく言われるんですが、それが最近分かるようになってきて。呻き声や叫び声などの細かいところで、リアリティを出せればなと思っています。あとは、低いところで叫んでいるので、意外に声がもち、負担にならないですね。

――ラグナルを演じているトラヴィス・フィメルとご自身の声は似ていると思いますか?

普段、あんまり作っている気はしないけど…どうだろうな。僕の今回のテーマは自然に演じることなんです。ものがものだけに、あんまり極端にならないようにしています。向こうがそういうお芝居をやるときは当然それを拾ってやるんですけど、なるべくナチュラルに演じたいなと思っているので、それも相まって、あんまり差がないと思います。逆に“ハラルドソン”とかすごく言いづらいですね(笑)。

――アフレコ現場の雰囲気はどんな感じですか?

現場は、真面目ですごく熱心にやっています。辻親八さんや林真理花さんはよく一緒になるんですけど、知った仲というのもあり、非常にやりやすくいつもの調子でできています。あとは、玉木(雅士)くんが僕の兄貴をやるということで、最初すごく抵抗があったらしくて、玉木くんが「土田さん、僕お兄さんなんですけど」と。僕は「いいんじゃない、別に」と言ったんですが、面白いなと思いました。今はそんなことないですけど、気になるんだと思いました。

ラグナルの不敵な笑みを見てほしい

――本作にかける意気込みを教えてください。

けっこうこだわっているので、そのこだわりがストレートに出ていくものになればいいなと思っています。僕らもシンプルで分かりやすく、そしてなるべく時代から逸脱しないように演じています。当時の世の中と今の世の中って全然違うじゃないですか。時代の空気感にあったようなせりふのしゃべり方、もしくは空気作りにこだわっていきたいです。

――「ぜひここを見てほしい!」というシーンを教えてください。

ラグナルの不敵な笑みです。こんな不敵な笑い方をする役者にはじめて会いました。この人の不敵な笑いは本当に不敵な笑いだなって思います。ニヤついているわけではなく、悲しくても、怒っても、いつも笑みを浮かべているような役作りがすばらしいですね。

――最後に視聴者の方にメッセージをお願いします。

たくさんの人に観てもらいたいのはもちろんですが、すごくシンプルな話なので、実は子供たちに見てほしかったりします。短いシリーズでちょっと残念なんですが、とても見やすい感じで難しいこともなく、皆さん続きが見たくなると思います。本当に細かいところまで、何度も繰り返して、目に穴が空くほど観てください。きっと毎回新しい発見があると思います。

 

PROFILE

土田大(つちだ・ひろし)
1972年2月8日生まれ、東京都出身。81プロデュースに所属。
1994年の『忍者戦隊カクレンジャー』のサイゾウ / ニンジャブルー役でデビュー。「トランスフォーマー ロストエイジ」(2014年)マーク・ウォールバーグ、「進撃の巨人」(2013年)グリシャ・イェーガー、「カーズ シリーズ」(2006年~)ライトニング・マックィーンなど、現在は、俳優、声優として活躍中。

 

作品情報

海外ドラマ「ヴァイキング~海の覇者たち~」

伝説のヴァイキング王「ラグナル」の若き日を描いた壮大な物語。ヴァイキングたちの凄まじい生きざまや、彼らの闘いの物語が生々しく描かれており、家族・仲間との絆、そして部族の首長との対立から巻き起こる人間ドラマが8世紀末の北欧スカンディナヴィアを舞台に展開される。
「略奪者」というイメージが強いヴァイキングだが、高度な造船技術や航海術など当時の最先端技術を持ち合わせ、農業や漁業を営み、北欧神話の神々を信仰する人々でもあった。ドラマでは、新世界を発見していく彼らの冒険とともに、知られざるヴァイキングの姿とその魅力が描かれている。

CSヒストリーチャンネルにて、2月22日(日) 21:00より独占日本初放送
毎週日曜21:00~22:00ほか放送(全9話)
※2月22日(日)のみ21:00~23:00第1・2話連続放送

「ヴァイキング~海の覇者たち~」特設サイト(https://www.historychannel.co.jp/vikings/

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●取材/遠藤綾野