【コラム】なーはるのすっぱレビュー『俺の家の話』リングで戦う長瀬智也に思う「その情熱が能に必要なのよ」

特集・インタビュー
なーはるのすっぱレビュー
2021年02月25日

「なーはるのすっぱレビュー」

ドラマフリークのコラムニスト&イラストレーター・柳澤なーはるが、注目ドラマに愛あるツッコミを入れる「なーはるのすっぱレビュー」。第3回は、長瀬智也主演、宮藤官九郎脚本の『俺の家の話』(TBS系 毎週(金)後10時~10時54分)。

『俺の家の話』

観山寿一(長瀬智也)は人間国宝の能楽師(西田敏行)の長男。厳しく育てられた反動でプロレスラーになったが、25年ぶりに家に戻り、父親の介護をしながら跡を継ぐことに…。

このドラマが始まったとき、ドラマの神様が私に「書け」って言ってる?と思ったわ。なぜなら私の身近にずばり「人間国宝の能楽師」がいたから(笑)。

そんな私から見て、このドラマはよく取材してると思う。寿一の家はお金がなくて、寿一がこっそりプロレスで日銭を稼いでるけど。能楽師の家にお金がないのはその通り。プロレスを偶然見に来た父親が能面マスクで戦う寿一に言った「あいつ体幹強いね。能をやればいいのに」もうなずける。そう、能は体幹が大事なのよ。

でもね、能は足腰もしっかりしてないとね。

私が知っているほうの人間国宝は、電車ではつり革に捕まらずに立って足腰を鍛えていた。趣味は渓流釣りで、川の中で踏ん張ってすばやく鮎を釣り上げることで下半身を鍛えていたそうだ。

ドラマでは、寿一が父親をお風呂に入れる介助のときに、あんなにガタイがいいくせに、やけにしんどいアピールしてるけど。それはあれよね? 介護のおかげで気づいたら足腰が鍛えられて、そのおかげで「型が決まる」ようになりました~っていうオチへの伏線なのよね?(笑)

ただね、型が決まるようになっても、それだけじゃやっぱりダメなんだ。寿一には圧倒的にたりないものがある。それは能楽師としての「情熱」ですよ!「俺、プロレスのほうが好きかも」なんて言ってるようじゃねえ。

じゃあどうすりゃ情熱を持てるのか?

第4~5話で、芸養子の寿限無(桐谷健太)の出自が明らかになった。何と寿限無は寿一の父が女中に産ませた子、つまり寿一の腹違いの弟って! そう来たか!

寿一に跡継ぎの座を奪われてもニコニコしてた寿限無が初めて見せた怖い顔。そりゃ40年も出自を隠されてたら怒るよね。そんな彼が寿一にぶつけた「親父の跡を継ぎたいなら能で俺に勝ってみろよ!」。これよこれ! ライバルの存在が主人公に情熱をもたらすのよ。

というわけで、父親がエンディングノートに書いた「もう一度舞台に立つ」。

覚醒した寿一・寿限無兄弟と、リハビリで復活した父親が舞台で共演してドラマのエンディングになるんでしょう。長瀬智也と桐谷健太のイケメン2人が直面(ひためん=面をかけない)で舞い、そして、宗家の西田敏行と舞う次期宗家は長瀬か? 桐谷か? な~んて最高に楽しみじゃないですか~!

あ、でも、その前にプロレスがバレて破門になる回があるはずよね(笑)。

『俺の家の話』
TBS系
毎週金曜 後10・00~10・54

文・イラスト/澤なーはる