直木賞作家・朝井リョウの同名小説を映像化したWOWOWオリジナルドラマ『世にも奇妙な君物語』。全5話で描くオムニバスドラマの第1話「シェアハウさない」で、取材のため、謎めくシェアハウスに住み込む主人公・浩子を演じた黒島結菜さんにインタビュー。本作の見どころや個人的にリサーチしたいことなどを聞きました。
◆脚本を最初に読んだ時の率直な印象は?
読みながら、「何かあるな、何かあるな」と感じつつ、あまりに衝撃的なラストに驚いてしまいました。突然、ズドーン! と落とされた気持ちになりましたし、これを現場で撮影するのかと思うとちょっと気が重くなったりしました(笑)。
◆「桐島、部活やめるってよ」「何者」など、これまで映像化された朝井リョウさんの原作との印象の違いはありましたか?
朝井さんの作品は、10代から20代にかけてのキャラクターが等身大の姿で描かれていることもあり、誰かしらに共感できる印象がありました。そのため、その世代の気持ちを代表している印象が強かったです。「シェアハウさない」で私が演じた浩子など、どこかにいそうな普通のキャラクターに見えていました。そんなリアルさと、どこかファンタジーの間で進んでいくストーリーのように思えました。
◆今回演じられたフリーライター・浩子に対する印象は?
浩子は過去のトラウマを抱えながらも、それを乗り越えていて、同じ経験をした人たちを助けたい気持ちも強い。そんな自分のやるべきことを分かっている強い意志を持った女の子だと思いました。その一方で、自分の興味があるものに進むと、周りが見えなくなってしまうところがあり…。衣装合わせでは、首元が大きく空いていて私が思っていたより女性を強調した服装だったことが、ちょっと意外でした。
◆そんな中で役作りに関して、意識されたことは?
まずは彼女の強さ。あとは、シェアハウスに潜入取材した浩子は、自分の身を隠して、シェアファミリーたちと接しているんですが、終盤になるにつれ、何とか真相を突き止めようとするライターとしての顔を垣間見ることができるお芝居をあえて意識しています。
◆シェアファミリー役の鶴田真由さんや戸次重幸さんらとの現場でのエピソードはありますか?
本当のことを何も知らない浩子だけが浮かれている感じもしますが、「役を通して」という意味でも、不思議な緊張感がある現場だったと思います。「ここに一緒に住まわせてもらえないでしょうか?」と言ったことで、皆さんからジロッとにらまれるシーンは、一気に空気感が変わり、演じていてもとても怖かったです。ただシェアハウスの舞台となる家は、日当たりが良く、とてもすてきな部屋だったこともあって、不穏な空気を持つ怪しい人たちが住むイメージとは真逆でした。あと、朝ご飯や赤ワインで煮込んだ牛肉など、食事のシーンが多いんですが、出てくる料理もおいしかったです。
◆仕上がった作品をご覧になった感想は?
どこか不穏な展開も衝撃のラストも知っていたことで、楽しんで見ることができました。「まだ浩子は、何も気づいてない…」と思いながら(笑)。あと食べながら飲みながらといった、何かしながらのお芝居が多かったのですが、それが自然とリアルさとつながっていて。見ていていろいろと納得するところもありました。
◆そのほか、本作の見どころについては?
『世にも奇妙な君物語』なので、その“奇妙さ”には注目してもらいたいです。そして、私が最初に脚本を読んで、ざわざわ感じた時のように、「何かあるぞ」と予想しながら見てもらって、ラストではいい意味で裏切られてほしいです(笑)。
◆物語は、浩子が飲み屋で泥酔したところから始まりますが、黒島さん自身はお酒で失敗してしまったことはありますか?
家族と居酒屋に行った時に、そんなに量も飲んでなかったのに酔っぱらってしまい、ずっと役作りで勉強したことを一人で延々しゃべっていました。その時の様子を、ずっと妹が動画を撮っていたので、後で見たんですが、お父さんは寝てるし、お母さんは帰ろうとしてるし、誰も私の話を聞いていなかったんです。私も浩子と同じように、何か調べ始めると、そこに夢中になってしまうことが分かりましたが、酔うとそこまで周りが見えなくなる自分の姿にショックを受け、とても反省したことを覚えています。
◆ちなみに今後、浩子のようにリサーチしたいことはありますか?
農薬や化学肥料を使わず、自然の流れだけに頼った伝統農業についてなど、より農業に興味を持つようになりました。きっかけは、コロナ禍によって、スーパーで買い物して自炊することが増えたことで、それによりあらためて野菜を作る農家の人たちのすごさに気づいたんです。今まで何気なく食べていたものが、ちゃんと自分の生きる源になっていると思うと本当にありがたいことだなと。それで、できるだけ生産者さんの名前が書いてあるような野菜を買ったり、ドキュメンタリーを見たり、本を読んだりしながら、いろいろと知識を蓄えているところです。
PROFILE
●くろしま・ゆいな…1997年3月15日生まれ。沖縄県出身。A型。主な出演作にドラマ『アシガール』シリーズ、『行列の女神~らーめん才遊記~』、映画「カツベン」「十二人の死にたい子どもたち」など。現在は『みうらはんと』(テレビ朝日)に出演中。2022年前期連続テレビ小説『ちむどんどん』のヒロインを務める。
番組紹介
WOWOWオリジナルドラマ『世にも奇妙な君物語』
2021年3月5日(金)よりスタート(全5話)(第1話無料放送)
<STAFF&CAST>
原作:朝井リョウ
監督:池澤辰也 脚本:渡辺千穂
出演:黒島結菜、葵わかな、佐藤勝利、田中麗奈、上田竜也 ほか
<STORY>
自立した社会人同士がシェアハウスする理由を掘り下げるため、見知らぬ男女4人が暮らすシェアハウスの潜入取材を試みることになった、フリーライターの田上浩子(黒島)。だが、その共同生活には、彼女の想像を遥かに超える真の目的があった。(第1話「シェアハウさない」)
●text/くれい響 hair&make/加藤 恵 styling/伊藤省吾(sitor) 衣装協力/ワイエムウォルツ、ジョン スメドレー